わたしのしあわせを決めるもの
わたしの手持ちの服の、その大部分を占めている、シサム工房のお洋服たち。
特に気に入っていたのが、刺繍入りのトップスだった。
刺繍なんて、なんだか乙女チックで恥ずかしいという謎の抵抗感があったから、昔はほとんど選ぶことはなかった。
だけどこの ロイヤルヘリテイジ(Royal Heritage)シリーズは、服の生地と同じ色の糸で刺繍されているから、ちょうど良いシンプルさを感じさせた。
かわいいけど、かわいすぎない。
遠目にはちょっと浮き出てるくらいにしかわからない。
でも着てる本人からしたら、その密度の濃い刺繍の素晴らしさを間近で堪能できる。
自然と胸を張って歩きたくなる。
そんなお気に入りの一枚だった。
買ったのは確か、上の子が生まれる前だから、8年くらい前。
薄手の生地なので、長袖を重ね着したり、暑い夏にはインナーの上に着たりして、春から秋まで、毎年毎年袖を通していた。
どんどん生地が柔らかくなって、着心地も良くなっていた。
だけどそれに比例するように色が抜けてしまっていた。
なんだかくたびれている…?
そう認識したときから、着る回数が激減していった。
もう、そろそろ手放す時期なのかな。
そう感じていた。
*
「お待たせしちゃってごめんね」
メッセージとともに、スマホに一枚の写真が送られてきた。
染物職人でもある友人が藍染をして蘇らせてくれたのだ。
わたしだけの一枚となって帰ってきてくれる。
「次会うときに渡すね」と、まるで何でもないことのように、さらりと伝える友人のかっこよさ。
何で感謝を伝えようか。
そんな風に考える時間の嬉しさったらない。
二重のギフトをもらった気分だ。
*
よく、究極の、とか、至高のとか、それが特別であることを表す美辞麗句があるけれど、正直そういうものに、あまりわたしは惹かれない。
それよりも
誰が、どうやって、どんな風に作ったのか、なぜそれを作るのか、作ろうと思ったのかという、背景や想いに興味がいく。
いわゆる、ストーリー、ナラティブという類いに惹かれる。
インドのフェアトレード団体カラティマク(Kalatmak)の人たちが縫い上げた一枚は、今や想いが重なったて、わたしにとっての特別な一枚になった。
そういう、自分が心地よいと感じるモノたちに囲まれて暮らすこと。
それは間違いなく、わたしのしあわせの構成要素なのです。
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