見出し画像

短歌 新作7首 『ダイアログ』

画像1

同じ国に生まれた僕らは、同じ言語で対話する。
それなのに、気持ちはいつもすれ違ってばかり。
心配してほしいときに限って「大丈夫」と強がってみたり、「どうしてあんなこと言っちゃったんだろう」と自分の言葉を悔いてみたり。
本当に伝えたいことは、いつも声にできなかったりする。

それでも僕らは、対話をあきらめない。
すれ違いや間違いを何度も繰り返し、振り返りながら、長い年月をかけて、心を通わせる。

そうしていつのまにか、まるで重荷をそっと下ろすように、本心は軽やかな言葉となって相手へ届く。

そんな気分を、7つの短歌で書いてみました。

第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。

『ダイアログ』 鈴掛真

一粒の雨水ほどの面積でいいからずっと触れていたいよ

指先を同じ匂いにするためのウィンストン・キャスター、1本ちょうだい

間違いもぜんぶ修正しないまま書き残す僕らのダイアログ

水に流せないこともある洗濯機の底に残った君のライター

ほんとうかうそかじゃなくて交わし合う言葉はすべて確かなものだ

君の家から穿いてきたジーンズの裾を濡らしてゆく強い雨

待ち合わせ場所で見つけるたび思う「あの日、勇気を出してよかった」

あらゆる言葉が無料で読める時代。 それでも、もしも「読んでよかった!」と思っていただけたら、ぜひサポートお願いします。 また新しい言葉を書くために、大切に使わせていただきます。