見出し画像

Hubble 『Hubble Drums』 (旧ブログより転載 2013.12.16)

Northern Spyから。
以前にはZsにも在籍していたギタリストBen Greenberg ベン・グリーンバーグのソロ・プロジェクト。
アルバムは20分のトラックを10分のトラックで挟んだ3曲40分の構成で、何をやっているかというとギターを中心にひたすら引き絞られたミニマルミュージック。11年作。

ファーストトラックの"Nude Ghost"のみゲストでMatt Papich、Joe Williams、Jon Lelandとクレジットにあるけど、他2曲はギターだけで作られているようだ。
この"Nude Ghost"、確かに奥側にシンセやドラム、ベースが聴こえるものの、全体としてはギターの比重が圧倒的に強い。
クリーンで僅かにリヴァーヴした音で、タッピングを用いて細かい音の粒を大量に散らしていく。ワンフレーズをひたすらリフレインさせながら、ダイナミクスやタッチに微妙に変化が加えられていく、時にはフレーズにいくつかの音が色付けされる。
あえてこなれたマスタリングを避けているのか、ローファイな音の質感がもたらす揺れも相俟って、大量にぶちまけられたギターの音の粒が脳内を乱反射しているような感覚。

残響を引き延ばした奇怪なノイズによって"Nude Ghost"からそのまま接続される"Glass Napkin"。
これはキラーチューン。スラップバックする硬質なショートディレイを纏った、ソリッドなポスト・ハードコア~マスロック風5拍子リフ。またしてもほぼ形を変えないままリフをひたすらに繰り返していくスタイルで、しかし音の質感は歪みを伴いながら徐々に変化していく。粗さ/繊細さの混在した手つきで、最小限の展開だけがあり、グリーンバーグは1本のギターだけを手に内面のストイシズムと美意識の海底へ突き進んでいく。
トランスめいた快楽をすらもたらすサイケデリックの極致、いや素晴らしい。

"Hubble's Hubble"は深めのディレイがかけられたアンビエンス寄りのスタイルをとるトラック。
ギターのタッピングフレーズの奥で鳴り続けている持続音が前面にせり出してきて、楽曲はほとんどドローン的な色彩すら纏い始める。終盤には途切れなく降るディレイ信号が全体を埋め尽くして、ギターの音の原型は消えうせている。
湧き出る電子音めいたミニマル・サウンドスケープが唐突に途切れてアルバムは終わる。


僕にとってはやっぱりギターミニマルっていうとチャタムなんだけど、これはまた全然違うスタイルのそれだなと。
高速のテクニカルな演奏でミニマルというのは珍しい気がする。ほぼ電子音めいた音響に向かっていく場面もあれど、ニュアンスの変化を繊細に演出するところで"手で演奏している"っていう感触が前に出ている。
続きにライヴ映像貼るんで見てほしいんだけど、この人、ほんとに全部手でやっちゃうんだよね。多分音源でもエディットとかあまり使ってないんじゃないかな。
というわけでHubbleでございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?