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ジロ・デ・イタリア2021 第9ステージ

イタリアを舞台に開催される今年最初のグランツール。サイモン・イェーツ、アレクサンドル・ウラソフ、エガン・ベルナル、レムコ・エヴェネプールなどが覇を競い合う、なかなか予想のつかない3週間。

第9ステージはカステル・ディ・サングロからカンポ・フェリーチェまでの158㎞山岳ステージ。

今大会初の「山岳」カテゴリステージで、スタート直後から登り始め最後まで登るか下るかの平坦のほぼない完全アップダウンステージ。

そしてフィニッシュの今大会最初の1級山岳カンポ・フェリーチェは、ラスト1.6㎞が平均勾配8.8%・最大勾配14%かつ「未舗装路」という厳しいレイアウト。

総合争いが巻き起こること必至なこのステージで、果たしてどんな戦いが繰り広げられるのか。

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アクチュアルスタート直後からアタック合戦が繰り広げられ、逃げができては捕まえられるという展開がひたすら続く。

残り122.4㎞地点にあるこの日最初の山岳ポイント、2級山岳パッソ・ゴディの山頂は山岳賞ジャージを着るジーノ・マーダー(バーレーン・ヴィクトリアス)が先頭通過し、18ポイントを上積み。山岳賞2位のジェフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン・チーム)も3位通過で6ポイントを手に入れている。

だがこの集団も総合6位のダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス)が含まれていることもあり容認されることはなく、やがて引き戻されることとなる。


ようやく逃げが確定し、プロトンが落ち着き始めたのはレース開始から2時間20分ほどが経過した残り約82㎞地点。

以下、17名の逃げが確定する。

トニ・ガロパン(AG2Rシトロエン・チーム)
ジェフリー・ブシャール(AG2Rシトロエン・チーム)
ルイスレオン・サンチェス(アスタナ・プレミアテック)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(バルディアーニCSF・ファイザネ)
フィリッポ・ザナ(バルディアーニCSF・ファイザネ)
マッテオ・ファッブロ(ボーラ・ハンスグローエ)
ニコラ・エデ(コフィディス・ソルシオンクレディ)
サイモン・カー(EFエデュケーション・NIPPO)
ルーベン・ゲレイロ(EFエデュケーション・NIPPO)
ジョージ・ベネット(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
クーン・ボウマン(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
エイネルアウグスト・ルビオ(モビスター・チーム)
タネル・カンゲルト(チーム・バイクエクスチェンジ)
マイケル・ストーラー(チームDSM)
バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)
ディエゴ・ウリッシ(UAEチーム・エミレーツ)
エドゥアルド・セプルベダ(アンドローニジョカトリ・シデルメク)

タイム差は少しずつ開きだし、最大で3分以上に。メイン集団の先頭は現在マリア・ローザを着用するアッティラ・ヴァルテル率いるグルパマFDJ。

しばらくは総合勢も息をひそめる、落ち着いた展開がしばし続く形となった。

なお、残り55.9㎞地点の3級山岳はブシャールが先頭通過し、9ポイントを上乗せしている。


残り40㎞を切って、この日最後から2番目の山岳ポイントである2級山岳オヴィンドリへの登りに突入する。

先頭集団も少しずつバラバラになり、残り27㎞地点でサイモン・カー、ブシャールの2人が抜け出す形に。

追走集団は以下の9名が10数秒差で追いかける。

トニ・ガロパン(AG2Rシトロエン・チーム)
マッテオ・ファッブロ(ボーラ・ハンスグローエ)
ニコラ・エデ(コフィディス・ソルシオンクレディ)
ルーベン・ゲレイロ(EFエデュケーション・NIPPO)
ジョージ・ベネット(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
クーン・ボウマン(チーム・ユンボ・ヴィスマ)
エイネルアウグスト・ルビオ(モビスター・チーム)
マイケル・ストーラー(チームDSM)
バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)

メイン集団はグルパマFDJからイネオス・グレナディアーズに牽引役が交代し、サルヴァトーレ・プッチョなどによる本格的な牽引が開始され、少しずつタイム差が縮んでいく。


残り23㎞地点の2級山岳山頂をブシャールが先頭通過し、さらに18ポイントを獲得。

これでこの日を終えた時点でのブシャールの山岳ポイントは51ポイントとなり、一気にマーダーを追い抜いて山岳賞首位に。2年前のブエルタ・ア・エスパーニャに続く山岳賞に向けての重要な一歩を手に入れることとなった。


残り16㎞。追走9名からストーラーとモレマが抜け出して先頭のブシャール、カーを追いかけ始める。やがてここにボウマンも合流し、第1追走は3名に。先頭とは16秒差。先頭とメイン集団とのタイム差は2分半。

残り9.4㎞。先頭でブシャールがカーを突き放して独走を開始。追走集団とは18秒差。メイン集団とは2分10秒差。

残り6.5km。追走3名からボウマンがアタックし、抜け出す。残りの追走集団は先頭ブシャールから22秒差にまで広がっており、追いつくのは厳しそう。

残り3.2㎞。ナルバエスが全力牽引するメイン集団が先頭ブシャールと1分差にまで迫っていく。

残り1.9㎞。ボウマンが単独で先頭ブシャールに迫る。先頭ブシャールとメイン集団とのタイム差は56秒。

そして残り1.6㎞。未舗装路に突入していく。


未舗装路の急勾配でボウマンがブシャールに追い付き、前に出る。

しかしメイン集団も先頭に出たジャンニ・モスコンが強烈な牽引を見せて一気にタイム差を削り取っていく。

残り700mで15秒差。集団先頭はモスコン、2番手にベルナル、アルメイダが3番手で、エヴェネプールが後ろの方に番手を下げている。

残り500mでウラソフが加速。抜け出せない。

残り400mでベルナルがアタックを開始。チッコーネがこれに食らいつく。

しかしベルナルの勢いが強烈! 一気にチッコーネも突き放して加速していく。

先頭のボウマンとブシャールをあっという間に追い抜いて、先頭に躍り出た!


元マウンテンバイク選手で、今年のストラーデビアンケでも3位フィニッシュと未舗装路への適性の高さを見せつけてはいた。

しかし昨年ツール以降、背中と腰の痛みに悩まされ続け、今大会も不安を吐露していた男。

それでもチームは彼のために常に全力で集団をコントロールし、今日もまたモスコンが最大の見せ場を彼のために作ってくれた。

そしてそれに応え、まずは1勝。そしてマリア・ローザを獲得。

これはまだ、総合優勝への決定的な一撃ではまったくない。それでも、苦しい時期を過ごしてきた彼にとって、非常に重要な一歩であることは間違いない。

同じ日のマウンテンバイク・クロスカントリーワールドカップにて、マチュー・ファンデルプールを1分以上突き放して勝利したトム・ピドコックと並び、イネオスにとっては2つの大きな勝利を手に入れた日となった。

第9ステージ


総合争いは思ったよりはタイム差がつかない結果に。とくにレムコ・エヴェネプールは最後まで淡々と踏み続け、結果的に4位に。これは遅れたというよりは、まだまだ牙を隠し持っているような不気味さを感じさせた。


第10ステージは平坦ステージとなり、総合争いの動きは起きなさそう。

そして戦いは凶悪なる第2週へと突入していく・・・。

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