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ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2021 第4ステージ

スペイン北東部カタルーニャ州を舞台とした7日間のステージレース。例年、クライマーのためだけのステージレース、といった印象だったが、今年は中距離個人タイムトライアルが登場したことで、よりオールラウンダー向けに。

とくにイネオスやユンボは誰がエースかわからないくらいの豪華な布陣で臨んできており、今年のグランツールを占ううえで重要な一戦となっている。


第4ステージはリポルからポルト・アイネーまでの166.5㎞山岳ステージ。

コース前半に1級山岳、そして後半に超級山岳を2つ登らせる今大会のクイーンステージ。前回登場の2016年にはトーマス・デヘントが逃げ切りを決め、総合勢ではアルベルト・コンタドールとナイロ・キンタナが熾烈な争いを繰り広げた登り。

今年は前日のヴァルテ2000で強さを見せつけたアダム・イェーツが再び圧倒的な強さを見せるか、それとも。

コースプレビューや注目選手は以下の記事で


スタート直後は何度かアタック合戦が繰り広げられながらもなかなか決まらず。

そんな中、50㎞程消化して5年前の勝者トーマス・デヘントが単独で抜け出す。

ただ、このデヘントも、これを追ってきた追走集団に吸収され、ようやく確定した逃げ集団は12名に膨れ上がった。

レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ)
アントワン・トールク(ユンボ・ヴィスマ)
フアン・ロペス(トレック・セガフレード)
クレマン・シャンプッサン(AG2Rシトロエン・チーム)
リゴベルト・ウラン(EFエデュケーション・NIPPO)
クーン・ボウマン(ユンボ・ヴィスマ)
アントニオ・ペドレロ(モビスター・チーム)
セルヒオ・サミティエ(モビスター・チーム)
アッティラ・ヴァルター(グルパマFDJ)
ジョー・ドンブロウスキー(UAEチーム・エミレーツ)
トーマス・デヘント(ロット・スーダル)
ルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)

残り60㎞手前で、最初に逃げていたデヘントが遅れ始める。

時を同じくして集団から単独で抜け出しを図ったのが、昨年ツール・ド・フランスでも逃げ切り勝利を果たしているレナード・ケムナ。

残り18㎞から始まる最後の登り超級ポルト・アイネーの麓で逃げのほとんどすべてが吸収される中、唯一ケムナだけが先頭でひたすら逃げ続けていた。


ポルト・アイネー登り始めからこの日も前日同様にイネオス山岳列車が先頭を支配する。

残り18㎞から残り13㎞までの5㎞にわたって、ポイント賞ジャージを繰り下げで着るローハン・デニスが牽引。残り15㎞でケムナも捕らえ、このプロトンが先頭に立つ。

残り13㎞でデニスが仕事を終えると、その後ろにいた総合21位リチャル・カラパスが後を引き継ぐ。

カラパスの後ろには総合4位ゲラント・トーマス、その後ろには総合2位リッチー・ポート、そして最後尾には総合首位のアダム・イェーツ。

とにかく豪華すぎるイネオスの面々。残り11㎞でカラパスがメカトラで一旦下がるも、残り9㎞で再び先頭に戻ってきてラスト2.6㎞までひたすら牽き続ける。

相変わらず最強の山岳トレイン。あとは、エースの調子はどうだ?


ライバルチームも負けていない。今大会イネオスに次ぐ豪華さで挑んできていたユンボ・ヴィスマは、そのトリプルエースの一角、ジョージ・ベネットが体調不良でDNS。

残る総合11位セップ・クスと総合15位ステフェン・クライスヴァイクのうち、クライスヴァイクの方が先に残り9㎞でアタックを仕掛ける。

しかしこれは残り8.8㎞でカラパスが牽引するイネオス列車に寄って吸収。

続いて残り7.2㎞で、チーム・バイクエクスチェンジのエステバン・チャベスがアタックした。


今シーズン、最初の出場レースとなったこのボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ。その最初の山岳ステージである第3ステージで彼は、終盤に抜け出してステージ優勝のアダム・イェーツに次ぐ13秒遅れの区間2位。総合でも9位につけていた。

それでも、アダム・イェーツとは1分21秒差。

イネオスとしても、何が何でも捕まえる必要があるわけではなく、総合を脅かすことがない程度の位置に留めておけばそれで正解だった。


と、いうことで、カラパスがひたすら牽き続けそこまで決定的にペースの上がらない集団から、1分40秒遅れの総合16位エンリク・マスが残り3.8㎞でアタック。

しかしこれはそこまでペースが上がらず、残り2.5㎞でカラパスが終了しトーマスが先頭を牽いてから、ただちに吸収して、そのままマスはずるずると落ちていくことに。

UAEチーム・エミレーツのダビ・デラクルスもブランドン・マクナルティもこのペースアップの中で脱落。


だが、チャベスもさらにペースを上げていた。

残り4㎞時点で17秒差にまで縮まっていたタイム差も、残り3㎞で23秒差、残り2㎞で21秒差と再拡大していく。

残り1.6㎞でリッチー・ポートがトーマスの前に出てさらなるペースアップ。

ジョアン・アルメイダに最後まで付き従っていたドゥクーニンク・クイックステップのファウスト・マスナダも、飛躍し続けている若者ハーム・ファンフック(総合12位)もここで脱落。

そして最後のストレートで、ジョアン・アルメイダもずるずると一人離されていく。UAEツアーでは総合3位と非常に調子の良かった彼も、最近はちょっと苦しい戦いを強いられているようだ。


だがそんなポートのハイ・ペースも、20秒先にいるチャベスに追い付くことはなかったようだ。

最終的には7秒にまで縮めたエステバン・チャベス。ギリギリで逃げ切り、絶叫と共に2年ぶりの勝利を飾るフィニッシュを彩った。

第4ステージ


「復活」・・・とはやはり言いたくない。ここはあくまでも彼の通過点に過ぎない。

自分が見始めた2015年にまさに活躍し始めていたエステバン・チャベス。思い入れたっぷりの彼がかつてのような力を取り戻しつつあるのだとしたら、アダム・イェーツとジャック・ヘイグを失ったこのチームの重要な柱の1つとして、期待していくことができそうだ。

あと個人的に驚きなのがマイケル・ウッズ。昨年のティレーノ~アドリアティコのクイーンステージのように、本格的な長い山岳の登りでは持ちこたえることのできないパンチャー的な脚質だと判断していた彼が、この日はしっかりと登り続けての2位フィニッシュ。

彼もまた、進化しているのかもしれない。


この日を終えて総合ワンツースリーはすべてイネオス。総合3位と4位との差はわずか4秒だが、その総合4位が今年41歳となるアレハンドロ・バルベルデなのだから驚きだ(同タイム差で総合5位にはウィルコ・ケルデルマン)。

残るステージは3つ。但し昨日今日のような山頂フィニッシュや個人TTはなく、総合争いが起きるとしたら第5ステージのフィニッシュ前26.5㎞地点に用意された1級山岳モンセラートの登りと、そこからのダウンヒル。

そして第7ステージの「モンジュイックの丘」6連続登坂での大逆転劇くらいで、いずれも決定的な差を付けるのは容易ではなさそうだ。


このままイネオスが圧倒するのか? それとも・・・

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