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ツール・ド・フランス2021 第7ステージ

いよいよ今年のツール・ド・フランスも最初の週末を迎える。アルプスで迎える山岳2連戦。それに先立ち、2000年以降のツール・ド・フランスで最長となる249.1kmの丘陵ステージが開幕する。

フィニッシュ前18㎞地点には最大勾配18%激坂が待ち構えるこの日、今大会初の逃げ切りが決まる。そして、総合争いにおいても予想外の動きが。

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全長250㎞弱のロングステージかつスプリンターに出番のない丘陵ステージであり、翌日から厳しい山岳ステージが始まるということで、大逃げが決まる条件は十分に揃っていた。

結果、最初の40㎞にわたり高速のアタック合戦が行われ、最終的に29名もの大逃げ集団が形成された。追い風基調もあり、前半戦は平均時速50㎞で推移した。

それは分かるのだが、問題はそこにマイヨ・ジョーヌを着るマチュー・ファンデルプールや総合で30秒しか遅れていない総合3位のワウト・ファンアールトが含まれていたこと。

相変わらず常識破りの走りを見せるシクロクロッサーたち。UAEチーム・エミレーツも必死でこれを追いかけていたようだが最終的には崩壊し、タイム差は6分以上にまで開き、逃げ切りは濃厚となった。

ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)
マイク・テウニッセン(ユンボ・ヴィスマ)
ディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ)
ヴィンツェンツォ・ニバリ(トレック・セガフレード)
トムス・スクインシュ(トレック・セガフレード)
ジャスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)
カスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ)
マーク・カヴェンディッシュ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
イマノル・エルビティ(モビスター・チーム)
イバン・ガルシア(モビスター・チーム)
パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグローエ)
クリストフ・ラポルト(コフィディス・ソルシオンクレディ)
マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)
クサンドロ・ムーリッセ(アルペシン・フェニックス)
ルーベン・ゲレイロ(EFエデュケーション・NIPPO)
マグナス・コルトニールセン(EFエデュケーション・NIPPO)
ドリアン・ゴドン(AG2Rシトロエン・チーム)
ミヒャエル・シェアー(AG2Rシトロエン・チーム)
セーアン・クラーウアナスン(チームDSM)
フィリップ・ジルベール(ロット・スーダル)
ハリー・スウェニー(ロット・スーダル)
マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)
サイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ)
ユーゴ・ウル(アスタナ・プレミアテック)
ヴィクトール・カンペナールツ(チーム・キュベカ・ネクストハッシュ)
ヤン・バークランツ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
ボーイ・ファンポッペル(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
フランク・ボナムール(B&Bホテルズ・p/b KTM)

残り133.7㎞地点の中間スプリントポイントではマイヨ・ヴェールを着たカヴェンディッシュが先頭通過して20ポイントを獲得。これで合計168ポイントに。

マイヨ・ヴェール争いにおけるライバルたち(102ポイントのジャスパー・フィリプセン、99ポイントのナセル・ブアニ、96ポイントのマイケル・マシューズなど)は誰も逃げ集団の中に入り込まなかったため、カヴェンディッシュだけが20ポイントを丸々獲得する形に。

今年ここまででまさかの2勝を成し遂げている復活のマーク・カヴェンディッシュ。2011年以来10年ぶりのマイヨ・ヴェール獲得に向けて爆走中である。


次いで山岳賞争い。ここまでのステージでは混戦を極めた山岳賞争いは、現在イーデ・スヘリンフ(ボーラ・ハンスグローエ)が5ポイントで首位に立っている。

しかしこの日は今大会初の2級山岳(5ポイント)が用意されており、スヘリンフも逃げに乗っていないことから、この日の2級山岳を制したものがこの日の山岳賞を確定させると予想された。

そんな中、残り87.6㎞地点に用意された3級山岳コート・ドゥ・シャトー・シノン(登坂距離3.2km、平均勾配5.3%)で最初の山岳争いが勃発。

スヘリンフを除くと4ポイントで首位に立つマチュー・ファンデルプールがチームメートのクサンドロ・ムーリッセを伴いながら集団の先頭に陣取っていたものの、山頂が近づくにつれロット・スーダルやアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオの選手たちが前の方に上がってくる。

