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機械学習とは? 知っておきたい概要と活用事例

こんにちは。アクセルユニバース株式会社のたけなかです。
機械学習・深層学習をメインとする20名前後のシステム会社で働いてます。

最近、「機械学習って何が出来るの?」「AIとなにが違うの?」という問い合わせを多くいただくようになってきました。
それもそのはず、5年間で機械学習の検索ボリュームは約3倍になりました。

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機械学習の概要やどんな課題解決ができるのか、事例をご紹介します。

人工知能(AI)とは

人工知能のイメージは人によって大きく違います。人工知能が「推論・認識・判断など、人間と同じ知的な処理能力を持つ機械(情報処理システム)」であることは大多数の研究者たちの意見も一致していますが、それより細かい定義については専門家たちの間で共有されている定義はありません。「人間と同じ知的な処理能力」の解釈がそれぞれ異なるからです。

専門家の定義が定まっていないので、一般のイメージはなおさら曖昧です。
イメージしやすいものは、お掃除ロボットや自動運転のようにシステムが自ら考えて行動している(ように見える)、周りの環境に応じて自らの行動を変えられるものでしょう。

このような視点から人工知能を分類し、解説します。

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1.ルールベースでの制御
エアコンの温度調整など、予め行動が決まっている製品が当てはまります。制御工学やシステム工学と呼ばれ、人工知能には当てはまりません。

2.古典的な人工知能
掃除ロボットや診断プログラムなど、探索・推論・知識データを活用し、状況に応じて振る舞いを変える製品です。既に広く実用化されており、機械学習・深層学習の研究の先駆けです。

3.機械学習
検索エンジンや交通渋滞予測など、大量のサンプルデータを元に入力と出力の関係を学習した製品です。古くから研究され、2000年代に入り、ますます発展しています。

4.深層学習(ディープラーニング)
機械学習では、学習対象の「どのような特徴が学習に影響するか(特徴量)」を見極めることは非常に重要で難しいです。例えば、売上予測をする際にその日の天気が重要、と分かっていると効率的に学習が進められます。
この特徴量を自動で学習するシステムが深層学習です。画像認識、音声認識、自動翻訳など、従来のコンピュータで実現が難しいとされてきた分野での応用が進んでいます。

機械学習とは

機械学習とは、コンピュータにデータを与え、アルゴリズムに基づいた分析をさせる手法のことです。事例となるデータを反復的に学ばせて、特徴やパターンを見つけ出します。見つけた特徴を新しいデータに適用することで分析や予測を行います。
解きたい課題によってそのアプローチは様々です。機械学習にも得意不得意があり、どのような課題であれば機械学習で解決できるのかを知っておくことが重要です。

機械学習の種類

機械学習が対象とする課題の種類は次の3つにまとめられます。

教師あり学習
与えられたデータを元にそのデータがどんなパターンになるか予測・識別するものです。例えば
・過去の受注データから未来の受注を予測したい
・写真がどの動物か識別したい
・英語の文章を日本語に翻訳したい
といった活用ができます。つまり、与えられたデータ(入力)と返す答え(出力)にどんな関係があるかを学習する手法です。
また、受注予測のように連続したデータの予測は回帰、写真の識別のようにカテゴリを予測するものは分類といいます。

教師なし学習
教師あり学習では、入力データと出力データが対になっていましたが、教師なし学習は出力データがありません。教師=出力データですね。
例えば、
・ウチの店の顧客層がどのようなものか知りたい
・膨大なデータの項目間の関係性を知りたい
このような、データに意味をもたせたい時に活用されます。

強化学習
強化学習は教師あり・なし学習とは少し異なり、「行動を学習する仕組み」とよく表現されています。ある環境下で、目的とする報酬を最大化するための行動はなにか、を学習していきます。例えば
・パックマンの行動最適化
・プロ囲碁棋士を破ったコンピュータ囲碁(Aipha Go)
が挙げられます。学習内容の表現が教師あり学習より難しいため、ビジネス活用は上の2つよりは遅れています。

機械学習の歴史

機械学習の歴史は深く、始めて人工知能という言葉が使われたのが1956年のダートマス会議においてでした。世界初の汎用電子式コンピュータが開発されたちょうど10年後です。

人工知能はブームと冬の時代を何度も繰り返しています。
第1次AIブーム(1950年代後半〜1960年代)
コンピュータによる推論・探索の研究が進み、特定の問題に対して解を導けるようになったことが始まりです。東西冷戦中のアメリカでは英語ーロシア語の機械翻訳が注目されました。
しかし、数学の証明のような簡単な問題は解けても、現実の複雑な問題は解けないことが明らかになり、1970年代には冬の時代に入りました。

第2次AIブーム(1980年代)
コンピュータに知識を入れると賢くなるというアプローチが全盛となり、データベースに大量の専門知識を入れたエキスパートシステムが多数登場しました。しかし、その知識を管理・蓄積させることの大変さから1995年頃にまた冬の時代に突入しました。

