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基本プレイ無料をコンシューマーに定着させようとしていたPlaystation Vita

 今や、すっかり当たり前となった基本プレイ無料というスタイル。ゲーム本体は無料でダウンロードが可能。プレイ自体も無料で、追加のキャラクターやアイテム、シナリオなどを有料で販売するという形式は、PCやスマートフォンを中心に、今では当たり前のジャンルとして浸透しました。

 PS4やNintendo Switch、Xbox oneなどのコンシューマーハードでも、集団で戦うバトルロワイアルのジャンルを中心に基本プレイ無料のゲームが存在しており、スマホ以外でも成功を収められるジャンルとして定着しています。しかし、そこに至るには長い歴史がありました。とくに、当時のコンシューマーではPSPなどで少しずつ「基本プレイ無料」のゲームが誕生していたものの、お金を払って買うことが当たり前となっていたコンシューマーファンからの抵抗は強く、なかなか浸透しない状況だったように思います。

そんななか、次世代の携帯ゲーム機として登場したのがPlaystation Vita。このハードは初期型が3G回線に対応していたり、基本プレイ無料をウリの1つとして推し出していたりと、基本プレイ無料をコンシューマーに浸透させようとしていたハードだったのです。

今回は、PS  Vitaの基本プレイ無料の歴史を追いつつ、このハードが残した意義を振り返ってみましょう。……真面目に書いちゃったけど、じつは『せかい☆セイフク』や『魔法少女大戦』の話をしたいだけです。ですです。

なお、今回はあくまでも基本プレイ無料のゲームに絞っているため、完全無料のタイトルや『DEAD OR ALIVE Xtreme 3 Venus 基本無料版』『討鬼伝2 共闘版』といった既存の体験版に近いタイトル。有料版がある『AR COMBAT DigiQ -ともだち戦車隊-』や、アプリについては除外しています。

2011年

『みんなといっしょ』2011/12/17開始、2015/3/31終了

PS Vitaの発売とともに、PS Vita専用の基本プレイ無料タイトルとして始まった『みんなといっしょ』。ほかのプレイヤーとコミュニケーションをする内容で、ゲームというよりはアプリに近い形でしたが、PS Vita史上もっともはやく、力が入っていた基本プレイ無料タイトルなのは間違いないでしょう。

キャラクターの人気もあるタイトルですが、Ps3での『週刊トロ・ステーション』配信終了に合わせたリニューアルを経て、だんだん影が薄くなっていったように思います。最終的には「基本プレイ無料をコンシューマーに広める」という役割を終えたと判断されたのか、2015年3月31日をもってサービス終了となりました。

2012年

『サムライ&ドラゴンズ』2012/3/29開始、2014/7/31終了
『ガーディアンハーツオンライン』2012/8/09開始、2014/9/25終了
『ピコットナイト』2012/9/26開始、2013/10/31終了
『モンスターレーダープラス』2012/12/17開始、2014/9/24終了

2012年になると、セガが基本プレイ無料のゲームをパッケージタイトルとして売り始めた『サムライ&ドラゴンズ』をはじめ、基本プレイ無料が少しずつ登場。しかし、サービス期間を見るとわかるように、そのほとんどが2014年までにはサービスを終えています。人気のゲームでも3年は持たない。ソーシャルゲームをVitaで運営すること。コンシューマーゲームのユーザーへ基本プレイ無料を浸透させるための導線をどう引くのか。各社がいろいろ頭を悩ませ始めた時期だったように思います。

2013年

『ファンタシースターオンライン2』2013/2/28開始、継続中
『パワプロスタジアム』2013/6/27開始、2014/9/3終了
『三國志12 対戦版』2013/9/26開始、継続中
『サカばん』2013/10/17開始、2014/10/08終了
『勇者のくせにこなまいきだ。G』2013/12/12開始、継続中
『ドラゴンズドグマ クエスト』2013/12/19開始、2015/1/30終了

 2013年になると、有名タイトルがこぞって参戦。現在でもサービスが続いているゲームが出るようになり、PS Vitaのようなコンシューマーハードでも、基本プレイ無料が定着できることを証明しました。しかし、それ以外のタイトルには、1年もたないものも……。

2014年

『大乱走 ダッシュor奪取!!』2014/2/27開始、2014/12/22終了
『デスティニー オブ スピリッツ』2014/3/20開始、2015/6/30終了
『魔法少女大戦ZANBATSU』2014/3/27配信、2015/12/22終了
『拡散性ミリオンアーサー』2014/4/11開始、2017/4/28終了
『インフィニタ・ストラーダ』2014/4/22配信、継続中
『せかい☆セイフク ~COSTUME FES.~』2014/7/23開始、2015/3/31終了
『チェインクロニクルV』2014/7/15開始、2017/5/12終了
『JUDAS CODE』2014/8/21開始、2015/7/2終了
『ハイスクールD×D NEW FIGHT』2014/8/28開始、2016/7/29終了

