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母親 vs 息子のディベート

子供は必ず親の、「それぞれの時代」の年齢に到達する時が来る。
母が現在の自分と同じ年齢の時に述べた言葉に思いを馳せる事がある。その頃私は大体高3くらいだった。父が仕事柄転勤•出張が多く、姉は地方の大学に通っていたので、青柳家では(特に夕食どきに)様々なテーマについてのディベート、ディスカッションが母親と息子の間で交わされた。
母も結婚後人生の半分くらいは引っ越ししていたため気軽に話せる友人も比較的少なく、
「本来なら大人同士でする他愛の無い世間話」を息子に振って来ていたのだろうな、と今になっては思う。

母「夫婦間の問題はね、8割9割方は男が悪いわね」
ある日、食卓で急にそんな議題を振って来た事もある。
息子「ええ、それは言い過ぎなんじゃないの。悪妻って言葉もあるくらいだし、ソクラテスは?」
母「悪妻は歴史的逸話になるくらい珍しい存在なのよ。悪いのは大体オトコです。」
こうして50代の母親と高3の息子の男女論の闘いの幕が急に急に切って落とされる事となった。

息子「女性の究極の弱点と強みは、想像力の無さじゃないかと思うんだけど。自分が間違ってる訳無いじゃん!という強い思い込みがあの自信と、
コンクールでの度胸とミスの少なさに現れている!」
母「いや、想像力という言葉を盾にして自由に振る舞う男の影でガマンをしているのは女性のほうが圧倒的に多い。多いんですよ(2回目はフォルテ)。」
息子「ほら、その語気の鋭さこそが自分を疑う余地が無いと信じ込んでる事を証明してるじゃん。
いつも妻に怒られて黙って微笑む懐の大きい男だっている。それらの男の主成分は他でも無い、想像力と包容力で出来ている!」
母「そんな聖人みたいな男性、実例挙げられる?
周りにいる?そんな人」
息子「(お父さん、と言おうとしたが妻側のあんな苦労こんな苦い思い出、エピソードが機関銃の如く降り注ぐ事を想像し即座に変化球に切り替える)うーん、悪女ならいくらでも思いつくよ、アイリーン•ウォーノスとか則天武后とか‥ルクレチア•ボルジアとか?」
母「そんな、犯罪史上の凶悪犯じゃなくて一般論の話でショ!」
料理の味が分からないほど母親と息子は男女関係のバランスについての熱いディスカッションは続くのだった。

思い返せば他のジャンルにも多岐にわたって笑えるディベートネタはあるが、随分、高校生の息子を大人扱いしていたんだなぁと今になって思う。
あまりにも引っ越しが多くて、話し相手の欲しい寂しい中年期だったのかもしれない。


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