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ツール・ド・フランス2021 第12ステージ

第12ステージはサン・ポール・トロワ・シャトーからニームまでの159.4㎞平坦ステージ。

モン・ヴァントゥでの激戦を終え、南仏の観光都市ニームへと向かう典型的な移動ステージ。

伝説のエディ・メルクスの記録まであと「1」に迫ったマーク・カヴェンディッシュにとって、その歴史的な瞬間に到達するチャンスとなりうるステージではあったが、実際には13名の逃げ集団が形成。

メイン集団は15分以上タイム差のつく、大逃げステージとなった。

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南仏の移動ステージということで、横風は確かに注意すべきポイントの1つではあった。

アクチュアルスタート直後、その横風の影響を受けてエシェロンが形成され、集団はたちまち分断された。

総合争いすら巻き起こるかもしれないという緊張感の漂ったプロトンだったが、結果としてできたのは、スプリンターチームにとっては絶望、そして総合系チームにとっては平穏となった「大逃げ」展開であった。


出入りの激しい展開を経て、先頭で形成されたのは13名の逃げ。

アンドレ・グライペル(イスラエル・スタートアップネーション)
エドワード・トゥーンス(トレック・セガフレード)
ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
イマノル・エルビティ(モビスター・チーム)
ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ)
シュテファン・キュング(グルパマFDJ)
シュテファン・ビッセガー(EFエデュケーション・NIPPO)
コナー・スウィフト(アルケア・サムシック)
ブレント・ファンムール(ロット・スーダル)
ルカ・メズゲッツ(チーム・バイクエクスチェンジ)
セルジオ・エナオ(チーム・キュベカ・ネクストハッシュ)
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(チーム・トタルエナジーズ)

UAEチーム・エミレーツがコントロールするメイン集団はたちまちそのタイムギャップを開いていき、最大で15分以上に。

ステージ優勝争いは完全に先頭の13名の中で繰り広げられることとなった。


残り50㎞でポリッツとスウィフトがアタックし、抜け出しにかかる。

この2人にメズゲッツが合流し、さらにビッセガーも単独でブリッジを仕掛けようとする。

追走集団の先頭はアラフィリップ。牽制状態でなかなかタイム差は縮まらない。

しかし最終的には追走集団の先頭にアンドレ・グライペルが顔を出し、猛烈な勢いでこれを引っ張り上げたことによって、先頭集団は再び一つに。


その後も何度か動きが巻き起こり、最終的に残り40㎞で4名の選手が抜け出す。

キュング、エルビティ、スウェニー、そしてニルス・ポリッツ。

残りのメンバーに30秒差をつけて先頭を突き抜けていく4名。勝利はこの4名の中から決まりそうだ。

そして残り14.3㎞。カテゴリのついていない小さな登りで、先頭4名からハリー・スウェニーがアタックして抜け出す。

ロット・スーダルの育成チーム出身で、今年がプロ1年目。昨年のピッコロ・ロンバルディア(U23版イル・ロンバルディア)優勝者で、ジャンニ・モスコン、ファウスト・マスナダ、ハーム・ファンフック、ロバート・スタナード、アンドレア・バジョーリなど錚々たる顔ぶれに並ぶ約束された実力者。

そんな、クライマー/パンチャータイプのスウェニーの登りでのペースアップにより、シュテファン・キュングは完全に脱落。一方、ポリッツとエルビティの2人は、ペース走行でやがてスウェニーに追い付いた。

そして登りも終わりに差し掛かるそのとき、残り12㎞。最も勾配の厳しい区間で、2019年パリ~ルーベ2位、その年の優勝者フィリップ・ジルベールに、いつか必ずルーベを制する男と称えられたニルス・ポリッツが、非常に強烈なアタックでスウェニーとエルビティを置き去りにして、抜け出した。

あとは、得意の独走力でひたすらフィニッシュに突き進むだけ。抜け出した直後は悲鳴をあげるかのような表情でひたすら痛みに耐えながら加速していった彼が、ラスト3㎞は笑顔と、そして信じられないというジェスチャーと共にフィニッシュラインにやってきた。

間違いなく実力のある男。しかし、プロ勝利はこれまでにたった1回。その2回目の勝利を、ツール・ド・フランスという、世界最高峰の舞台で成し遂げた。

第12ステージ


メイン集団はそのまま争いなく集団のままフィニッシュへ。

週末に控える標高2,400m超えアンドラ山岳ステージ向け、プロトンの面々はしっかりと足を貯めている、そんな雰囲気すら感じさせる1日となった。

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