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短歌 新作7首 『凍てついた泉の中で』

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自分ではない他人と上手くやっていくのは、いくら歳を重ねても難しい。
家族、友人、同僚、そして恋人。
近づくほどに壁が生まれ、労わるほどに白々しくなる。
いっそ壊してみたらどうなるんだろうか。
そんなことを考えていると、少しだけ胸を昂ぶらせている自分が、ひどく怖かった。

そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。

発売中の角川「短歌」2019年10月号に掲載されている新作5首『無に帰する』と同時期に執筆していたので、呼応するような作品になりました。
どちらも第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。

新作5首『無に帰する』が掲載されている角川「短歌」2019年10月号はこちら。

『凍てついた泉の中で』 鈴掛真

少しずつ罪悪感が溶け出してグラスの氷がチリリと鳴った

「まだここにいたかった」って言うような誰かの熱を保った座席

凍てついた泉の中で青白く脈打つような君の血管

血液がきれいなんだね透き通る君の白目を汚してみたい

ばらばらに切り離された肉体の欠片も俺と呼べるだろうか

伝えたら壊れてしまう告白が奥歯にずっと挟まっている

君のために流す涙が漏れ落ちてちっとも満たされない手の中

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