2014年と2015年は、PS Vitaの基本無料にとって魔の期間と言える状態でした。この時期にサービスが終了するものや、配信が始まって1年持たないものも多く、次々とゲームが生まれては消えていきました。『大乱走 ダッシュor奪取!!』のように10カ月で終わるもの。『せかい☆セイフク ~COSTUME FES.~』のように8か月で終わるものも。そして何より、この時期の基本無料ゲームには大きな問題が立ちはだかっていました。それは、過疎化です。

とくに、協力プレイや対戦プレイのゲームは評判が悪くなると人が少なくなり、過疎化が進むと人がいなくなる悪循環が起きました。

『大乱走ダッシュor奪取』は、対人戦で鬼ごっこ(のようなもの)を楽しむことがウリのゲームだったのですが、CPU戦を放置してレベル上げが可能であったことや、通信エラーの多発から対人戦が過疎化。対人戦をやるゲームなのに、対人戦をする必要がないという構造的な欠点を補うことができず、休日でも人がいない状態が続きました。

イベントは対人戦しかできなかったのですが、対人戦を放置して時間切れにすることで全員に2位のポイントが入る優しいシステムを取り入れた結果、放置する人が出てくる状態に。人はさらに減っていき、最終的にイベントもCPU戦オンリーとなってサービスが終わってしまいました。キャラクターは魅力的だったのですが物語もなく、キャラクターを集めるためにガチャを回す動機が非常に薄かったのも、もったいないところだったと思います。

この時期、PS Vitaの基本無料ゲームにおいて、壁として立ちはだかってきたのが回線エラーですね。当時のPS Vita基本無料ゲームは、回線エラーで部屋が解散になるゲームがあり、これが過疎化を促進していた状態だったと思います。それがメーカーの技術不足によるものだったのかはわかりませんが、対人戦や協力プレイのゲームは、回線エラーが致命傷になっていました。

とくに、回線エラーが問題だったのが『せかい☆セイフク ~COSTUME FES.~』。これは4人協力プレイで遊ぶアクションゲームだったのですが、1人でもエラーで回線落ちしてしまうとアクション部分の処理がおかしくなったり、常に回線エラーに悩まされたゲームでした。8か月というサービス期間はPS Vita専用の基本無料ゲームに置いて最速の記録となっています。なお、vita専用を除けば、最速は7か月の『デッドマンズクルス』ですが、こちらはスマホにデータを引き継いでサービスが続く特殊な形でした。また、ブラウザゲーを含めると『デッドマンズ・クルス』より1カ月早い『大戦略WEB』もありますが、こちらはPCで現在でも続いており、長生きしています。

回線エラー以外にも、勢力争いと噛み合っていないマッチングシステムだったり、カードバトルの意義が薄かったり、課金要素が多くてどこに課金していいのかわかりにくかったり、そもそもストーリーが敵同士のリーダー3人で会話しているだけで全然進展しなかったり、何をするにも読み込みが入って画面切り替えですら時間がかかったりと、製品なのにゲームがまともに動かないことが多く、運営自体もこなれていない印象を受けるゲームでしたが、とくにマッチングが問題だったと思います。

本当に、このゲームはマッチング自体が厳しい! プレイヤーは3勢力に分かれているのですが、クエストで敵側の勢力と同じ勢力とはマッチングできないといった制限があった(これでもβテストよりも緩和されていて、別勢力ともマッチングするようになった)り、回線落ちで次々と協力者が消えていくとどうしようもなかったりと、ゲームバランスと相まってほとんどまともに4人プレイができない状況に。1人プレイでは経験値も少なく、協力プレイで遊ばないとゲームにならないので、最終的に4人よりは安定しやすい3人が集まった時点で募集を打ち切り、3人で遊ぶ。といったテクニックが生み出されました。最後までエラーと過疎に悩まされた印象があります。

『ダンガンロンパ』とコラボしたり、初のイベント(1回だけで終わった)を開催したりと、いろいろ立て直そうとしていたのを感じるところはありましたが、根本的な設計が基本無料に向いていなかったのかもしれません。

ほかにも、バージョンアップ版が出ると言われてから、しばらく音沙汰がなかったカードゲーム『インフィニタ・ストラーダ』など、世間的にいろいろと話題になったゲームも出ています。こちらは、現在も配信が続いていますが、同じPS Vitaでバージョンアップ版の『インフィニタ・ストラーダ 華』が配信されているので、今ならそちらをオススメします。