そして残り400mを切ってヘアピンカーブを曲がった直後の立ち上がりでブレント・ファンムール(ロット・スーダル)がアタック。そこに、スロベニアチャンピオンジャージを着るマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)が追随する。

そして残り160mを切ってモホリッチがファンムールを突き放して抜け出し、先頭通過。2ポイントをまずは獲得し、そのままファンムールと2人だけで逃げ始めた。


続く残り70.9㎞地点の4級山岳コート・ドゥ・グリューアングレンヌ(登坂距離2.6km、平均勾配4.2%)もモホリッチがそのまま先頭通過。

その後は追走集団からジャスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)ヴィクトール・カンペナールツ(チーム・キュベカ・ネクストハッシュ)が先頭2人にブリッジを仕掛け、4名に。

残り35.3㎞地点の3級山岳コート・ドゥ・ラ・クロワ・ド・ラ・リベラシオン(登坂距離4.6km、平均勾配5.3%)はモホリッチ、ストゥイヴェンの順番で通過していった。これでモホリッチは5ポイントにまで積み上げた。


そしてこの日最大の勝負所、残り18.1㎞地点の2級山岳シニャル・ドゥシャン(登坂距離5.7km、平均勾配5.7%)に突入する。

2段階の登りで前半部分は決して厳しくはないものの、登り返しとなるラスト2㎞が最大勾配18%・平均勾配でも11~12%はある超激坂となっているこの登りで、モホリッチが他のメンバーを全員突き放して独走を開始する。

そのまま2級山岳も先頭通過し、最後の4級山岳も獲得してこの日だけで11ポイントを獲得。

文句なしの山岳賞獲得となった。


もちろん、それだけではない。追いかけるストゥイヴェンを1分以上突き放し、モホリッチは単独のままフィニッシュへと突き進んでいく。

ジロ・デ・イタリアでは命の危険すら感じさせたショッキングな落車でリタイアとなったモホリッチ。

だが、そこからの復活劇。それも、この250㎞弱の超ロングステージでのサバイバルなレースでの勝利。かつて成し遂げたジロ、ブエルタのステージもまたロングステージで、彼のタフネスさを見せつける結果となった。

最後はフィニッシュ後、涙したモホリッチ。彼ほどの男すらも涙を流させることに、ツール・ド・フランスというレースの偉大さを思わせた。

第7ステージ


そして、勝負所となったシニャル・ドゥシャンでは、メイン集団における大きな動きすら巻き起こした。

まずは、昨年総合2位で今年の総合優勝候補でもあった総合10位プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)が、この激坂で一気に集団から崩れ落ちる。

もはや、アシストも誰一人降りてこず、この日、彼は最終的にメイン集団から4分を失い、9分11秒遅れの総合33位に転落した。

彼の2度目のツール総合優勝争いは早くも幕を閉じた。しかし、彼は私が知る限りプロトンでも特に精神力の強い男。きっと、この同じツールの中で、「リベンジ」を果たしてくれるはずだ。


さらに、シニャル・ドゥシャンの頂上付近でアタックを仕掛けたのが、1分44秒遅れの総合9位リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ)。ここまでのステージでの登りではゲラント・トーマス以上の走りを見せておりエース候補となっていた彼だが、先日の個人タイムトライアルで大きくタイムを失う結果に。今日はそのビハインドを取り返すべく、鋭いアタックを繰り出した。独走を成功させた彼の前には逃げに乗っていたチームメートのファンバーレの姿もあり、これは大きなチャンスであるかのように思えた。

だが最終的にフィニッシュまで辿り着いたカラパスのすぐ後ろにはもう集団の姿が。

カラパスの挑戦はこの日失敗に終わったものの、イネオスがUAEに対して積極的な戦いを仕掛けるつもりがあることを明確に示し、今後の動きが期待できる一幕となった。


この日、マイヨ・ジョーヌの想定外の大逃げによって、総合リザルトも大荒れ。ファンデルプールがポガチャルらに3~4分以上突き放しての首位に立っている。

第7ステージ後の総合リザルト

しかし、第8ステージからはアルプス山岳2連戦。

ここでこの総合リザルトは果たしてどうなるか・・・3週間後の結末の行方を占う重要な週末が始まる。

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