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インド神話とデジタルが融合した新・女神転生。『デジタルデビルサーガ アバタールチューナー』シリーズを2作まとめてHDリマスターで遊びたい!
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インド神話とデジタルが融合した新・女神転生。『デジタルデビルサーガ アバタールチューナー』シリーズを2作まとめてHDリマスターで遊びたい!

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ファミコン時代からオカルトとデジタルを混ぜたRPG『女神転生』シリーズを世に送り出し、神や悪魔を取り扱わせたら並ぶ者がいないメーカー・アトラス。今や『ペルソナ5』で海外ユーザーの取り込みにも成功し、オカルトでコアなRPGと、若者向けのライト(アトラス基準)なRPGをバランスよく出せるメーカーに成長しています。そんなアトラスのタイトルのなかでも、自分がもっとも好きだといえる作品が『真・女神転生III ノクターン(以下、真III)』。以前も、PS2版でレビューを書いたくらい好きな作品です。

ただ、これまでは初期型PS3以外に互換性がないPS2というハードでしか発売されていなかったため、今の時代に遊ぶこと自体が難しい作品でもありました。自分も諦めていたところ、なんと完全版の『マニアクスクロニクルエディション』と『マニアクス(DLC)』の両方の要素を収録したHDリマスター版が発売決定! PS4とSwitchという現役のコンシューマーハードで遊べるようになりました。最高! PS2時代のアトラスゲーは『真III』以外にも名作が多いので、リマスターが成功したら第2弾、第3弾も出して欲しいですね。

とくに、私が出して欲しいと願っているタイトルが『デジタルデビルサーガ アバタールチューナー』と『デジタルデビルサーガ アバタールチューナー2(以下、アバチュとアバチュ2)』。この2作品をセットで出して欲しいのです。なぜ、セットで出して欲しいかといえば、まごうことなき分割商法の続き物だから。両方通して遊べば気合の入った名作なのですが、当時は分割商法であることを十分に告知せずに発売してしまったため、1作目の発売後に大炎上。ファンの怒りがヒートウェーブとなって、評価がズンバラリン。中古屋に投げ売られて値段も一気に下がる始末。今でこそ、再評価されている作品ではありますが、なんだか悲しい末路を辿ってしまったのです。

ここら辺の話は長くなるので、上の記事の無料分にある『デジタルデビルサーガ』の項目を見ていただくとして……。とにかく、ゲームの面白さ自体は文句なしと言ってもいいくらいなのに、売り方が不味い印象でした。

TVCMもわりとアレ。

当時、流れていたゲームのCMもいまいち魅力を伝えきれてなかったと思います。ゲーム中でヒロインのセラが出現したシーンを模して、アイドルの岩佐真悠子さんが裸になってクルクル回ってるだけのTVCMなんですよ。TVを見ていて、すごく気まずかった。もうちょっとゲームの魅力を伝える方法があったんじゃないのかと、今でも思わなくもないのですが、まあどちらにしろ分割商法という時点で悪手ですね。ゲーム自体のマニアックさと、中途半端に切られたシナリオ。ガラッと変わったシステムも悪い相乗効果を発揮して、当時ネット上の評判は散々でした。でも、名作なのですよ!

というわけで、今回は『アバチュ』HD版が欲しいという話をします!

デジタルで再現された地獄に、六道輪廻の物語

降りやまない雨が大地に流れ、部族同士が激しい抗争を繰り広げる謎の異世界、ジャンクヤード。主人公のサーフと仲間たちは、悪魔に変身する力に覚醒し、同族を喰らわねば生きられない体となってしまいます。謎のカギを握る記憶喪失の少女・セラとともに、天上の楽園・ニルヴァーナを目指してトライブ(部族)同士の抗争を戦い抜いていくサーフたち。すべてのトライブを倒したあとに、何が待ち受けるのだろうか……? といった流れが『アバチュ1』のあらすじ。1作目では、トライブ同士の抗争が描かれていきます。

アトラスの作品は、それまでキリスト教やギリシャ神話。日本神話などをモチーフにしてきたのですが、今回は初のインド神話&仏教。建物も中東風で、非常に独特の世界観となっています。JRPGとしては尖り過ぎ。

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でも、これが恐ろしくカッコイイ! 背景美術はアニメ・ゲーム専門の美術背景会社・草薙が手掛けているのですが、PS2のぼやけた映像ですら硬質な世界観が伝わってきます。セーブポイントの端末ですら、この描き込み!

