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ツール・ド・ラヴニール2021 第8ステージ

U23版ツール・ド・フランスとも言われ、総合優勝者の多くがワールドツアーレースでも活躍しているという、若手の登竜門の最高峰ツール・ド・ラヴニール。

2019年ツール覇者ベルナルも、2020・2021ツール覇者タデイ・ポガチャルもこのレースで総合優勝していることは有名な話だ。


今年はベイビー・ジロ(U23版ジロ・デ・イタリア)も総合優勝し、6月からUAEチーム・エミレーツ入りしているフアン・アユソー(スペイン、19歳)や8月からイネオス・グレナディアーズのトレーニー契約が決まり、来年からも正式加入がすでに内定しているルーク・プラップ(オーストラリア、21歳)などが注目されていたが、そういった有力選手の多くが落車や不調などにより早々にリタイア。

Live放送のあるこの週末の最終2ステージ(第8・9ステージ)の時点では、すでに40人のライダーが去りプロトンの人数は134名に縮小されていた。


そしてこの第8ステージは、ツール・ド・フランスでもお馴染みの超級山岳クロワ・ド・フェールを終盤(残り12.8㎞)に登るレイアウト。

その登りの途中ですでに先頭は数名の精鋭集団に絞り込まれており、そこから山頂まで残り1.2㎞でアタックしたフィリッポ・ザナ(イタリア、22歳)カルロス・ロドリゲス(スペイン、20歳)、そして現在総合リーダージャージを着るトビアスハラン・ヨハンネセン(ノルウェー、22歳)のみが食らいついていく。


ザナは現在バルディアーニCSF・ファイザネに所属している選手で、昨年も今年もジロ・デ・イタリアに出場しているため聞き覚えのある方も多いかもしれない。

今年のジロではアルベルト・ベッティオルが勝利した第18ステージで区間7位に入っており、そのほかアドリアティカ・イオニカ・レースでは総合5位、チェコで行われたサズカ・ツアーでは区間2位を3回獲り総合優勝するなど、プロレースで十分に活躍している選手だ。

今回のツール・ド・ラヴニールでは第7ステージのグラン・コロンビエ山頂フィニッシュで区間2位を獲るなど活躍し、現在は総合3位。

カルロス・ロドリゲスは言わずとも知れた現イオネス・グレナディアーズ所属の選手。昨年からすでにイネオスには入っており、今年はツール・ド・ラ・プロヴァンスでも強力に集団を牽引する姿などがJsportsの放映にも映し出され、その存在を知っている人も多いだろう。

ミゲルアンヘル・ロペスが総合優勝した5月のブエルタ・ア・アンダルシアでは総合4位。イーサン・ヘイターの第2ステージでのステージ優勝などもアシストしていた。

先のグラン・コロンビエステージではザナに敗れるなどしているものの、第3ステージのチームTTでスペインチームが好成績を残したこともあり、現時点で総合2位。

そして最後のトビアスハラン・ヨハンネセンについては知らない人も多いだろう。彼は現在Uno-Xプロサイクリングチームの下部育成チームに所属しているが、すでに来年から本体チームとの3年間の正式契約が確定している。今年はUno-X本体チームの一員として参戦したサズカ・ツアーで総合2位に入ったほか、フアン・アユソーの総合優勝したベイビー・ジロでも総合2位。名実ともに、アユソーに次ぐ若手最有力候補と言ってよい。東京オリンピックのロードレースにも出場していた(82位)。

双子の兄弟であるアンデルスハラン・ヨハンネセン(ノルウェー、22歳)も今大会の第6ステージで優勝しており、こちらも総合6位につけている。この日はアンデルスとトビアスの兄弟ワンツーが実現している。「山に登ったあとの下った先でのスプリント」フィニッシュでの勝利からも分かるように、この2人も登れるだけでなくスプリント力も非常に高い。


そんな強豪3人組がクロワ・ド・フェールで抜け出し、あとは下りと小さな登りだけでフィニッシュするのだが、ここで3人が互いに互いを牽制。

そうこうしているうちに総合3位のハイス・レームライズ(オランダ、22歳)もここに合流。今年からユンボ・ヴィスマに所属しているネオプロ1年目で、昨年のロンド・デ・リザールで総合5位、今年はセッティマーナ・コッピ・エ・バルタリの初日午後の10㎞個人TTで区間6位のほか、ツール・ド・ロマンディやツール・ド・スイスに出場している。

残り5㎞。先頭は総合1位から4位までの選手が勢ぞろいでフィニッシュへと向かう登りを迎える。そこでも4人はひたすら互いに牽制状態。

トラックレースのスプリント種目で見るようなスタンディング状態で牽制し合い、今にも止まってしまいそうなギリギリのにらみ合いが登りで続いていく。


何しろ、総合首位のトビアスハラン・ヨハンネセンこそ2位のロドリゲスに対して2分17秒差で抜け出ており総合優勝はほぼ確実と見られているものの、2位のロドリゲスと3位のレームライズとのタイム差はわずか6秒。レームライズとザナに至っては、タイム差なしの3位と4位という状態だ。

トビアスはもはやいないも同然の扱いであり、問題は2位から4位の3名による秒差を巡る争いがこの先頭集団では繰り広げられているのだ。


その中でもとくにレームライズは、本当にトラックレースのような恰好で牽制し、そしてライバルたちが目を離した隙にアタックして抜け出すというやり方を3回ほど繰り返した。

しかしそのいずれもが結局は捕らえられ、残り1㎞を過ぎてからの最後のレームライズも攻撃も不発。最後はトビアスが強さを見せつけて前日のグラン・コロンビエ山頂フィニッシュに続く2日連続のステージ優勝。

ザナがそこに続いて2位フィニッシュし、最後は少し遅れかけていたロドリゲスにも抜かれ、レームライズは彼らから3秒遅れの4位フィニッシュとなってしまった。


ボーナスタイムこそないものの、ここで3秒差をザナにつけられてしまったレームライズは総合4位に転落。

それでもなお総合2位~4位とのタイム差が9秒以内に収まるという超接戦の中、最終第9ステージを迎えることとなる。超級山岳を2つ登り、最後はその山頂フィニッシュという十分に難易度の高いステージ。

今年の「若手最強」の座は誰の手に?

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