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Tania Chen with Thurston Moore, David Toop, Jon Leidecker 『Electronic Music for Piano (John Cage) 』 旧ブログより転載(2019.6.28)


2016年の録音で最近出たやつ。
ジョン・ケージの1964年のスコア、"electronic music for piano (john cage)" ピアノのための電子音楽は、ケージによる数多のピアノ曲のスコアの中からピアニストが部品を選び出して、他の演奏者に電子機器を用いた演奏を指示していく…というものなのだが…。
ピアノを担当するタニア・チェンはケージの楽曲を独自に解釈して演奏した作品を数多くリリースするアーティスト。
この人が集めたのが、おなじみギターのサーストン・ムーア、フライング・リザーズのデヴィッド・トゥープ、何だかよく分からん人ジョン・レイデッカー。
レイデッカーはミキサー等を扱っていて、トゥープは一人別録りで例によってさまざまな楽器や非楽器を用いて参加している。

これが蓋を開けると70分1トラックというシロモノなのだが、聴いてみるとちょっとそういう感じでもない。
なんかブツ切り的に、いきなり演奏が切断され、前触れなくノイズの暴風が吹き荒れ、文脈というものがないかのようにプリペアドピアノの物音がトンと置かれる、ような感じで、しかも無音部分が多い。
いきなりバツッと音が切れて、そのまま数分鳴らなかったりする。
たぶんこの辺りは、ミキサーの裁量が大きいんだろうな。
終わりも何となく聴いてると分からず、あれ、ずっと演奏始まらないな、あ、終わったんだ、という感じ。
で、最初ひとつなぎの演奏をバラバラにカットアップ的編集したものなのかな、と思ったのだが、リアルタイムのライブ演奏かもと思わせるところが端々にあったり。
静かなところで聴いていると演奏者の息づかいや椅子の軋み、アンプのノイズが聴き取れるとか。
ピアノ中心だからサウンドの手触りとして統一感はあるけど、まるっきり曲という感じがしない演奏。
まったくの無よりも、スコアというかルールというか、秩序から無秩序を出力しようみたいなことは、こういう現代音楽のひとつのベクトルではあるんじゃないか。
なんかヘッドホンでなくオープンなスピーカーで部屋で流してると良い感じになるアルバム。
カッコいいと思います。


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