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風神雷神を読んで

原田マハさんの小説は壮大だ。

誰もが一度は目にしたり、聞いたことのある世界的な画家、例えばピカソだったり、ゴッホだったり、今回で言えば俵屋宗達の生きた時代を舞台にした物語は、ノンフィクションだって分かってるけど、きっとこんな風に友人と言葉を交わし、絵を描くということに一途に情熱を傾けて過ごしたんだろうって、納得できる。


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あまりにも著名な彼らは、その一挙一動が研究対象で、○○年にどこへ行き、何を描き、誰と結婚したなどが調べ尽くされる。

それでも、遠い過去になってしまった点と点の間には、想像力を掻き立てる余白は充分にあって、その余白を埋めるように書かれたマハさんのアートワールドは、時間と場所を軽々と超えさせてくれる。

(500年以上も前のイタリアに、天正遣欧少年使節たちと行った気分にさせるって言ったら、言い過ぎかしら)


「歴史は、ときに残酷である。起こってしまった出来事を、なかったことには決してできない。しかし、だからこそ、人は歴史に学び、先人たちが遺してくれたさまざまな智慧を現在に活かすことができるのだ。」



そう、過去に起きたことは、事実として残る。それを変えることはできない。

未だに俵屋宗達の生年没年はハッキリしないけれど、彼が絵師となって遺した作品は今もここに残っている。

織田信長の後押しもあってローマへ向かった天正遣欧少年使節の1人 原マンショは、壮絶な旅を終えて戻った日本の様変わりようにどれほど驚いたことだろう。

信長は暗殺され、キリシタンが追われる秀吉の時代になっていたことに、時の流れの早さと無常を感じたのではないか。

だけど、彼が500年以上も前に風と祈りの力で海を渡り、時のローマ教皇に謁見したという事実は変わらない。

高校の世界史の授業は楽しかった。
それは髭で眼鏡の先生がニコニコと楽しそうに歴史を語ってくれたから。

「どうしてだと思います?」が口癖だった先生。

どうしてだろう?

そんな風に想像をすると、過去の遠い出来事も、身近に感じるのかもしれないな。

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