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JPモルガンが暗号通貨の将来展望レポート公表

 先般、JP-Morgan(JPM)が暗号資産/Blockchain(BC)に関する将来レポートを発表しました。レポートでは社会受容に向けての技術展望/Stable-Coinの実現可能性に触れており、今後のBCや金融/社会のありようについての示唆に富んでいるものとなっています。
 JPMは独自のプロトコルである「Qurum」をイーサリアムベースで開発しており、既に実証段階を終えて複数金融機関間での決済/送金を目的としたコンソーシアムの造成や、貿易金融での実用を推進しています。また、BCの開発/実用を推進すべくConsenSys(BCコンサル)の買収/統合を進めていると報じられています。

<レポート概要/サマリ>
 Blockchainは現状では一部の金融機能高度化(証券決済や一部送金)に利活用されているものの、銀行本業(法人決済/支払高速化など)や金融業態以外での広範な利活用にはまだ時間が必要で、3-5年後が想定されるとします。特にLibraのようなStable-Coinはまだまだ高度な検討/検証/作業が必要で「(成功には)短期流動性ファシリティ/プラス利回りの準備資産/集権的なセミプライベートNWが必須」としています。
 将来展望の前提として[既存機能強化/デジタル通貨採用への基盤整備は完了]したものの、銀行本業での採用は3-5年後になるとしています。スケーラビリティやBC-PF間の融通といった技術的な課題や、マクロ経済/規制枠組みなどの外部環境の動きで進展が減速させる可能性がありつつも、現状における暗号通貨市場による自主規制や独自契約推進などといったポジティブ材料も発出しているとのことです。
 しかしながら、暗号通貨はボラが大きすぎるがゆえに金融資産としての要件を満たしておらず、まだまだ機能面での特徴しか実現てきていないとしています。(JPMはここ1年、ポートフォリオ多様化やヘッジ手段として暗号通貨は要を為さないと判断)

<レポートURL>
https://markets.jpmorgan.com/research/open/url/t59R6MoBP2TUkWA_itSQBbfUlco1CmYnoNL3dA6WVSm82drJuOYLvdZIqDyuXyp-L4OrVEFw_eAu4UgzicsInqAwjcbKIQHiPfGEjPF2Rt5PKUltFmEKGQaC3DeLBoW7?action=print

<レポート;主に暗号通貨について>
[暗号通貨/Stable-Coin]
 JPMはリブラの決済システムとしての実行可能性に注目、実現には短期流動性仮想通貨リブラの決済システムとして実行可能性に注目し、一方で短期流動性ファシリティがない(低い)場合にネットワークが安定した規模を達成できるかどうかを疑問視。
 具体的には取引量が想定以上に成長した場合に耐えうる決済システム基盤/決済担保通貨/短期資金の調達可能性といった部分での実務的な対応に不備がある。また、トランザクションが大きくなる機関でのシステム遅滞リスクは、深刻なマクロ経済的結果をもたらす可能性があるとする。
 そして、Stable-Coin全体としては「抑々法定通貨自体が"私的発行通貨"なので、準備自体はできるはず。ただ、中央銀行を中心とする規制当局の受容には、更なる規制が必要」とする

[暗号通貨;市場の成熟度]
 暗号通貨市場は再び拡大すると予測しつつも、下記の4つの論点が存在すると指摘。
(1)時価総額の回復
 暗号通貨の時価総額は、1年前に比較して約1,250億USDから約2,350億USDへ回復。市場の2/3近くはBTCが占める
(2)健全化の進展
 取引量の改ざんは修正されて機関投資家の参画が拡大
(3)自浄作用と自主規制
 暗号通貨取引において自主規制ベースでオプション取引/先物取引が導入
(4)購入ハードルの低下
 市場価格が従前より低下、本質価値と市場価格の乖離が減少。まだ市場価格>>本質価値な状況ではあるが…

[暗号通貨の価値,資産としての有用性]
 暗号通貨のマイニングに利用されたコスト以上に価格が上回って推移しており、下振れリスクはまだ内包する。
 運用対象資産としての観点からの魅力は[従来資産との相関性の低さ]であり、ポートフォリオに組み込むことで運用効率性を高めることが可能。レポートでは「暗号通貨の法的位置づけがまだ不明確であるがゆえに取引価値/流動性が限定的。さらに、価格の動きに一貫性がない」ために、アセットクラスとしての位置づけに限界があるとする。
 ただし、マイナス金利が常態化する中で国債が株式ヘッジ対象としての有用性が減る中で暗号通貨はGoldやJPYなどと並ぶ長期ヘッジ手段に化ける可能性もある。(これまでに経験したことがない事象へのヘッジ手段として)

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