パリ~ニース2021 第2ステージ
「太陽へと向かうレース」「ミニ・ツール・ド・フランス」の異名で知られる、サイクルロードレースシーズンの本格開幕を告げる8日間のステージレース。
第2ステージはパリ近郊のオワンヴィル=シュル=モンシアンから南下し、オルレアン近郊のアミリーに向かう188kmの平坦ステージ。
いよいよ「太陽に向か」って行くこのステージで、第1ステージに続く第集団スプリントが期待された。
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スタート開始から20㎞は逃げが生まれない展開。ようやく生まれた2名の逃げ——チーム・キュベカ・アソスのサンデル・アルメとアルペシン・フェニックスのドリス・デボント——も、1つ目の中間スプリントポイント(残り97㎞地点)直前の集団のペースアップによって早くも吸収。
マイケル・マシューズによる先頭通過の後もカウンターで飛び出す選手がいないまま、逃げの生まれないプロトンが100㎞近い道のりを淡々と突き進んでいくことに。
パリから離れ、遮るものが何もない風景が広がり始める残り70㎞手前。
ドゥクーニンク・クイックステップの面々が集団の先頭に集まってきた途端に始まった、横風分断作戦。
一気に集団は3つに割れ、ステフェン・クライスヴァイクなどが後続に取り残されるような事態へと発展する。
とはいえ、総合エースや優勝候補スプリンターたちは大体が先頭集団に入り込んでおり、街中に入って風も弱まった残り66㎞地点あたりでこの攻撃は一度緩まることとなる。
そして残り33.9㎞地点の第2中間スプリントポイント。
ここでもまたアレックス・エドモンドソンのリードアウトを受けてマイケル・マシューズが先頭通過を狙って飛び出すが、ここで先頭を奪ったのはイスラエル・スタートアップネーションのアンドレ・グライペルだった。
マシューズは2位。それでも第1中間スプリントポイントと合わせ、この日5秒のボーナスタイムを獲得することとなった。
この第2中間スプリントポイント通過直後に集団の中でジョージ・ベネット(ユンボ・ヴィスマ)が落車。頭を強く打ったようで、脳震盪も不安視されるような状況に。
さらに残り22.7㎞地点でも落車が発生。今年AG2Rからトタル・ディレクトエネルジーに移籍したアレクシー・ヴュイエルモが犠牲になる。
その他、細かな落車が最後まで頻発し、決して平穏とは言い切れない状況のまま、最後の集団スプリントへと突入していく。
狭い街中の道、登り、ヘアピンカーブ、ラウンドアバウト。
決してイージーではないいくつもの困難を乗り越えて、縦に長く伸びた集団はラスト1㎞を迎える。
前日はあまりにも早すぎる集団支配で失敗したグルパマFDJはこの日、残り3㎞あたりから隊列を整え始め、盤石なトレック・トレインの番手につけるなど、期待できる動きを見せていた(ただしこの時点でアシストがシンケルダムとグアルニエーリだけになってしまっているのはやや不安)。
その隣からはアッカーマンの前にアシスト3枚を揃えるボーラ・ハンスグローエのトレイン。トレックもピーダスンの前にアシストを3枚残しており、盤石の構えで先頭を支配していた。
残り1.7㎞。いよいよ問題のヘアピンカーブを前にして、整然としていた集団の支配体制が一気に崩れ始める。
カーブを越えた先の緩やかな登りでグルパマFDJトレインが崩壊。アルノー・デマールは一気にポジションを落とすことに。逆にここで先頭を奪い取ったのが、ケース・ボル以外にアシスト3枚を揃えたチームDSMだった。
昨年総合2位のティシュ・ベノートが献身的に引き上げるDSMトレイン。残り1㎞を切って、残り800mに達した段階でアシストはまだ3枚。一方のライバルチームたちは、ジャスパー・ストゥイヴェンを残しているトレック以外はほとんどすべてエース単騎での戦いを強いられていた。
ただ、DSMトレインも、ラスト500mの最後の右カーブの段階で崩壊。この日、最も強いリードアウターはジャスパー・ストゥイヴェンだった。
しかしDSMトレインもその仕事は(UAEツアー第7ステージのロット・スーダルトレインのように)フィニッシュリードアウトではなくそこに至るまでの「運び屋」であったと見れば実に素晴らしい働きをしていた。
ストゥイヴェンに導かれるピーダスンと、その番手のコカールの後輪にしっかりと飛び乗ったケース・ボル。
あとはもう、彼自身の強さを見せつけるだけだった。
残り150mでストゥイヴェンの背中から右に飛び出すピーダスン。その背後にコカールがついたまま、そのスリップストリームからの飛び出しを狙っていた。
しかしその瞬間、ボルは反対の左側からスプリントを開始した。彼に「発射台」はいらない。それは、彼にとっての初のワールドツアー勝利となる2019年ツアー・オブ・カリフォルニア第7ステージでの勝ち方と同様だった。
目の前に迫りくる空気抵抗を撥ねつけて、黒い弾丸は誰よりも速く、フィニッシュラインへと突っ込んでいく。
最後は圧倒的だった。昨年のツール・ド・フランスで、圧倒的なチーム力を見せながらも勝ちきれずにいた彼が、その悔しさを晴らすかのように、このミニ・ツール・ド・フランスでの初勝利を掴み取った。
フィニッシュ直前のカーブの連続で「最強チーム」たちは皆混乱し、崩壊した。その中で混戦に強いボル、ピーダスン、マシューズがしっかりと勝利を掴み取った形だ。
とくにトレック・セガフレード、そしてジャスパー・ストゥイヴェンはクールネ~ブリュッセル~クールネ、昨日の第1ステージ、そして今日と、とにかく常に良い働きをしてくれている。
この混戦の中でもしっかりとエースを運びきるその柔軟な位置取りの巧みさはさすが昨年のオンループ覇者。
トレックもDSMも、ドゥクーニンク・クイックステップやイネオス・グレナディアーズとはまた違った種類の「チーム力」を発揮してくれていて、今年の今後の活躍も実に楽しみになってくる。
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