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秋のソナタ

生徒がショパンのプレリュードを弾いているのを聴いて思い出した一本。「冬のソナタ」なら誰でも知っているが、秋のソナタはもっと重く胸にのしかかる名匠ベルイマン監督による文芸作品だ。イングリッド•バーグマン扮する世界的なピアニストがツアーの合間に、結婚してスウェーデンの地方都市で静かに暮らす娘に逢いにいく場面から始まる。はじめは嬉々と久闊を叙す二人だったが、次第に娘の中で燻っていた、「母のキャリアのせいで受けたネグレクトに対する積年の怒り」が爆発する。娘役のリヴ•ウルマンが徐々に本心を露にしていく様はそれはもう恐ろしくて、個人的に「羊たちの沈黙」のレクター博士より怖いと思えるほどの怪演。因みにイングリッド•バーグマンは撮影時に発癌しており、本作が遺作となった。作中に登場するプレリュードは2番ホ短調で、苦渋に満ちた雰囲気に何とも似合う。学生諸君に是非観てほしい一本。

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