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日本とドイツを徹底比較!ジェンダーに関する意識の違いとは【#女性活躍ってなんで必要なの?】Vol.4

これからの日本社会には「女性活躍」が必要である。その理由と根拠、見解をこれまで全4回の特集記事でお伝えしてきました。

女性の役員比率と企業側のメリットの関係に始まり、性差なき社会の実現が次世代の可能性を育むこと、ワーキングマザー支援が結果的に組織の利益になること、男性視点からも女性活躍は不可欠だと考える理由、などが語られてきました。

本特集の最終回は、女性活躍推進総研の研修を担当しているドイツ出身のirinaと所長の石原による対談形式でお届けします。

テーマは「ドイツ人と日本人におけるジェンダー意識の差」。

日本人の私たちだけでは気づけない視点や発見、「当たり前」や「普通は」という言葉が、使い方を少し間違えるだけで凶器になり得てしまう……。

そういったことを考える機会になれば幸いです。

「女性活躍」の言葉はなぜ生まれた?

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irina(写真左)と石原(写真右)
社内でのダイバーシティ研修での一幕

石原 さっそくですが、まずは自己紹介をお願いしてもいいですか?

irina はい、よろしくお願いします。ドイツ出身で、現在は東京でお仕事をさせてもらっています。大学では日本語と経済学を学んでいて、ジェンダーという概念も個人的にずっと興味を抱いてきました。

そのため、独学でフェミニズムやジェンダー、セクシュアリティに関しての学びを深め、社会問題である男尊女卑についても研究を進めてきました。

石原 社内ではダイバーシティに関する研修をお願いしていますよね。irina自身が「女性活躍」に対して関心を持った理由は何ですか?

irina 男女の不平等は人生のたくさんの場所で現れます。たとえばそれが、経済と政治が背景のものになると、「女性を管理職に昇進させない」という差別がありました。その解決手段として「女性活躍」という方法が日本では取られるようになった、と認識しています。

私はドイツの出身なので、日本とドイツの考え方、価値観の違いを比較して捉えることができます。そこで一番興味深かったのが、政治への向き合い方が異なる点です。結論からいうと、日本人の政治に対する関心が高まることで女性活躍や男女平等の課題解決が進むのでは、と私は仮説を立てているんです。今日はそんな話を一緒にできたら嬉しいです。

女性活躍推進による日本の未来

石原 具体的に、女性活躍がさらに進むことで、日本には「どんな未来」が訪れると思いますか?

irina 男性・女性、またはどちらにも当てはまらない性表現を持っている人もいますが、少なくとも男女性別に準じるマジョリティによる不当な状況をなくすことで、キャリアチャンスと政治への影響力が奪われている女性たちに、一刻も早い平等な環境がもたらされると思っています。そのための対策はさまざまに必要で、手段の一つとして「女性活躍」は有効だと考えます。

また女性活躍が成功すれば、男性にも選択肢が増えるはずです。昔から存在する、性別役割分業意識は男性にとっての負担にもなり、家庭のために稼ぐというプレッシャーは計り知れないものがあります。そのなかで女性活躍が推進されることは、子育てに関わりたいと考える男性にとってもチャンスのはずです。

石原 総研としては、女性活躍が進むことで「多様な視点による意思決定」がもたらされ、これまで以上に選択肢や解決策、改善案の広がりが生まれると考えています。社会と経済、その両面から良いインパクトを与えることができるのは大きなメリットですよね。

ドイツの男女平等認識は、なぜ高い?

