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ツール・ド・フランス2022 第2ステージ

グランデパールの地コペンハーゲンから西へ約30㎞。世界遺産のロスキレ大聖堂(1170年建立)で有名なロスキレの地から、いよいよ今年最初のラインレースが開幕する。

コペンハーゲンのある島、シェラン島をひたすら西に進み、最後は全長18㎞にも及ぶ巨大な「グレート・ベルト・リンク」(あるいはフランス語でポン・デュ・グランベルト)と呼ばれる、大ベルト(ストレ)海峡を渡る橋を乗り越えていくこととなる。

元々はこの橋を渡ったあと30㎞ほど先にフィニッシュを置くことを予定していた中で、コースディレクターのクリスティアン・プリュドム氏の要望で橋を渡った直後にフィニッシュが置かれたというこのステージ。

強烈な横風が約束されたサバイバル展開の先で、今大会最初の「最強スプリンター決定戦」が繰り広げられる。


最初にできた逃げは4名。

スヴェンエリック・ビストラム(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
マウヌス・コルト(EFエデュケーション・イージーポスト)
シリル・バルト(B&Bホテルス・KTM)
ピエール・ロラン(B&Bホテルス・KTM)

残り141㎞地点に用意された最初の4級山岳は、バルトがロランのために加速するが、これをビストラムが追い抜いて先頭に。コルトがその後ろにしっかりとつく。

そして最後はコルトが自慢のスプリント力でビストラムを追い抜いて先頭で通過。1ポイントを獲得した。

そのままバルトとロランを置き去りにしたビストラムとコルトは、残り130㎞地点の2つ目の4級山岳に挑む。

サイドバイサイドで競り合う二人だったが、最後はやはりスプリント力で分のあるコルトが先頭通過。

これで山岳賞は確定したものの、残り118㎞地点の最後の4級山岳もコルトが加速して圧勝。

沿道を途切れることなく埋め尽くしていた母国の観客たちに見せつけるように、両手を天に掲げガッツポーズを繰り出した。

この日、レース前のインタビューですでに逃げて山岳賞を獲ることが目標と宣言していたコルト。

それを有言実行。そして母国デンマークでの表彰台、特別賞ジャージを着ての第3ステージ出走の権利を得ることができたのである。


メイン集団では2度ほど、横風の中で仕掛けようとする動きがあったが、そこまで強い風が続いていたわけではなく、またプロトン全体が警戒していたこともあって大きな影響はなし。

落車も小規模なものが2度3度起こるも、総合勢に大きな影響を与えることはなかった。

そしていよいよ、ラスト20.5㎞。例のグレート・ベルト・リンクに突入。

マイヨ・ジョーヌを着るイヴ・ランパールト(クイックステップ・アルファヴィニル)を含む落車が発生。そこにファビオ・ヤコブセン(クイックステップ・アルファヴィニル)も巻き込まれる事態に。ただ、これはなんとか落ち着いて集団復帰に成功。

横風はやはり強烈だが、あまりにもみんながみんな警戒しすぎていたことで、致命的な事態は巻き起こらず、フュン島に到着。集団スプリントへと突き進んでいく。

が、ラスト3㎞を過ぎたところで集団前方で大落車が発生。ここで上位候補だったアルベルト・ダイネーゼ(チームDSM)も足止めを食らう。タデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)を含む総合上位候補たちもストップするが、残り3㎞の救済対象区間のためこれは問題なし。

それでもファビオ・ヤコブセン、ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ)カレブ・ユアン(ロット・スーダル)ジャスパー・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)ディラン・フルーネウェーヘン(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)など有力勢のほとんどは集団先頭をしっかりキープしていただけあって無事。

重要なフィニッシャーたちだけが残った小集団にて、いよいよ最後の勝負が開始される。


残り1.5㎞。ランパールトも含むクイックステップのアシスト4枚がヤコブセンを引き連れて先頭を突き進む。

残り1.2㎞でアシストが1枚離れ、左からはアレクサンデル・クリストフのためのアンテルマルシェの隊列が、右からはワウト・ファンアールトを引き上げようとするクリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィズマ)が上がってくる。

残り1㎞を過ぎた直後、クイックステップのアシストがさらに外れ、先頭はマイヨ・ジョーヌのランパールト。もう一人クイックステップのアシストがいたはずだが——このタイミングで落ちてしまい、ヤコブセンは周りにアシストがいない孤立状態に。

先頭ランパールトの背後にはマッス・ピーダスン(トレック・セガフレード)のアシスト(ジャスパー・ストゥイヴェン?)とピーダスンが連なり、その後ろにヤコブセン。ランパールトの右斜め後ろにファンアールトを引き連れたラポルト。

残り600mの左直角カーブを経て集団は縦に長く引き伸ばされていく。

そして残り450mを切ってランパールトが外れ、先頭は(おそらく)ジャスパー・ストゥイヴェン。カレブ・ユアン(ロット・スーダル)ペテル・サガン(トタルエナジーズ)が肩をぶつけ合いながらヤコブセンとファンアールトの背後のポジションを奪い合い、これはサガンが勝利してユアンはサガンの背後につく。

残り400m。先頭ストゥイヴェン、背後にピーダスンとラポルト、その後ろにファンアールト、フィリプセンのアシスト、ヤコブセン、サガン、ジャスパー・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)、ユアンと続く。サガンはさらにヤコブセンとも競り合い前を奪うなど、さすがのポジション取りの巧みさを見せつける。

残り260m。先頭はストゥイヴェン。その背後にピーダスンと並ぶようにしてファンアールトを引き連れるラポルト。ラポルトはややストゥイヴェンに進路を阻まれる。背後ではヤコブセンがサガンと再びポジション争いを繰り広げ、なんとかファンアールトの背後という絶妙なポジションを勝ち取っている。全員が時速55㎞以上のスピードで最後の下りフィニッシュに突き進んでいく。

残り200mでピーダスンが発射。ラポルトは完全に進路をふさがれるが、ファンアールトがすぐさまピーダスンの背後を取っていく。サガンとのポジション争いを制したヤコブセンはそのファンアールトの後輪を捉える。

残り75m。先行するのはファンアールト。

だが、ピーダスンの左側から飛び出したファンアールトに対し、その背後からピーダスンの右側に回り込んで加速したヤコブセンはそのまま強烈なスピードアップを見せて・・・最後の10mでこれを追い抜いた!

最後はアシストの力を借りることなく、ほぼ独力で、ペテル・サガンとのファンアールトの背後という最適なポジション争いを制したうえで、最後は誰よりも強烈なスプリント力を見せつけたヤコブセン。これだけ見ると、やはり「最強」は彼のようにも思える。


第3ステージは今度こそ混乱少な目の純粋大集団スプリントとなりそうな予感。

今回チャンスを失ったダイネーゼは今度こそ強さを見せつけられるか。あるいはサガンとのポジション争いに敗れずるずると後退してしまったユアンは、「初日の呪い」を乗り越えて最強争いに食い込めるか。


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