東京オリンピック男子ロードレース
新型コロナウイルスの影響で1年の延期を経ながらも開催された東京オリンピック男子ロードレース。
舞台は東京・武蔵の森公園から静岡・富士スピードウェイに至るまでの234㎞。
途中、道志みち(1,121m)や富士山麓(1,451m)、三国峠(1,171m)といった難所をこなしていき、総獲得標高は4,856m。純粋なクライマータイプの選手たちによる金メダルの争いが予想された。
Youtubeで予習実況を行っております
アクチュアルスタート直後、意外にも8名の逃げがすぐさま確定する。
ニコラス・ドラミニ(南アフリカ)
ミハエル・ククルレ(チェコ)
ユライ・サガン(スロバキア)
エドゥアルド・グロス(ルーマニア)
ポリクロニス・ゾルザキス(ギリシャ)
オールイス・アウラール(ベネズエラ)
ポール・ドウモン(ブルキナファソ)
エルチン・アサドフ(アゼルバイジャン)
前回覇者のグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー)やツール覇者ポガチャルらのアシストとして参戦したヤン・トラトニク(スロベニア)などが中心となって牽引する集団は逃げ8名に対して最大で20分以上のタイム差をつけて、最初のチェックポイントである道志みち(残り163.5㎞地点)を通過。
生憎の曇り模様で富士山の雄大な姿はなかなか目にすることはできなかったものの(但しヘリコプターが雲の上に出て映した神秘的な姿は捉えることができた)、山中湖、籠坂峠を経てなかなか日本では見ることのできない空撮での美しい風景を世界に届けることができた。
勝負が最初に動き出したのは、残り110㎞を切ってから登り始める富士山麓(南富士エバーグリーンライン、登坂距離15km、平均勾配5.9%)。
そこまで集団を献身的に牽引し続けてきたファンアーヴェルマートが仕事を終えて落ちる一方、トラトニクが牽引を続ける先頭付近にはベルギーチームが隊列を組む(ティシュ・ベノート、マウリ・ファンセヴェナント、ワウト・ファンアールト、レムコ・エヴェネプール)。
さらに残り3㎞を切ってジュリオ・チッコーネ(イタリア)が先頭に立つと、一気にペースアップ。後方にはダミアーノ・カルーゾ、アルベルト・ベッティオル、ヴィンツェンツォ・ニバリといったチームメートが控えており、勝負の始まりを感じさせた。
このペースアップによって一度日本の新城幸也、増田成幸、そしてフランスのレミ・カヴァニャ、ポーランドのマチェイ・ボドナルなども落ちていく。
集団が山頂を通過する頃には先頭5名(アサドフとドウモン、グロスはすでに道志みち終盤で脱落)とのタイム差も一気に5分台にまで縮まっていた。
だが、チッコーネによるこの攻撃は、決定的な分裂までは引き起こさなかった。そのあとの籠坂峠からの長い下りを経て、新城や増田も含め落ちていた選手たちも復帰。
そして全部で3周回することとなる富士スピードウェイの1周目・2周目を消化する中でカルーゾとベノートがアタック。そこにファンセヴェナントとウィルコ・ケルデルマン(オランダ)が追いかける場面も。
それが引き戻されたあともエヴェネプールとエディ・ダンバー(アイルランド)がアタックし、ここにニバリが食らいつき3名が抜け出す瞬間もあった。
だが、これらの動きもすべて封じ込められ、逃げもすべて吸収した状態で、最後の勝負所、三国峠(登坂距離6.8km、平均勾配10.1%)に突入する。
元世界王者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)や新城も脱落する中、この激坂でツール・ド・フランス覇者タデイ・ポガチャル(スロベニア)がアタック。この動きに、チームメートのブランドン・マクナルティ(アメリカ)とマイケル・ウッズ(カナダ)が反応し、3名が抜け出す展開に。
しかし、ツール・ド・フランスで見せた他を圧倒する走りはここでは見せられず。牽制も交えながらペースダウンした先頭3名は、やがて後続から絞り込まれた精鋭集団によって捕まえられ、三国峠を越えた先にある最後の山中湖畔で以下13名の先頭集団が形成される。
タデイ・ポガチャル(スロベニア)
ブランドン・マクナルティ(アメリカ)
マイケル・ウッズ(カナダ)
ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)
リチャル・カラパス(エクアドル)
アルベルト・ベッティオル(イタリア)
リゴベルト・ウラン(コロンビア)
ワウト・ファンアールト(ベルギー)
ダヴィド・ゴデュ(フランス)
バウケ・モレマ(オランダ)
ヤコブ・フルサン(デンマーク)
マキシミリアン・シャフマン(ドイツ)
アダム・イェーツ(イギリス)
最大の勝負所も終え、あとは平坦と緩やかな登り、そして下りを経ての富士スピードウェイ決戦のみ。
スプリントに持ち込まれればファンアールトが最有力となってしまうことから、チャンスをつかみたい選手たちが集団からアタックを繰り返す。
一時はフルサンが抜け出す場面などもあったが、決定的なギャップは開くことができず。
最終的には残り25㎞でマクナルティがアタック。ここにカラパスが食らいつき、一気にギャップが開いた。
メイン集団は消極的なポガチャル、しびれを切らしてアタックしたシャフマンやクフィアトコフスキを引き戻す動きで加速するも、これを捕まえるとすぐに失速するペースの上げ下げの激しさなどが影響し、協調する先頭2名とのギャップは開く一方。
最大で50秒近くまでタイム差が開きつつ、一度はファンアールトが自ら加速してタイム差を縮める場面もあったが、それでも20秒程度まで縮めるのが精一杯であった。
最後は残り6㎞。富士スピードウェイ内の登りでカラパスがマクナルティを突き放して独走を開始。
そのままマクナルティを吸収したメイン集団もカラパスとのギャップを埋めることはできず、最後は、エクアドル人として史上2人目となる金メダル獲得者として、2019年ジロ・デ・イタリア制覇に続く最高の栄誉を掴み取ることに成功した。
2位争いを演じたメイン集団では最後にファンアールトとポガチャルがスプリントで激突。
写真判定の末、ギリギリの差でファンアールトが銀、ポガチャルが銅のメダルを掴み取った。
激戦が繰り広げられた今回の東京オリンピック男子ロードレース。
とくに終盤の三国峠を用いた何かしらの「レガシー」レースが残されるととても嬉しくはあるのだが(欲をいえば富士山麓や山中湖も用いた・・・)。
ツール・ド・フランスのまとめなども書いている以下のブログもぜひ
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