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川崎の河原町団地に行ってきた

河原町団地に行ってきた。川崎駅から歩いて10、20分のところにある。ここには「Y」字を逆にしたような珍しいかたちの棟があり、団地マニアの間じゃけっこう知られているようだ。

雨がそぼ降るなか、駅から歩いていき、例の棟の前まで行く。おお壮大……こんなのはじめてみた、なんかとても「未来」な感じ……。

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この逆「Y」字のなかにはいってみると、幾何学模様のように並ぶ各部屋の扉がだんだらに並び、上を見上げると天井のない吹き抜け?のようになって日光が差し込むようになっている。不思議な空間。なんだろうこの感じは。

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しばしここで座って考えた。
ここは、なんだか、SFに出てくるような「フェイクな」神殿のようだと思った。この建物は、とても観念的というか、作り手のイメージが先行しているような。そんな印象を抱いた。

この団地を設計したのは、建築家の大谷幸夫。ネットの情報によると、1924年生まれで丹下健三の片腕として頭角をあらわし、1970年代から東大の教授も務めた。高度成長期において国家のエリートとして、公共施設をつくっていった人間だ。

河原町団地は、1969年に建てられたようだが、大谷が40代半ばだったころに設計されたもので、きっとキャリア的にいっても、思い描く理想とそれを建てる技術がちょうど合致していたころだ。時代としても人口もどんどん増えていた活気あるときで、都市で人が集まって暮らす新しいライフスタイルにあった入れ物をイメージしてこれが建てられたはずだ。この逆「Y」字のなかのスペースも、豊かに人が行きかう場所をイメージしていたのだろう。

ほんとうのところ、こんな逆「Y」字のような複雑なつくりにする必要はなかったのかもしれない。今風にいえば、平べったい建物の方がコスパが良いのかもしれない。このスペースに、かつてバスケットコートがあったようだが、音が響くからだろうか、はたまた子どもが少なくなってしまったからだろうか、ただの駐輪場的な位置づけのスペースとなっていて、ひっそりとしている。

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ああ、なんだけっきょくは使われてないんじゃんか——って、ああ、さっきわたしは「コスパが良い悪い」なんて書いたが、現代のわれわれの頭はそんなことばっかり考えるようになっている。1969年、この団地をつくった人や大谷幸夫の「新しいライフスタイルの夢」のビジョンがこの大きな建物にこめられたところからの、「コスパな」今の気分。なんなのだろう、この落差は。

もう団地内は十分みたので敷地を出た。駅へとまた歩く。関東最大規模のショッピングモール、ラゾーナ川崎までは意外と近くて、10分くらいで着いてしまう。けっこう便利だ。そこまでの道にはちょっとした商店街もあるし。

そのなかの不動産屋に、河原町団地の一室の分譲の広告がでていた。最上階のメゾネットタイプの部屋で、1800万円だった。なかなか広いし、都心まで30分ぐらいだし。どうでしょう。ネックは古さ。でも、高度成長期の夢を感じながら暮らすのも、なんかおつなんじゃない。

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