対戦や協力系のゲームがエラーに悩まされた一方、いわゆる1人プレイで遊ぶソシャゲに近い形式でエラーに強く、キャラクター性で乗り切った『魔法少女大戦ZANBATSU』のような作品もありました。こちらはサービス終了後でも遊べるバージョン(オンラインへの接続は必須)が出ており、配信期間は短かったのですがダウンロードさえしておけばいつまでも遊べるようになっています。私もギリギリで間に合いました。

2015年


『デッドマンズクルス』2015/2/24開始、2015/9/30終了(Vita版)
『VENUS PROJECT』2015/4/21開始、2016/2/3終了
『聖剣伝説RISE of MANA』2015/5/14開始、2016/3/31サービス終了
『みんなでスペランカーZ』2015/5/21開始、継続中
『機動戦士ガンダムバトルフォートレス』2015/7/16開始、2016/5/26終了
『ガンダムコンクエストV』2015/7/28開始、2016/7/28終了
『真・三國無双Online Z』2015/11/19開始、2017/3/11終了(Vita版)

魔の期間は2015年まで続きます。ゾンビにスニーカーを食べさせて強化するなど、個性的すぎる世界観が魅力的だった『デッドマンズクルス』のように、PS Vitaでのサービスは終了するものの、スマホにプレイヤーデータを移して2017年6月30日まで続く特殊な作品も生まれました。

この時期、すでに携帯ゲーム機よりもスマホのほうが性能が上がった状態になっており、Unityで作られた作品をPS Vitaで動かすことが難しい、という問題が立ち上がっていました。インタビューでそれをはっきりと口にしていた『聖剣伝説RISE of MANA』は、実際にスマホ版とVita版を遊び比べてみると、Vitaへの移植に苦労しているのがユーザー目線でも感じられました。

『機動戦士ガンダムバトルフォートレス』に関しては、私が語るよりも一部で有名になってしまったので、詳しい人も多いかもしれません。

2016年

『信長の野望 201X』2016/1/07開始、継続中
『実況パワフルプロ野球サクセススペシャル』2016/4/28開始、継続中
『少女とドラゴン-幻獣契約クリプトラクト-』2016/7/21開始、継続中
『乖離性ミリオンアーサー』2016/9/1開始、2018/3/30終了(Vita版)
『戦国修羅SOUL』2016/10/13開始、2019/7/31終了
『大戦略WEB』2016/10/24開始、2017/04/26終了
『英雄伝説 暁の軌跡』 2016/12/26開始、継続中

2016年は、各社ともに「PS Vitaでどう基本無料を運営すべきか」という答が出た年だった気がします。リストを見ればわかる通り、現在までサービスが継続しているものも多く、コンシューマーにおける基本プレイ無料が完全に定着しました。『大戦略WEB』のようにVita版が6か月で終わってしまったものの、PCでは今でも続いているタイトルもあります。

2017年

『ゴエティア 千の魔神と無限の塔』2017/08/18開始、継続中

2017年は1本のみ。すでにVitaというハード自体が末期に近づき、基本無料をVitaで出す必要がなくなってきたからかもしれません。ちょっと寂しいですが、これも時代の流れ。いつかハードにも終わりがくるものです。

2018年

『式姫の庭(PS Vita版)』2018/3/01開始、2019/7/24終了
『インフィニタ・ストラーダ 華』2018/5/22開始、継続中
『ダーククエスト5』2018/7/13開始、2019/9/12終了
『ひねもす式姫』2018/9/25開始、継続中

とか言っていたら、2018年に結構新作が出てビックリ。PS4に出すついでにVitaにも……というタイトルが多いように感じましたが、ちゃんと『インフィニタ・ストラーダ 華』が出たのはうれしいですね。ただ、ごらんのとおりに2019年にはサービス終了してしまうゲームも。PS Vita自体の生産終了も発表され、出荷も終了。基本プレイ無料をコンシューマーで遊ぶハードではなくなってしまったのかもしれません。これ以降、基本プレイ無料ソフトは配信されず、2019年はソフト自体も減ってしまいました。

うまくいかないものもあったが、役目は果たした

基本プレイ無料がコンシューマーハードでも当たり前になった現在。PS Vitaがひと足早く目を付けたのは、間違いではなかったと思います。うまくいかなかったものもたくさんありました。あまり深く突っ込むと『大乱走 ダッシュor奪取!!』と『せかい☆セイフク ~COSTUME FES.~』の話ばかりになってしまうのでやめておきますが、どこも苦労していたのだと思います。

ボク個人はなんだかんだと、どれも楽しませてもらったので文句はまったくないです。でも、いわゆる携帯ゲーム機が完全になくなってしまったのは寂しいですね。Vitaだけの基本プレイ無料ソフトは、スマホユーザーが触れず、それこそVitaを持っていた人ですら遊ばなかった可能性がある貴重なゲームでもありますし、どこかで、何かの形で、復活して欲しいものです。


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お仕事の幅を広げるために、たまにゲームの話をします (広がらないことしか書いてない)

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