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なんだよ、このセーブポイント。だいすき。

さらに、インド神話モチーフなのは背景だけじゃありません。物語の根底に流れるテーマも、インド神話の哲学や仏教における「輪廻転生」の概念に基づいています。「梵我一如」など、さまざまなインドの思想や哲学の要素などが入れ込まれているのですが、もっともわかりやすいのが「飢え」というテーマ。本作では、発売当初「飢え」がメインテーマの作品として発表されました。登場人物たちは、悪魔となった同族を喰らわねば生きていけない悪魔と化しており、このゲームでは「敵を倒す=食べる」という設定になっています。敵を食べるということはシステム上でも再現されており、戦闘終了後にHPが少量だけ回復するシステムも存在。ゲーム全般を通して「飢え」が重要な要素として描かれています。経験値ではなく、敵を倒すことで貯まるのも「業(カルマ)」。システムとしては、食べてHPを回復する要素はほぼ意味がないのですが、世界観のために細部まで徹底しているのです!

これは仏教の「六道」における「餓鬼道」と呼ばれるもの。『アバチュ1』ではジャンクヤードと呼ばれる疑似的な地獄を通して、六道における「修羅道」「餓鬼道」「畜生道」を体験することになります。「六道」とは、宗派や宗教によっても違ってきますが、だいたいのイメージとしては輪廻転生における生まれ変わり先を表していると考えてください。天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道の6つの世界があり、そこから抜け出して涅槃へと至り、解脱することこそが、人が持つ究極の目標とされています。

このゲームのストーリーは仲間とともに冒険していくJ・RPGではあるのですが、同時に三界六道をめぐり、輪廻転生を繰り返しながら解脱へと至る輪廻の概念を入れ込んだ「ちょっとマニアックでおかしい」RPGでもあるのです。とはいえ、自分で書いててわけがわからないのですが、別にそこを意識しなくてもOK。カッコイイキャラがいるRPGとして純粋に楽しめます。

ただ、自分はそうした宗教的概念へのこだわりが好きなんですよね。ボスの種族名からして「阿修羅」。ジャンクヤード自体が、争いの絶えない「修羅道」の世界として描かれているのもそうです。食べなければ自我を失い、本能のままに暴れ狂う「畜生道」と、飢えを満たすために同族を食らう「餓鬼道」に落ち、人類自体の「業」を疑似的に体験する構図が秀逸なんですよ。

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さらに、主人公たちは身に覚えのない罪で攻められ、そのために延々と戦わなければならない宿命も追っています。己の記憶にすらない罪を償うために戦う「地獄道」でもあるわけです。そして、物語は『アバタールチューナー2』へ。『アバチュ2』では、主人公たちが目指していた「ニルヴァーナ」と呼ばれる世界が舞台となります。しかし、そこはジャンクヤード以上に過酷かつ、地獄のような争いが続く「人間道」の世界でもあったのです。

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仏教の六道輪廻では、最終的に「天道」も経由して解脱へ至ることが目的になりますが、そうした六道輪廻の概念や構造が自然に物語へ組み込まれているのも『アバチュ』の良さでしょう。とくに『アバチュ2』が発売された当時は、ラストダンジョン以降の予想外な展開に賛否もあったのですが理にかなっているんですよね。六道を巡って解脱するためには、1から2までの物語の流れは、すべて必然として用意されたものなのです。どう考えても一般的なJ・RPGではやらないだけで。やらないでしょ普通。売れないもん。

だけど、そこが好きなところでもあります。小説家の五代ゆう氏が原案。2までの『ペルソナ』シリーズを手掛けてきた里見直氏がシナリオを手掛けているだけあって、キャラクターゲームとしても個性が確立されているのですが、新しい女神転生としてもデジタルとオカルトの融合が秀逸なのです。

続編の『アバチュ2』では、すべてを「情報」という概念で定義できるというオープニングムービーが用意されており、その哲学が示されています。輪廻や解脱の定義すらも「情報」という概念で置き換え、メガテン流のインド神話として解釈された物語は、まごうことなきアトラス作品。歴代作品のような現代の東京でも、インドが舞台ではないのも捻りが効いてますね。

