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書籍:『ならずもの 井上雅博伝』、周縁の人たちの痛快な物語。

今日、国会図書館の食堂が閉まるというニュースがあった。学校をでたあと、1年間程バイトで図書館に通っていて、毎回ここで食べていた。日替わり定食が2パターンあって、出遅れると、食べたい方が売り切れてたりして、よく地団駄ふんでいた。味は思い出せるもんじゃないけど、でもやっぱりあそこでほっとしてた。さて、本日は書籍。

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■ 『ならずもの 井上雅博伝:ヤフーを作った男』
作 者 森巧
発行所 講談社
発 行 2020年
状 態 通しで1回読んだ


本書は、ヤフー創業者のうちのひとり、井上雅博の評伝。井上は、1996年にソフトバンクの孫正義とともに日本のヤフーを立ち上げ、検索エンジン、オークションなどの機能を充実させ、会社を大きく飛躍させる。2012年に社長を退いたあとは、ビジネスとは関わらず、莫大な資産をクラシックカーのコレクションに投じていた。しかし、2017年、カリフォルニアで開催されたカーレースに白いジャガーに乗って出場していたときに交通事故で亡くなる。なんとあっけない。

本書を手に取ったのは、紀伊國屋書店が発行しているPR誌「scripta」に載っている吉川浩満の連載「哲学の門前」がきっかけだ。ここに、吉川はかつて初期のヤフーで働いており、そのころは社員が自社の株を持つことができたようで、急成長の後に株式公開したときには一株一億円の値を付けており、吉川を含む初期からの社員はみな億万長者になったというような話が書いてあった。マジか、そんな景気の良い話があったのか、とさらに知りたくなって、この本を読んだのだ。

本書には、井上がヤフーを大きくしていく過程について詳しく書いてある。素朴な感想になっちゃうけど、イノベーションというのはほんとうにあるんだなあ。吉川が書いていた億万長者の話も触れられており、やっぱりそれは本当のようだ(疑っちゃないけど)。

本書の登場人物には、井上も含めいわゆる「エリート」はひとりもいない。もちろん高学歴だったりはするのだが、一癖も二癖もあり、学者や官僚、大企業ではどうもしっくりこないような「ならずもの」なのだ。時代の周縁的なところにいた人たちだったからこそ、フットワークが軽く、新しい分野にパッと入っていき、既存の価値観にとらわれずにさまざまなチャレンジができたのだろう。で、みんなで億万長者になった。痛快な話だ。ここのところ、不景気な話ばかりで滅入ってしまうが、実はもう、われわれが知る由もない「ならずもの」たちがいるところで、何かが動き出しているのかもしれない。ああ、一億欲しい。

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