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ホテル・航空会社はどこに向かうか|"サプライヤー"から"リテーラー"に進化する

コンサル業界ではなく、ホテル・航空業界がどこに向かっていくのか、
の一端をまとめてみました。

新型コロナウィルスのパンデミックにより、人々の移動が止まってしまったため、旅行業界は、これまでの9.11や金融危機とは比較にならない未曽有の危機に陥っています。

ホテルの稼働率も、航空会社の搭乗率も、超低空飛行に入りました。

この危機を、なんとか生き残ることだけを考えて、どのホテル、どの航空会社でも、コストの削減や、キャッシュの調達に奮闘しています。

1.サプライヤーからリテーラーへ

そんなホテルや航空会社ですが、近年はインバウンドの急激な増加もあって、経営は絶好調でした。

くわえて、その利益を投資して、ビジネスモデルの改革を進めていました

その改革は「旅行商材のサプライヤーから、旅行全体のリテーラーになる」ことです。

具体的な変化としては、以下の2つがあります。
 ・直販拡大
 ・アンシラリーサービスの提供

2.直販拡大

これまでホテルやエアラインは、自社の商品を、旅行代理店やOTAに多く販売してもらっていました。

OTAとは、オンライントラベルエージェントの略で、じゃらん、楽天トラベルやエクスペディアのような、ネット上でホテルや航空券を予約できるサイト(企業)のことをいいます。

みなさんも、旅行に行くときに、ホテルやエアラインのHPからではなく、上記のような旅行サイトで、複数のホテル・エアラインの値段や品質を比べながら、そのままそのサイトで予約することが多かったのではないでしょうか。

もっと昔であれば、JTBやHISのような旅行代理店の店舗にいって、お店のお姉さんにいろいろ紹介してもらいながら、ツアーを選びましたよね。

わたしは、旅行会社にはよくお世話になってました。

しかし、旅行代理店で販売されると、高額な手数料を取られてしまうため、そのコストを避けるために、ホテルやエアラインは、直接ユーザーに販売することに注力しました。

例えば、自社のウェブサイトで予約した場合の価格を安くしたり、会員向けのロイヤリティプログラムを充実させる、また、SNSや広告でのマーケティングも強化することで、自社のサイトにユーザーを呼び込む。

2019年には、予約の約半分が直販となりました。

ホテルやエアラインの利益率はあがり、われわれ利用者も、これまでよりもさらに安価で利用できたり、ロイヤリティプログラムの恩恵を受けられたり、いいことづくめですね。

3.アンシラリーサービスの提供

もう一つの変化は、アンシラリーサービスが導入されたことです。

アンシラリーサービスってわかりますか?

中核事業(ホテルなら宿泊、エアラインなら航空券)ではなく、それに付帯するサービスを提供して、収益を得ることです。

例えば、、、、
ホテルでは
 ・客室のアップグレード
 ・レイトチェックアウト
 ・地上交通の予約(空港送迎やレンタカーなど)
 ・現地ツアーの予約

エアラインでは
 ・座席のアップグレード
 ・預入れ手荷物の増加
 ・有料の座席指定(足元が広い席など)
 ・ラウンジの利用

ですね。

LCCだと、一般的だったりします。機内食も有料だったりしますね。

また、最近では、ホテルの客室で使用するシーツやまくらカバーから、ベッドやソファーなどの家具や壁紙まで販売しています。
(ほしいかどうかは別にして、、、)

これらは、数百円ほどで提供しているものもあり、販売単価は安いのですが、販売における追加コストはほとんどかからないため、直接的に増益につながるのです。

Wホテルでは、宿泊客が1回69ドルで、15,000種類の服から気に入った服を借りることができるクローゼット・コンシェルジュ・アメニティというサービスを立ち上げました。

アンシラリーのクロスセルや、アップセルの増加に向けて、モバイルアプリの改善にも取り組んでいます。

エアライン業界では、2019年には、世界の航空会社の総収入8,090億ドルの13.5%をアンシラリーサービスで稼いでいます

これまで、無料で利用していたサービスが有料になるのは困りますが、別々に予約していたものをあわせて購入できるようになれば、利用者としては、検索や予約の手間がなくなり、そのぶん、旅行を楽しむ時間が増えていいですよね。

4.航空券を売らないANAトラベラーズ

ANAトラベラーズが、2つの面白い取り組みをしています。

1つは「手ぶら旅行サービス」

https://www.ana.co.jp/ja/jp/domtour/theme/recommend/teburatravel/

利用者は、ファッションやカメラなどの旅行中に利用するアイテムを事前に予約し、受け取りと返却はホテルでするため、文字通り、手ぶらで旅行に行くことができる

ファッションは、バーニーズ・ニューヨークの洋服から選ばれたり、カメラはキャノンだったりと、アイテム自体は悪くない。

まだ、モニターで実施されただけだが、値段も2泊3日までで、2,000円と安い。

今後の動向が楽しみなサービスです。
他のエアラインも似たような取り組みをできるはずです。

もう1つは「シェア旅」です。

https://www.ana.co.jp/ja/jp/domtour/theme/recommend/lookforyourstyle/

各種のシェアリングサービスを提供して、新しい旅の創造を促すようなサイトです。

もはや、これまでのエアラインの範疇を超えています。

飛行機に乗っている時間だけでなく、旅行全体を通して、ユーザーが必要とするサービスを提供することが、新しいエアラインの姿になっています。

ユーザーにとっては、移動手段がなにかは大事ではなく、旅行全体が大事。もはや、航空券が売れなくても、それ以外で、需要がつかめればよい。
そういう考え方のようです。

旅を好きなわたしにとっては、今後のサービス拡大が楽しみです。
コロナが落ち着いた際には、シェアだけで行く旅行というテーマで、旅にでてみたいと思います。オリジナリティがあって、新鮮な旅行になりそうです。

5.車を売らないベンツ

メルセデス・ミーを知っていますか?

六本木のミッドタウンの近所にあるカフェ併設のお店です。
(コロナで休業中でした、、、)

通常の販売店とはちがい、入店の敷居が低く、幅広いユーザーとタッチポイントを持てる場所をつくるというコンセプトで、2011年につくられました。

当時は、日本法人の社長が考案し、ドイツ本社を苦難のすえに説得して、開設にこぎつけたようです。開設後は大好評で、2017年には、全世界の10店舗ほどに拡大しています。

すべてがメルセデス・ミーの効果でないにせよ、日本におけるメルセデスの業績が右肩上がりです。

ブランドを身近に感じてもらうことで、自分には縁のないブランドという先入観をなくし、もともとのブランド力が発揮して、ユーザーを取り込む、
という戦略が成功しています。

このメルセデス・ミーの店舗単体での収益はあえて考えずに、ただ、好きになってもらうことだけを目的に運営をしているそうです。

このような取り組みを、ブランド力が十分にあるエアラインやホテルチェーンが行うことで、同じような効果を得られる可能性はありますから、トライする価値はあると思います。

6.終わり

ここまで、ホテルや航空会社の、サプライヤーからリテーラーへの進化をご紹介しました。

デジタルテクノロジーによって、新しい旅の提供の形ができてきています。
これからもさらに進化するでしょう。

私たちユーザーも、もっと旅行を楽しめるようになりそうです。
しかも、安く(重要)。

ただ、やはり気になるのはコロナです。
当分の間は、旅行に行けませんね。

コロナパンデミックが終わるのは、1年後になるか、2年後になるか、まだまだ先であることは間違いありませんが、落ち着いたら、パーっと旅行に行きたいですね。

なんとか終わるまで、それぞれの企業も生き延びてほしいと思います。


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