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ジロ・デ・イタリア2021 第11ステージ

イタリアを舞台に開催される今年最初のグランツール。サイモン・イェーツ、アレクサンドル・ウラソフ、エガン・ベルナル、レムコ・エヴェネプールなどが覇を競い合う、なかなか予想のつかない3週間。

最初の休息日が明けた第11ステージはペルージアからモンタルチーノまでの162㎞丘陵ステージ。

トスカーナ州を舞台とした、未舗装路に彩られた「ストラーデビアンケ・ステージ」。

未舗装路と激しいアップダウンによって、この日は前週の山岳ステージ以上に総合的な波乱の巻き起こる1日となった。

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未舗装路の始まる前の平穏な90㎞の間に、11名の逃げが形成された。

ローレンス・ナーセン(AG2Rシトロエン・チーム)
ドリース・デボント(アルペシン・フェニックス)
エンリーコ・バッターリン(バルディアーニCSF・ファイザネ)
フランチェスコ・ガヴァッツィ(EOLOコメタ)
シモン・グリエルミ(グルパマFDJ)
タコ・ファンデルホールン(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
ロジャー・クルーゲ(ロット・スーダル)
ハーム・ファンフック(ロット・スーダル)
ベルトヤン・リンデマン(キュベカ・アソス)
マウロ・シュミット(キュベカ・アソス)
アレッサンドロ・コヴィ(UAEチーム・エミレーツ)

総合リーダー擁するイネオス・グレナディアーズが集団の先頭を牽引するも、その追跡の手は緩く、タイム差は最大で14分を超えるほどにまで拡大した。

逃げ切りはほぼ確実。しかしメイン集団はメイン集団で、残り69.2㎞地点から始まる全長35.2㎞にわたる未舗装路区間に向けて足を貯めている状況であり、ステージ優勝は眼中になかった。


そして始まる最初の未舗装路セクター。9.1㎞の、まずは力試しといった感じのセクター。

道幅も狭く、とにかく入り方が重要なだけに、ドゥクーニンク・クイックステップのアシストが猛スピードでこのセクターに突入。イネオスも負けじと加速していく。

そしてこのセクターで、この日最初の攻撃が仕掛けられる。

すなわち、フィリッポ・ガンナを先頭に猛烈に牽引し始めたメイン集団の先頭が縦に長く引き伸ばされ、少数の精鋭軍団が抜け出す形となった。

イネオスはガンナ、ジャンニ・モスコン、ジョナタン・ナルバエス、そしてエガン・ベルナルの4名。そこにトレック・セガフレードとモビスター・チームも3名ずつ加わり、それぞれが協力し合いながら加速していく。

そしてこの「先行集団」から30秒近いタイム差を付けられてしまった「後方集団」に、総合2位レムコ・エヴェネプールの姿が。

エヴェネプールの周りには4名のドゥクーニンク・クイックステップのチームメートたちの姿が。さらに総合3位アレクサンドル・ウラソフや総合6位ヒュー・カーシー、総合9位サイモン・イェーツもその集団内に含まれており、彼らのチームメートたちが牽引に加わったことでなんとかこの後方集団も順調にペースアップ。

残り52㎞地点から始まる第2セクターを前にして、なんとかこのメイン集団は1つになり、エヴェネプールは一旦、危機を脱する。

ただし総合8位ダニエル・マーティン、総合10位ダヴィデ・フォルモロはこの復帰に間に合うことはなく、この日大きくタイムを失うこととなってしまった。


そして始まる第2セクターは、全長13㎞のこの日最長の未舗装路区間。しかも前半部分に最大16%の激坂区間があるなど、登りも厳しいセクターとなる。

この激坂区間でユンボ・ヴィスマのジョージ・ベネットおよびトビアス・フォスがタッグで抜け出す。一時は30秒近く先行した彼らはやがて捕まえられるが、それ以外の大きな動きはここでは巻き起こらず。ガンナを失ったイネオスはナルバエスにひたすら前を牽かせながらも、比較的落ち着いたペースでこの最大の未舗装路区間を消化していった。

