ローヒル・ファン・デル・ウェイデン 《東方三博士の礼拝》 〜 アートの聖地巡礼(ドイツ)

画像1 私的、アートの聖地のひとつ、アルテ・ピナコテークでもう一度見たい作品は、北方ルネサンスのフランドルの代表的な画家、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン(c.1399 -1464)の《東方三博士の礼拝》(c. 1455)。ファン・デル・ウェイデンといえば、個人的には、マドリードのプラド美術館所蔵の彼の作品《十字架降架》(c.1435)が一番好きなのだけれども、同美術館は全館撮影禁止。なので、ファン・デル・ウェイデン好きの私としては、この《東方三博士の礼拝》は外せない。
画像2 宗教的シンボルやら、タイポロジーやら、秘密が沢山隠されている作品だ。しかし、ここでは、ひたすら作品を楽しむ。作品の題名は、《東方三博士の礼拝》だけれども、実際は、左から新約聖書の名場面《受胎告知》《東方三博士の礼拝》《主の奉献》で構成されている。《受胎告知》の場面では、ファン・デル・ウェイデンが生きた中世の室内装飾が面白い(新約聖書の世界は紀元後がはじまるかいなかの時代設定だから)。
画像3 パネル右側の《主の奉献》は、イエスの両親がユダヤ教の教えに従い、生まれて40日経ったイエスをエルサレムの神殿へ連れていき神に「奉献」している場面だ。
画像4 つまり作品全体の物語の時間軸は、《受胎告知》→《東方三博士の礼拝》→《主の奉献》と進む。よく見ると真ん中の《東方三博士》の場面に、右の《主の奉献》の場面である神殿の外壁を描いている。上手い。すると左の《受胎告知》で聖母マリアが天使から告知をうけている部屋も、《東方三博士の礼拝》の背景に描かれているいずれかの建物の中に存在していることを暗に伝えている。「建物の内部と外部を描くことにより話をつなげる」この方法、当時では画期的だったらしい。
画像5 私個人は、ファン・デル・ウェイデンの神業とも言える衣服の表現を楽しみたい。油彩で描かれているのだけれども、油彩画の発展は、イタリアよりも、北方ルネサンスのネーデルランド地方の方が先だった。ちなみに、この作品は、ドイツ、ケルンにある聖コルンバ教会内の聖母マリア礼拝堂を飾る祭壇画として造られたそうだ。注文主は、ケルンの有力者ヨハン・リンク。しかし同教会は第二次世界大戦で完全破壊(同美術館のキャプションより)。現在、その跡地に聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館が建っている。
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アート・ビジネス→美術史家(Ph.D., Courtauld Institute of Art, U. of London)。西洋美術史*ニュー・アート・ヒストリー専門。アート聖地巡礼の旅人。絵画、彫刻、建築における象徴表現を研究。好きな場所は、図書館、美術館、本屋、カフェ、海。

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