なぜこんなことになってしまったのか

僕は生まれた。

ちっぽけな、ゴミみたいな街で生まれた。

お父さんは毎日僕にタバコを押し付けてきた。

お母さんはテレビを見ることを許さなかった。

そういう話題に尽きない家庭に生まれたかった。

実際はごく普通の家庭だった。

小学校の頃、友達とよく野球をして遊んでいた。

俺はレフトをやっていて、フライを取るのは得意だった。

中学に入って、ゴルフ部に入った。

当時、プロゴルファーの石川遼選手が人気で、僕もやりたいと思ったのがきっかけだった。

県大会に出ただけだった。でもそれもまたいいだろう。

高校生になって、帰宅部にはなってしまったけど、受験勉強をひたすらしていた。

そうだった。僕は正直無気力だった。ごく普通の家庭よろしく、僕もまた、当然の暮らしを求めていた。

いい大学に入って、いい会社に就職して、お給料をもらって生活するつもりだった。

だが、そこで僕にある転機が訪れた。

僕は気づいたのだ。正直に生きるよりも、取り繕ってかわいこぶれば、人生なんとかなるのだと。

そう思ったのはあの時のことだ。

高校1年生の時、僕は正直に生きているつもりだった。しかしある時、僕はクラスの中で浮いていることを感じるようになった。

昼休みの時間、僕はいつも母が作ってくれたお弁当を一人で食べていて、周りのクラスメイトが楽しそうに話しているところを見て達観した気になっていた。

でもそのうちそれも辛くなってきて、僕はもっとみんなと話したい、みんなに愛されたいと思うようになった。

その気持ちが、今の僕を作った原動力でもある。

それはさておき、僕に好きな人ができた。

クラスにいた数少ない女子の一人だ。

彼女はとても聡明で可愛かった。

いつからか僕は元来の冷めた目線を捨てて、熱い眼差しを彼女に送るようになっていた。

最初は彼女に振り向いて欲しかった。僕のことを見つけて欲しかった。

そして気づくと、僕はかわいこぶって彼女と話すようになっていた。

彼女はそんな僕を受け入れてくれて、僕はそれがたまらなく嬉しかった。

しかしその幸せな日々も、永遠とは続かなかった。

僕たちを引き裂いたのは、大学という存在だ。

僕と彼女は別々の大学に合格し、遠く離れることになってしまった。

僕はそれが嫌だった。

彼女もそれは嫌だったのかもしれない。

だが僕は、その2人の絆を壊し、過ちを犯してしまった。

僕の彼女に向ける視線は、彼女だけのものではなかったのだ。


序章