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「いいじゃないの幸せならば」(昭和44年 1969)佐良直美

*この記事は、2022年に書いたものです。

 先日、職場で同僚と仕事の話をしているときに、♪いいじゃ、ないの、しあわせ~ならば~、と、ふいにサビのフレーズを口ずさんでしまいました。
 40歳になったばかりの同僚は「あ、それ、聴いたことがある!」と、早速、携帯電話で検索を掛けました。そして、佐良直美が良家のお嬢様だったことや、キャッシーとのレズビアンスキャンダル(検索元の記述がキャシー中島とのスキャンダル、と間違った記述になっていました(^^;)の後に芸能界から姿を消したことや、その後、犬のブリーダーとして成功していることなどを拾い読みしていました。

 私はというと、帰宅してからYouTubeでこの曲を観聴きしたり、ウィキペディアで人となりを読んだりしました。
 佐良直美。1967年、彼女が22歳の時に「世界は二人のために」で日本レコード大賞新人賞。そして、1969年、24歳の時にこの曲で日本レコード大賞に輝きました。
 作曲は、いずみたく。作詞は、ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」や加山雄三の「君といつまでも」、郷ひろみの「男の子女の子」の作詞、そして、なんといっても生涯の大半をマネージャーとして尽くした越路吹雪の「愛の賛歌」作詞者である、あの岩谷時子です。
 
 ♪あのとき あなたとくちづけをして
   あのとき あの子と別れた私
   つめたい女だと 人は云うけれど
   いいじゃないの 幸せならば

 どうやら、いずみたくの曲が先にできて、その後に、岩谷時子が詞を付けたようですが、がむしゃらになって働くのが当たり前だった高度経済成長期真っ只中に大ヒットした曲としては異質な感じがするほど、刹那的で、退廃的なイメージが匂う歌詞になっています。

 聴きなれた曲、聴きなれた歌詞ではありましたが、今回、改めてこの曲を聴いて、すぐに違和感を感じました。
 「私」はこの曲の主人公の女、ですが、では、「あなた」は?そして、「あの子」とは??
 佐良直美のスキャンダルが絶妙なスパイス、否、変なバイアスになってしまって、「あなた」と「あの子」の性別が曖昧に思えてしまいます。「あの子」はもしかして、年下の男の子を指す言葉であるかもしれませんが…
 ベイビーフェイスで、男装を思わせるようなパンタロン姿(スカートの姿の彼女の記憶がありません)の彼女は、どことなく、蒼井優や山本耕史を彷彿とさせます。そして、24歳にしてこの曲を潔い真っすぐな目線で、ほんの僅かな含み笑いを浮かべながら静かに歌い切る彼女に目が釘付けになってしまいます。

 ここに挙げるのは、この曲が日本レコード大賞になったときの映像と、歌詞の1番、2番、4番が歌われた別収録の映像です。
 レコード大賞受賞の折の歌唱では、今陽子とチータが歌っている途中で花束を手渡しますが、会釈をしながらも止めず歌っています。しかし、なぜか、1番の歌詞の後に、4番の歌詞を2回歌っています。私は、佐良直美は単純に、2番の歌詞と4番の歌詞を間違えて歌ってしまったと思っていますが(意外と尺が余ったのでTV局からの要請で4番を2回歌った説もあります)、そうであったとしても、間違えたことをおくびにも出さずにこの曲の雰囲気を壊すことなく、最後まで静かに歌い切っている凛とした姿にまた、静かな感動を覚えます。

♪「いいじゃないの幸せならば」(昭和44年 1969)佐良直美
 作詞:岩谷時子 作曲:いずみたく

 日本レコード大賞受賞時
 https://www.youtube.com/watch?v=3AkISeI3AJg

 スタジオ収録 1番、2番、4番の歌詞
 https://www.youtube.com/watch?v=2eoPnemrFEc