第3次AIブーム(2010年〜)
ビッグデータを用いることで、人工知能が自ら知識を獲得する機械学習が実用化されました。また、特徴量(学習の際に注目すべき特徴を定量的に表したもの)を自ら発見して学習する深層学習(ディープラーニング)が登場したこともブームの背景です。

3つのブームは関係しあっています。
例えば、1990年にインターネット上にWebページが出現し、データが蓄積されるようになったことで、データ活用が進み、機械学習が発展しました。その機械学習も急に出現したわけではなく、第1次ブームや第2次ブームの時も機械学習は研究されています。

解決したい課題別 機械学習の活用事例

ここからは具体的に機械学習で解決できることを紹介していきます。よく聞く課題をピックアップしています。
(タイトルのリンククリックで当社事例ページに遷移します。)

コスト削減

点検作業の自動化
カメラで撮影した建物画像からひび割れ等の老朽化箇所を検出します。人からシステムに役割を変えることができ、人件費削減だけではなくかかる時間も短縮することができています。

倉庫内配置の最適化
倉庫内にカメラを配置し、撮影することで作業社の行動や物の位置を把握し分析します。倉庫内の動線や配置の最適化によって業務を効率化し、コスト削減を実現します。

特定箇所への農薬散布
企業が農業へ参入したことで、日本では集約農業から大規模農業へと転換が進んでいます。広大な農地で作物を育成する際に、ドローン等で空撮したデータから必要な箇所を割り出して、病害虫が発生している箇所ピンポイントに農薬を散布します。農薬使用量を削減できるだけでなく、他作物へのダメージを減らすことができます。

無人レジ
人がレジ打ちをする作業をなくしシステムが自動計算します。パンやドーナツ、ケーキなどラベルが付いていないものへのアプローチとして有効です。

人依存の解消

受注量予測
過去の受注量のメカニズムからどれだけの発注があるか予測します。ベテランにしかできなかった発注業務の敷居を下げることで、限られた人しかできなかった業務を分配することができます。

野菜収穫の自動化
ノウハウが重要な収穫時の見極めをAIがおこないます。AIが判断した後にロボットに信号を送ると自動で収穫をおこなうマシンも検討できます。

生産性向上

問合せへの自動応答
社内からの問合せ件数は日にかなりものです。その問合せをチャットボットで自動応答にすることができます。質問者も作文に時間をかけずに気軽に質問することができます。

居眠り検知
同じ作業が続く検品等で、うとうとしそうになってしまうことがあります。目の開きがあまくなるとアラートが鳴り、目を覚ましてくれるシステムも構築できます。

品質向上

高解像度画像の作成
最新のAI技術では荒く見づらい画像を高解像度に直すことができます。品質で失注していた案件に、より良い提案が出来る可能性が上がります。

コンベア内の品質チェック
コンベアを流れる物体が良品か不良品かを判定します。不良品可能性のある物は人が見るまでもなく振り分けることで、人の疲労による見落としを減らすことができます。

口コミ分析
集まった口コミを分析し、改善点を明確にします。その口コミが「ポジティブかネガティブか」を分類し、ネガティブな口コミの原因抽出をします。

導入検討フロー

導入検討が成功した事例はまだまだ公開数が少なく、何から手を付けてよいか…。と相談を受けることもあります。(もちろん例外も多々ありますが)一般的な機械学習導入検討フローを紹介します。

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1.企画
機械学習は手段であり、活用が目的ではありません。「解決すべき課題はなにか」を深堀りし、実現したい世界を明確にすることが大切です。手段として機械学習が適切かどうか、費用対効果の試算も必要です。
また、機械学習活用にはデータが必要です。必要なデータが揃っているのか、収集できるのか、どれほど欠損があるのか(すぐに機械学習に使えるキレイなデータはほとんどありません。)の確認もこの段階で重要です。

2.検証(PoC)
企画した計画の実現可能性を確かめる段階です。
機械学習アルゴリズムの選定→データの前処理(整形)→機械学習モデルの選定・構築→評価 のプロセスを実行し、求める結果に達する可能性と工数を確かめます。
求めたい精度に達するまで、別のアルゴリズムを試したり、モデルを変更したりとチューニングします。
機械学習は魔法ではありません。特性上、試してみないとどのくらいの精度が出せるか分かりません。そのため、まずは小さく試して実現可能性を確認することが必要です。

3.本開発
検証段階で実現性が確認できたモデルを実運用に向けて拡大
していきます。
検証段階では限られた条件のため、作成したモデルをそのまま横展開しても思うような結果(精度)が出ないことも多々あります。その場合は、検証段階のモデルやノウハウを活用しつつも、モデルを再チューニングします。
また、目的に立ち返り、「本当に必要な精度」を再検討することで、チューニングにかかるコストを削減することもできます。

4.運用
いよいよ業務で活用します。機械学習を業務に取り入れると、業務フローが少なからず変わります。現場で使われるシステムにするために業務フローを再設計することが必要です。

機械学習はこれからビシネス活用が進んでいくフェーズです。そのため経験豊富なベンダーと二人三脚の検討が成功のコツだと思います。


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わたし個人ではTwitterもやっておりますのでお気軽に質問いただけますと嬉しいです。


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