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プレスターンバトルの2作目にして完成形に近いバトル

ゲームのシステムは、それまでの『女神転生』から大きく変化。悪魔合体や悪魔会話もバッサリ切られ、育成とバトルに集中しやすい構造になっています。バトルは『真・女神転生III』から始まるプレスターン。敵の弱点を突くとプレスアイコンが光って行動回数が増えるというアレです。その後のアトラスゲーに必ずと言っていいほど採用され、現代まで継承されてる革命的なバトル。ただし、『真III』では戦闘に最大4名まで参加できたのですが、今回は最大3名までしか参加できません。なので『真III』以上に、1手ミスするだけでも命取りに……。その代わり、覚えたスキルはメニュー画面から自由に付け外しができるので、対策はしやすくなっています。事前に対策できるので、ボス戦もパズル的。頭を使って戦う楽しさがあり、隠しボスに至っては意外な戦法や緻密な計算が必要です。電卓を用意してダメージを計算しないと倒せないぞ。ここからしばらくの間、アトラスゲーでは必ずといっていいほど強すぎてヤバい隠しボスが登場するのですが、それはまた別の話。

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「ブレイク」系で無効シールドを展開することや、相手の行動パターンを把握してスキルをセットすることなど、事前準備はとても大変。ですがバトル自体が楽しく、自由にスキルを付け替えられる前提で組まれたバランスも厳しめながら良好です。金を稼ぐのと、スキルを習得するのが面倒だけど。

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本作には「マントラ」と呼ばれるシステムがあり、取得したマントラを装備してスキルを覚えていくのですが、取得するのに「お金」が必須。だから、常に資金が枯渇するゲームでした。今だったらDLCで解決できそうかな。

シナリオ上でどんどん仲間が入れ替わる『アバチュ2』では、このマントラシステムによる弊害も。メインで育てたいキャラが長期間はずれてしまったりするので、途中で使ってないキャラを育て直さないといけなくなったりするんですよ。やっと戻ってきたと思いきや、レベル差がつきすぎることも。それなのに隠しボス戦で役立つから育て直さないといけないので、今思うとけっこう「正気か!?」と思うところもありました。ストーリー重視のワナ。

目黒氏の本領発揮! 耳と心に残り続けるBGM

音楽を手掛けているのは、近年の『ペルソナ』シリーズでおなじみの目黒将司氏。個人的に最高傑作だと思っているのですが、どの曲も最高です。

『アバチュ1』は、アジトの曲がどこか郷愁を感じるムーディーなBGMだったり、泣きのギターが入ったりと非常にしっとりとした質感。対して『アバチュ2』では電子音や激しい曲が多く、あえて1と2で逆の方向に振り切った曲なのが作品にピッタリ。別のゲームなので、2から1に逆戻りすることはできませんが、遊んでいると1の世界がとても懐かしくなってくる曲の構成になっています。ムラダーラは、故郷って感じがするんだよね……。

今では、レコチョクなどで配信版が買えるのもうれしい。サウンドトラックは2種類発売されていて、最初に出た『アバチュ1』のサントラのみに収録されていた「Pray」のフルバージョンが入ってないのは残念ですが。あと、サントラの公式HPで配布していた「デジタルデビルサーガ」というミニゲーム専用曲も入ってないんですよね。ここら辺、どうにかならないかな……。

『アバチュ2』エンディング曲の「タイムカプセル」も、残念ながらサントラに未収録。こちらはCDのみで配信もありません。さらに、曲を歌われていた歌手のas(tamami)さんが、2011年に25歳という若さで亡くなられてしまったこともあり、現在は彼女のシングルCD自体が入手困難。「タイムカプセル」自体は、たまにamazonでも見かける1stアルバム『and song』にも収録されているので、欲しい人はこちらを探すと見つけられるかも?

