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イツリア・バスクカントリー2021 第3ステージ

スペイン・バスク地方で開催される、パンチャーとオールラウンダーのためのステージレース。

今年はタデイ・ポガチャル、プリモシュ・ログリッチ、アダム・イェーツといった今年の「3強」が初めて激突するレースであり、今年最注目の1週間である。


第3ステージはアムリオからエルムアルデまでの167.6km丘陵ステージ。

スタート直後に3級山岳を登り、その後は長い高原地帯を経て、ラスト20㎞を切ってから3つの登り。

最後は1級山岳エルムアルデ山頂フィニッシュ。登坂距離3.1km、平均勾配11.1%。最大勾配は20%に達するという実にバスクらしい凶悪な登りで、早速総合争いが激化することが予想された。

コースプレビューはこちらから


逃げは7名。

ミケルフローリヒ・ホノレ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
テオ・ドラクロワ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
ラリー・ワーバス(AG2Rシトロエン・チーム)
オイエル・ラスカノ(カハルラル・セグロスRGA)
ダニエル・ナバーロ(ブルゴスBH)
ゴッツォン・マーティン(エウスカルテル・エウスカディ)
フェリックス・ゴール(チームDSM)

プロトンは総合リーダージャージを着るプリモシュ・ログリッチ率いるユンボ・ヴィスマが牽引。

タイム差は最大で6分近くまで広がったものの、逃げ切りを容認されるような雰囲気は微塵も感じられなかった。


残り22㎞地点に用意されたこの日2つ目の中間スプリントポイントに向けて、逃げ集団からラスカノがアタック。

残りの逃げ集団の中からホノレだけがこれを追いかけ、残りの5名はラスト15㎞地点で集団に吸収された。

独走を続けるラスカノ――21歳のバスク人――は、最後から2番目の登り、2級山岳マルクアルトゥの急峻な登りでついに集団に捕まえられる。ホノレは彼に追い付くことなく、同じ山岳の麓で、イスラエル・スタートアップネーションが主導するプロトンに捕まえられていた。


とくに大きな動きなくこの2級山岳を乗り越え、最後の1級山岳への登りへと到達するプロトン。

この登りの麓で落車が発生。第1ステージの個人TTでも好成績を残していたウィルコ・ケルデルマン(チームDSM)とこの日の優勝候補でもあったマイケル・ウッズ(EFエデュケーション・NIPPO)が巻き込まれる。ケルデルマンは残念ながらリタイアとなってしまう。

この混乱に前後して集団からはマグナス・コルト、セルジオ・イギータ(共にEFエデュケーション・NIPPO)、オウレリアン・パレパントル(AG2Rシトロエン・チーム)、そしてリチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ)の4名が抜け出す。

これが残り2.6kmで捕まえられると、今度はタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)、プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)、そしてカラパスの3名が先頭に。

マウリ・ファンセヴェナント(ドゥクーニンク・クイックステップ)を中心に集団がこれを追いかけ、残り2.3㎞から20%の超激坂勾配が続く九十九折ゾーンへと突入していく。


一度、カラパスが単独で抜け出す場面も。ログリッチが背後のポガチャルの動きを警戒して何度も振り返りながら集団の先頭を牽引していく。

しばらく激坂勾配でカラパスがリードを広げているように見えていたが、やがて加速を開始したポガチャルが一気にこれを追い抜いていく。ログリッチは当たり前のようにこれに食らいついていくが、プロトンのほかのメンバーはただ引き離されるだけだった。


残り1.6㎞。先頭の2人がやや牽制状態に陥っている間に、この2強に唯一割って入れそうな男、アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ)が集団からアタックするような形でブリッジを架けてくる。これに追随してこれたのは同じく総合上位候補筆頭のミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)と、驚くべき才能を発揮しつつあるファンセヴェナント。

一度は5名となった先頭集団から再びポガチャルがアタックし、ログリッチだけがついていくという先ほどと同じ状況が生まれ、また置いていかれるアダムたち。

残り1.1㎞になると今度はダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)とアレハンドロ・バルベルデ(モビスター・チーム)が後方から抜け出してきて、ここにランダとアダム・イェーツもついてくる。ファンセヴェナントはここで脱落。

一度はゴデュが先頭に立った瞬間もあったが、結局抜け出すことはできず、残り500mからログリッチが最後の加速を開始。後ろについていたバルベルデもただただ引き離されるばかりであった。

そしてやはり、このログリッチの攻撃についていけたのはポガチャルだけだった。

最後は昨年のツール・ド・フランス第15ステージを彷彿とさせるような攻防戦を経て、ポガチャルがログリッチに先着。

これでボーナスタイム4秒分をログリッチから得て、昨日の4秒と合わせ、初日の個人タイムトライアルでログリッチから奪われた28秒のうち8秒分を取り戻し20秒差での総合2位へと浮上した。

第3ステージ


現在のプロトンで最も強い10名が揃ったというべきリザルト。この中にゴデュ、ノックス、ヴィンゲゴー、ファンセヴェナント、マクナルティといった若手たちが入り込んでいることが素晴らしい。

ログリッチにじわじわと迫りくるログリッチ。今のところ実力は拮抗。だが最後にどうなってしまうのかは、全く予想がつかない。それこそ最終日の最後の瞬間まで・・・。

一方の「3強」の一角アダム・イェーツはログリッチから39秒差、ポガチャルからも19秒差を付けられている状況。

個々の力が出やすい今日のようなパンチャー向けステージではなかなか難しいだろうが、最終日の本格的山頂フィニッシュなどでチームの力を活かしてチャンスを掴むことはできるか。

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