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初めて親知らずを抜いた日。

生まれて初めて、抜歯した。その日にnoteを書いている。

右上の親知らず。

1つだけ長くて飛び出ていた。噛み合わせの相手となる下の歯は生えていなかったので、歯茎に直接当たっている状態が続いていた。

乳歯の時は虫歯だらけだったのだけど、永久歯になってからは、簡単な処置で終わる小さい虫歯以外はできなくなった。おかげで38歳になるまで、大きな詰め物も、銀歯も、抜歯の経験もない、優等生の歯だった。


歯は丈夫だったけど、歯茎は弱いのか、冷たいものを食べると沁みるようになってきた。

知覚過敏だ。

どこで聞いたのか忘れたけど、虫歯になりやすい人、歯茎が弱くて歯周病などになりやすい人、両方なりやすい人がいるそうだ。

私は歯茎が弱い。

冷たいものを控えつつも、歯を磨いたあとに、口をゆすぐと沁みるようになってきた。冬は水道水もびっくりするくらい冷たい。

知覚過敏用の歯磨き粉「シュミテクト」を2週間くらい使ったら、少し良くなってきたものの、いいかげん歯医者さんに行くことにした。

先生から「知覚過敏の治療が終わったら、親知らずの抜歯をした方がいいよ」と勧められた。

レントゲンを撮ってみると、親知らずは真っ直ぐ生えているので、そんなに難しい感じではないらしい。残念なことに、親知らずに虫歯があるようなので、いつかは抜くことになりそうだよということで、抜くことになった。

「そんなに大変ではないと思うけど、痛いことは痛いと思うし、ちょっとは覚悟してね」と先生。「ですよね…」と苦笑いしかできなかった。


ドキドキしながら、迎えた当日。

この日までに、周りの人から「親知らずの抜歯とはどんなものなのか」を聞いて回っていた。経験者は思ったより多く、みんなそれぞれの体験談を話してくれた。

怖い、痛いという感情で押しつぶされそうになりつつも、ハッと気づく。

わざわざ「怖い」っていう感情を味わいにいってない?
ただ、みんなに注目してほしくて、騒いでいるだけなんじゃ…。

そう思って、最近学んだ「潜在意識の書き換え」を思い出し、「歯を抜くこと=怖い、痛い」という思い込みを外してみようと思いたつ。

歯を抜くことに対するブロックを解除してから、いざ、歯医者さんへ。

大丈夫、大丈夫と思いつつも、やっぱりちょっと、怖い。

診察台に座ると、先生が説明をしてくれた。笑顔でわかりやすく話してくれるので、少し気持ちが楽になる。

初めての歯の麻酔。なんとなく、バナナの味がした。右の口内だけ感覚が違う。麻酔は3回くらいチクっとしただけだった。

痛みが思ったほどではないことに安堵しつつも、胃のあたりがキュっと縮こまる感覚があった。やっぱり怖いよね、私。そう感じつつ、胃を押さえる。

先生は、麻酔が効いたことを確認すると、すぐに処置を開始した。

やっぱり怖くて目を瞑っていたのだけど、強い力がかかっていることや、振動は感じられた。

「もう半分くらいきてるからねー。はい、もう抜けるよー。痛くないかなー。はい、抜けましたー」

そう言って、先生は抜いた歯を見せてくれた。

根元が細くなっていたのと、真っ直ぐ生えていたので、スムーズに抜けたのだそうだ。横の部分が虫歯だったので、グレーになっていた。

口の中が血の味でいっぱいの状況のまま、抜歯後の注意事項を聞く。

痛み止めや化膿止めを処方されて、診療は終わった。歯医者さんに入ってから出るまで15分。想像以上の速さだった。

車のサンバイザーについてる鏡で口の中を見て、ギョッとした。

そっか、抜いたら抜きっぱなしなのか。

口の中だし、そりゃそうかと思いつつ、思った以上に赤い世界が広がっていたことが衝撃だった。

まだ少し、胃の緊張が残っている。

でも、不思議な高揚感に包まれていた。

「変化を前もって知ることは、私からsurpriseの楽しみを奪います。だから必要ないのです」

梨木里歩著 「西の魔女が死んだ」

これから経験することを、前もって知っておくことは、情報収集としては大事だけれど、それが自分を縮こまらせるものであるならば、ただ思い切って飛び込んでみるものいいのかも、と思った。

プロセスを感じる、体験する。ただそれを素直に感じてみる。

親知らずの抜歯は、怖がりな自分の処方箋を増やす経験だった気がしている。

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