もはやレトロハードとなったPS2なのでゲームを遊べない人もいると思いますが、曲を聞くとなんとかして遊びたくなってくるかもしれません。それくらい良曲ばかりです。ああ、もっと『アバチュ』みたいな曲を聞きたい。

あまり展開してないけど関連作品もちょっとだけ

『アバチュ』は最初の1作目が炎上してしまったせいか、あまり書籍での関連作品がありません。攻略本に里見直氏の小説が掲載されたことと、ファミ通のオフィシャルファンブックが出たくらいで、大々的な関連本やイラスト設定本などが全然見つからない。関連本が欲しいのに手に入らない……!

あとは、原案を手掛けた五代ゆう氏による小説『クォンタムデビルサーガ』シリーズくらいですね。これはメインキャラクターこそゲームと同じですが、ストーリーはかなり違います。全5冊ですがこちらも面白いのでぜひ。

一応、アンソロジーもちょろちょろあるのですが、だいたい『アバチュ1』ばかりなんですよ……。『アバチュ2』も、もっと展開して欲しかった。

え?

漫画があるだろ?

あ、はい。そうですね。

あります。

関連作品として、トライブ・エンブリオン(主人公の部族)に所属する一般兵の話を描いた『DIGITAL DEVIL SAGAアバタール・チューナー深淵の魔塔』という漫画があります。ありますが電子化もしてないし、コミックスも手に入りにくいし、オリジナルキャラクターの話で終わり方もかなり悲惨な感じの話だし、そもそも公式漫画なのにアトラスがちゃんと監修してないとしか思えないくらい設定が本編と齟齬をきたしているんですよ。そのまま伏線も回収されずに打ち切られているので、『深淵の魔塔』を知らなくても楽しめると思います。むしろ結局知ったとしても完結していないので、知らない方が幸せかも。本編の『アバチュ1』から『アバチュ2』を遊ぶと、ストーリー的に『深淵の魔塔』自体をなかったことにできるので問題ないですし。

え?

私ですか? 

リアルタイムで追いかけてました。

あと、フィーチャーフォン(ガラケー)で『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー A's TEST Server(完全版)』というゲームもありました。当時の携帯電話で、かなりの無茶をしながらPS2のポリゴンバリバリなゲームを再現した結果、最新機種でも処理オチするくらい重かったゲームという記憶があります。でも、プレスターンも再現してて凄かったような。ストーリーは、ですね。これも2ではなかったことになってるやつです。ないに等しい忘れられた物語。今は遊べないですし、とくに知らなくても大丈夫。

アニメ的な演出を意識しつつ『真III』以上にコア

アニメ界の巨匠、板野一郎氏による派手でアニメ的なムービーの演出。それまでのメガテンシリーズでは考えられなかった豪華声優陣がしゃべるイベントシーン。今振り返れば『アバタールチューナー』シリーズは、現在の『ペルソナ』シリーズのように幅広い層を取り込もうとしたアトラスゲーだったのではないかとも思えます。根底にマニアックな部分はありつつも、より万人に受けるゲームを模索した時期の作品と言えるかもしれません。悪魔合体や悪魔との会話もなく、人間ドラマを重視していたイメージがあります。

出てきたものは『真III』以上にマニアックだったのですが。

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だけど、ゲーム全編を通して流れる哲学的な物語。主人公・サーフをはじめとする魅力的なキャラクター。印象深い世界観に手ごたえのあるバトル。物語もシステムも、1、2を通して楽しめる素晴らしい作品でした。分割商法のせいで当時はユーザーの印象が悪くなっていましたが、それは非常にもったいないこと。当時としても、明らかにどこかおかしいほどの異様な熱を感じる作品ですし、今でもこんな尖りすぎた世界観のメーカー製J・RPGは、ほとんど見かけません。アトラスからですら、出てない。独特すぎる。

自分は今でも、HDリマスター版を出して欲しい作品の1つです。より多くのアトラスファンや、『ペルソナ5』から入った新規のファンにも遊んで欲しい。そして、オカルトとデジタルが融合した本作特有の雰囲気にどっぷり浸かって欲しいです。ただ、育成のバランス面などで修正が必要な部分(ハードでしか隠しボスと戦えない仕様も今だと歓迎されないかも)はありますが。あと、インド神話の解説本とストーリー解説本も同時に出してもらうか、ゲーム中に用語辞典が必要な気もしますが、HDリマスター化を希望します!

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お仕事の幅を広げるために、たまにゲームの話をします(広がらないことしか書いてない)。