そして決定的な動きは第3セクターで巻き起こることに。


残り25.9㎞から始まる第3セクターは全長7.6kmの未舗装路登り区間。そこまで難易度の高い区間ではないものの、ナルバエスとモスコンが中心となって牽引するイネオストレイン率いるメイン集団の中から、レムコ・エヴェネプールが遅れ始める姿が映し出される。

集団の先頭ではナルバエスが仕事を終えて脱落。と同時に、総合リーダージャージを着るベルナルが自ら加速。遅れ始めたエヴェネプールにとどめを刺すべく、ベルナルが攻撃的な動きを開始した。

メイン集団の「ベルナルグループ」は一気にその数を減らし20名程度に。生き残ったアシストのモスコンが懸命に前を牽く中、1分後方に取り残されたエヴェネプールはジョアン・アルメイダに率いられながらなんとかそのタイムギャップを維持すべく努力していた。


第3セクター終了直後、わずかな舗装区間を経て最後の第4セクターに。ベルナルだけでなくモビスター・チームのマルク・ソレル、アスタナ・プレミアテックのアレクサンドル・ウラソフなど、各チームのエースが次々と攻撃を仕掛け始める。

残り13.6㎞から始まるこの5㎞の未舗装路区間で、メイン集団はベルナル、ダミアーノ・カルーゾ、ペリョ・ビルバオ、ヒュー・カーシー、アルベルト・ベッティオル、ルーベン・ゲレイロ、ヴィンツェンツォ・ニバリ、ジュリオ・チッコーネ、サイモン・イェーツ、ソレル、ロマン・バルデ、エマヌエル・ブッフマン、フォス、ルディ・モラールの14名のみが生き残った。

そしてエヴェネプールはアルメイダに率いられながら1分後方で格闘し続けていた。


残り8.6㎞ですべての未舗装路区間が終わりを告げるが、3級山岳パッソ・デル・ルーム・スペントは後半部分に平均9.1%・最大12%の登り区間を含むそれなりに厳しい登坂となっている。

ここでなお5分以上のタイム差を許されていた先頭集団からアレッサンドロ・コーヴィとマウロ・シュミットの2人が抜け出す。

最後はこの若手同士の一騎打ちに。激しいスプリント合戦を制したのは、ネオプロ2年目のコーヴィではなく、ネオプロ1年目のシュミット。

チーム・キュベカ・アソスにとっても、シーズン序盤のクラシカ・ドゥ・アルメリアにおけるジャコモ・ニッツォーロの勝利以来となる今シーズン2勝目となった。

第11ステージ


そして最後の8㎞の登坂区間において、メイン集団でも更なる動きが。

まずはチッコーネ、そしてブッフマンがアタックし、ボウマンとニバリが脱落。

さらにソレルが集団から離れていき、先ほどアタックしたばかりのチッコーネもここで崩れ落ちていった。

未舗装路はすでにないが、ここまでの激しい展開で疲弊していた有力勢が次々とそのタイムを失っていく。

抜け出したブッフマンが10数秒先行する中、メイン集団からはベルナルが再びアタック。ここにアレクサンドル・ウラソフも反応しようとするが、やがて突き放され、ベルナルはブッフマンも追い抜いて独走状態に。


今大会最強の足をしっかりと見せつけたベルナルは先頭シュミットから3分9秒遅れの区間11位でフィニッシュ。ブッフマンはそこから3秒遅れ、そしてウラソフはベルナルから遅れること23秒遅れでの区間13位フィニッシュとなった。

エヴェネプールは最終的に2分8秒遅れ。総合2位から7位まで転落することに。

そしてベルナルはその地位を盤石なものとし、総合2位ウラソフに対して45秒のリードを手に入れた。


第1週の山岳ステージ以上に大きな総合の動きをもたらしたストラーデビアンケステージ。

ベルナルの強さは圧倒的なもののように思えるが、ただ今週末はまだゾンコラン、そして総獲得標高5,700mのクイーンステージが待ち構えている。


まだまだ、どうなるか予想はつかない。

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