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ジロ・デ・イタリア2022 第2ステージ

第1ステージはこちらから

今年のジロ・デ・イタリアのハンガリー開幕3連戦の2つ目は、首都ブダペスト市内を駆け巡る9.2㎞個人タイムトライアル。

しかしラスト1.3㎞に平均勾配4.9%の登りが用意されており、一筋縄ではいかないレイアウト。

果たして勝つのはTTスペシャリストか、登りもいける総合系のオールラウンダーか。そしてマチュー・ファンデルプールは、マリア・ローザを守ることができるのか。


2番手出走でいきなり優勝候補の1人ヤン・トラトニク(バーレーン・ヴィクトリアス)。しかし前日の第1ステージで落車して手首を痛めているらしく、5番出走のアレックス・ドーセット(イスラエル・プレミアテック)に32秒差をつけられて振るわない結果に終わった。

このドーセットの叩き出した記録9分48秒99はなかなか塗り替えられることなく、およそ1時間近くそのホットシートを守ることとなった。勝利自体は2年前のこのジロ・デ・イタリアでの逃げ切り勝利以来無いものの、今年のティレーノ~アドリアティコ初日TTで5位など、ワールドツアークラスでもまだまだ実績を出しているTTスペシャリストである。

この記録を破ったのが51番出走のヨス・ファンエムデン(ユンボ・ヴィズマ)。2017年ジロ・デ・イタリア最終日TTでトム・デュムランを負かしてステージ優勝を果たした男が、ドーセットの記録を3秒更新して暫定首位に。

直後、56番出走のチームメート、エドアルド・アッフィニがさらに3秒、ファンエムデンの記録を塗り替えて暫定首位に立った。

今大会、全チーム中最もTTでの実績が輝かしいメンバーを引き連れてきているユンボ・ヴィズマ。その実力の高さを早速見せつけている。

だがこのアッフィニの記録も、30分後に出走したボーラ・ハンスグローエのレナード・ケムナが6秒、塗り替える。

直近のツアー・オブ・ジ・アルプスでも勝利している山岳エスケープスペシャリスト。確かに(トーマス・デヘントのように)逃げスペシャリストはTTも悪くないことが多いが、ここで彼が暫定首位に立つのはいささか驚きであった。

さらに、140番手出走の24歳マッテオ・ソブレロ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が、登りの麓に位置する中間計測地点ではケムナから3秒遅れだった中で、登りでこれを7秒上回り、最終的には4秒差をつけて暫定トップに立った。

現イタリアTT王者でもあるソブレロ。昨年まではアスタナに所属していたが、今年からバイクエクスチェンジに。登りでも調子がいいことを示し、今年のサイモン・イェーツの「4度目のリベンジ」に向けてアシストとしても十分に期待ができそうな様子だ。


そんな驚きのタイム更新が繰り返される中、ついにスタートラインに立ったのが、ユンボ・ヴィズマのエースナンバーを着ける元TT世界王者トム・デュムラン

今年、山岳レースではイマイチな姿を見せ続けており、今回も総合エースをどこまで担っていけるかは不安視されているものの、TTに関しては昨年も東京オリンピックの丘陵系レイアウトでも銀メダルを獲るなど、好調。

その勢いは今回も健在で、中間計測ではケムナを4秒更新。そして登りの頂上に引かれたフィニッシュラインではなんとソブレロを7秒83も更新して堂々の暫定トップ。やはり、TTでの強さは間違いない!

と思った次の瞬間。デュムランの次を走っていたサイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が、中間計測でデュムランを1秒更新したうえで強烈な登坂を見せ、最終的にはそのままデュムランを5秒上回る驚異のタイム。

たしかに、3年前のパリ~ニースの丘陵TTでは優勝し、今年もパリ~ニースのTTで5位に入ってはいる、登りを含んだTTでは比較的安定して好成績を出せる男ではあるものの・・・まさか、オリンピアン級のTT力を見せるデュムランを、軽々と上回ってしまうとは。

そして注目のジョアン・アルメイダは・・・中間計測で18秒遅れ。

それでも登りの先のフィニッシュでは12秒遅れと、サイモン・イェーツを登りだけで見れば6秒上回る走りを見せたアルメイダ。最終的には11位と決して良い走りではなかったが、登り自体は調子が良さそうな手ごたえを感じさせてはくれた。

そして最後、マリア・ローザを着るマチュー・ファンデルプール。昨年のツール・ド・フランスのTTでも5位を記録した未知数の男の走りやいかに——。

中間計測では、サイモン・イェーツから0秒65差、トム・デュムランからは0秒04差という超僅差で3位。やはりこの男は、規格外である。

最終的にフィニッシュではデュムランを2秒上回り、サイモン・イェーツに3秒差の2位フィニッシュ。

マリア・ローザは当然キープ。それどころか、優勝もごくわずか目の前にすらあっという、あまりにも衝撃的なフィニッシュだった。


いずれにせよ、勝ったのはこの男。実績はあったが、それでもプリモシュ・ログリッチやタデイ・ポガチャルのような真正オールラウンダーとは異なるイメージを持ってしまっていた男が、見事な短距離TT制覇。

まずは総合ライバル勢に、貴重なタイム差をつけることに成功した。

年齢はすべて2022/12/31時点のものとなります。

マリア・ローザは当然ファンデルプールがキープするも、新人賞マリア・ビアンカは区間4位のソブレロが獲得。また、イネオスのこれも未知数な才能トゥレットが5位というのも驚きの結果であった。同じくビアンカ後方の2019年ツール・ド・ラヴニール覇者フォスも区間6位と健闘した。

独断と偏見で選んだ総合有力勢のみを抽出したタイム差は下記の通り。

総合勢でリードしたのはイェーツ、フォスのほか、アルメイダも期待ほどではなかったがしっかりとリードし、TTは苦手な印象があり実際にそれで総合2位を逃したこともあるロマン・バルデがこのメンバーの中では6位とかなり健闘したと言えるだろう。サブエースのアレンスマンともども、悪くない結果だ。

逆に落としてしまったという印象があるのが、過去TTでも好成績を残したことのあるヒュー・カーシー、ロペス、チッコーネ、ブッフマンなど。ロペスはある程度予想通りで、チッコーネもこんなものだろうが、昨年の悔しさを晴らし今年こそ総合で結果を出したいチッコーネにとっては苦しい滑り出しとなってしまった。

ブッフマンに関してはクラッシュがあったという情報も。元々TTは苦手なタイプではなかっただけに残念。ケルデルマン、ヒンドリーが悪くない結果だったが、この「トリプルエース」体制が果たして今後どうなっていくか・・・。


もちろん、まだまだ何かが決まるようなタイム差がついたわけではない。

明日は集団スプリントステージだが、第4ステージでいきなり登場するエトナで、またこの辺りの勢力図がどうなるか、楽しみだ。


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