ゼリカルド体制初戦で見えたもの(清水-福岡まとめ)

今日はまとめておいたほうが良さそうな試合だったので、note活用。とはいえ凝ったものにはしない。

昨年だと清水の試合はリアルタイムで観て、Twitterで実況的にまとめてインプットして、振り返りたくなればあらためて観ていましたが、今年はチームの狙いを読むのが難しく、振り返るのにも時間がかかるので、それならキックオフ時間にかかわらず巻き戻しながらゆっくり観ようと思っているのが最近です。

まず、勝ったのは良かったです。ただ、これまでの悪癖は散見したので、この1勝は“解任ブースト”と捉えたほうが良いと思います。内容的には、変化させようとしたことはいくつか感じられました。今後、自分たちから崩れない、あるいは局面や時間帯でどうすべきかの意識が共有されてきて、“納得感のある勝利”が生まれてくれば、初めて「少し変わってきたかな」と思えます。それがいつ訪れるか、あるいは訪れないのかは、しっかり見ていく必要があります。

変化その1は、ボールを持っている時(攻撃)と持っていない時(守備)で立ち位置を変えること。守備は従来どおりの4-4-2でしたが、攻撃の時は宮本を底に、神谷と白崎をその前に置く4-3-3という明確な形になっていました。ゼリカルド監督はブラジルのクラブでも4-3-3を取り入れることが多かったようなので、主要アイディアの1つとして頭にあるのでしょうが、守備の基本形を変えたわけではないので、「4-3-3への変更が的中!」みたいな捉え方をすると誤った理解になるということは頭に入れておいたほうが良いと思います。

特に、宮本が福岡の2トップの後ろでウロチョロしながら、その真ん中を覗いてボールを受けたり、あるいは囮になったりしてパスコースを作っていました。また立ち上がりは、右で幅を取る西澤に左からサイドチェンジして福岡の守備ブロックを広げようとしていたのと、左SHの後藤が引いて、左インサイドハーフの神谷が飛び出していく形を何度かやっていました。

7分の先制点は鈴木義宜がガツンと跳ね返したところから、サンタナがしっかり収めて神谷が追い越して、マイナスの折り返しから「空間によこせ!」と指さして呼び込んだ西澤が左足で合わせたわけですが、関わった選手がしっかり同じ画を描けて取れたゴールは今季初だったんじゃないかと思います。

1点リード後も、権田からのゴールキックはほとんどショートパスでDFにつけてビルドアップにチャレンジしていました(その後、徐々に蹴るようになったのは時間帯を考えてのことだと思います)。セットプレーでも、左CKは西澤が蹴るものの、右CKは神谷と山原が2人立ち、神谷が出して山原がクロスということをやっていたので工夫が感じられました。

41分の追加点も見事でした。相手の左SH北島の単騎プレスを立田が冷静にかわし、監督も前に持ち出せという仕草に見えましたが、前にスペースがあったので自分で持ち出したのが◎。それに神谷が呼応して、左SB志知の背後に走ることで、CBの奈良を引き連れてゴール前を弱くすることに成功。西澤に戻して得意のクロスに、サンタナのヘディング技術は素晴らしいですが、ついていたのが志知というのは、福岡からするとしてやられたはずです。試合後に西澤が「今週の練習でああいうシーンがあった」と言っていたので、再現性あるゴールだったんじゃないでしょうか。

変化その2は、守備時のプレスの掛け方を変えたこと。5月までの戦いでは、前からプレスに行こうとするものの、相手の特徴に応じた約束事を決めていたフシがなく、曖昧なケアから相手に容易くボールを運ばれてしまう現象が続いていました。この日は、ボールを失ったあとに、相手のボール保持者に一番近い選手はプレッシャーを掛けるものの、あとは帰陣して4-4-2のブロックで構えることを優先していました。だからボールを取る位置は下がっても、取る回数は多いように見えました。おそらく、ゼリカルド監督も守備がハマっていないことは気づいていて、まずは一番整理しやすい形で手直しをしたんじゃないかと思います。全体がバランスよく立っているので、ボールを取って攻撃に移行する局面もスムーズに感じられました。

ただ、もちろん帰陣してブロックを作ると言っても、ただ下がるだけではパンチを食らい続けて弱腰になってしまいます。前半30分くらいまでは、鈴木義宜がフアンマとバチバチやっていたように、強度をしっかり保つ意識は見えたのですが、疲れてくると無意識のうちにボールに行けなくなる悪癖が出てきて、クロスからピンチに。またセカンドボールを拾われてから、ボランチの白崎が相手のボール保持者に出ていった時に、宮本がスライドして脇が空いて神谷が戻り切れない場面もあるなど、依然として守備の細かい部分は詰め切れていない印象でした。これが試合をこなすごとに変わってくるのかは要チェックです。

後半は、前半2-0というシチュエーションの経験が浅いこと、前半でゼリカルド体制の清水を把握した福岡が修正してくること、さらに疲労から無意識のうちにやるべきことが疎かになるだろうと予測はつきました。まだそんなものだという現実は理解しないといけないです。特に、福岡は2トップと両SHの4枚で清水の4バックを捕まえに来たので、清水のビルドアップが詰まりだしたのは自然な兆候でした。ここから引き出しを増やしていくことになるはずなので、ここも要チェックです。

福岡は後半から左利きの宮をCBに入れて、後ろ3枚でボールを前進させてきました。清水はサンタナの下がり目にいる神谷が、福岡のボランチをケアする役目だったと思いますが、前や中村へのパスコースを消すのをサボり始めたので、ディサロに交代するのは妥当な判断だったと思います。ただ、押し返すまでには至らず、福岡はさらに志知とクルークスの左利き2人を交代させて、明確に3-4-2-1にシステムを変更。ワイドの田中と金森を外に張らせて、ルキアンの近くに田邉と山岸を置くことで清水のバイタルエリア攻略を狙ってきました。

80分の福岡の得点は、白崎が無理にけん制をかけようとしたところで宮から山岸に縦パスが入り、右SHに移った後藤と入ったばかりの竹内が埋めないといけなくなって相手にパスコースを提供したのが発端。ルキアンにポストプレーを許し、そこで絶対つぶさないといけないところでつぶし切れず、山岸にシュートを打たれました。このへんはまだ甘いですね。

そして1点差になった途端に「まずい」と思ったのか、後藤が宮に全力でプレスを掛けに行ってしまい、原がタイミングを合わせて右サイドは抑えたものの、逆に展開されて山岸に決定的なシュートを許しました。あれが入らなかったのは幸運でした。その直後にサンタナの個の力からコロリのゴールで突き放すことができたので、スコアとしてはうまく持っていけましたが、紙一重の勝点3だったと言えると思います。

まず、手始めに施した変化としては納得のできるものだったので、ゼリカルド氏の手腕には期待します。1つ勝つことでどう変わるか、というよりも、新体制でどれだけ積み上げていけるか、のほうが重要と思っているのと、結局は最初に良いイメージを持っても、そのイメージどおりに事が運ばないのがエスパルスなので、良くなっていくのか停滞するのか、そのへんも注視していければと思います。


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