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irina 次の話題に移るまえに、下記のジェンダーギャップ指数の比較を確認したいと思います。ドイツが11位なのに比べ、日本は120位という結果が表に示されています。そのほかの順位は以下のとおりです。

政治  ドイツ:10位 日本:147位
経済  ドイツ:62位 日本:117位
ヘルス ドイツ:75位 日本:65位
教育  ドイツ:55位 日本:92位
引用:世界経済フォーラム、Global Gender Gapレポート2021年

irina 日本の状況について、もう少し詳しく確認しましょう。まず政治への女性参加率は低く、ジェンダーギャップ指数も6.1%しか解決できていないことがわかります。9.9%は代議士で、10%は大臣。総理大臣に至っては、過去これまで誕生していません。

経済的なギャップについても、他国と比べ60.4%の解決率と、ランクが低いのが現状です。女性の就職率は72%と高いものの、マネージャー職の女性は14.7%ほど。パートの割合の50.8%は男性の2倍、というデータが読み取れます。そのなかで私がもっとも注視すべきと考えるのは、日本女性の平均収入が男性の平均収入に比べて43.7%低いという事実です。

一方でドイツの状況はどうなっているでしょうか。

政治については、女性大臣は41%、代議士は32%を占め、2005年には女性のメルケル首相が誕生しています。経済面では、30%のジェンダークオータ制を導入後、取締役会の男女割合が14%から、10年間かけて36%へと向上しています。

引用:欧州ジェンダー平等研究所、ドイツの男女格差指数2020年

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石原 さまざまなデータを比較しながら、日本とドイツの現状を確認してきたわけですが、irinaが特に注目している部分はどこですか?

irina ドイツ出身の私としては、「男女平等」が特に気になりますし、意識している部分でもあります。具体的に、教育と考え方の2点において日本とドイツに大きな違いがあると感じています。

石原 教育の分野では、ドイツはどんなことに力を入れていますか?

irina まずは学校で男女平等に関する歴史と政治科目を教わるんです。女性投票権の歴史であったり、現代政治の男女割合の問題などが主ですね。ほかには、固定概念的に縛られた「男性の業界」における、女性就職率を上げる『Girls Dayプログラム』も注目の取り組みです。

石原 Girls Dayプログラム?

irina はい。これは女子学生に向けたプログラムで、就職する際に女性側があまり選択しない専門分野について知ることができるイベントです。技術系の企業や部門、大学、研究センターなどの機関が、中学生以上の女性の学生に対してイベントを提供するんです。参加者は、実験室やオフィス、ワークショップでの実践的な取り組みによって、作業の面白さを体験します。

2001年に最初のガールズデーがドイツで開催され、連邦教育研究省、ドイツ労働組合連盟などが、この全国的なキャンペーンを共同で始めました。

私も実際に参加し、いくつか考えさせられることがありました。性差によって就職先の違いが生まれることに差別的なものを感じましたが、一方で社会に支援されていることも感じました。固定概念に負けず、自分の興味関心を大切にして就職先を考えられる人には大きな学びの場になるはずです。

参考:Girls Dayプログラム:公式サイト

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石原 男女平等に関する「考え方」も、日本とドイツには違いがあると話していましたが、そちらは具体的にどんな内容になりますか?

irina 男女平等は「権利」だとドイツでは学びます。男女が平等であることは、法律化された基本的権利なんです。

ドイツ国憲法の第3条:
(1)法の下ではすべての人が平等である
(2)男性と女性は平等な権利を持っています。 国家は、女性と男性の間の平等の実際の実施を促進し、既存の不利益の排除に向けて取り組むとする
(3)性別、子孫、人種、言語、出身地と出身地、信念、宗教的または政治的見解のために、不利益を被ったり、好まれたりすることはありません。 障害のために不利になる人はいないとする

irina これらが何を意味するのかというと、まず基本的権利については政治の授業で教わるため、差別についての意識が高まり、自分の権利を知っている人が多い傾向にあります。また政治の授業では、国民が持っている権利と守ってくれている法律があるため、それにもとづいた議論も練習します。

石原 日本の学校教育は、議論そのものがあまり活発ではないんですよね。学生時代を振り返ってもほとんど記憶になくて。私たちにもイメージがしやすいように、エピソードがあれば話してもらえますか?

irina 賛成派と反対派のグループに分かれ、ある問題についての解決方法とその論拠を準備し、グループのリーダーを決めて、両グループのリーダーが教壇に立ち、相手と議論をするという流れでしたね。

具体的なトピックとしては、男女平等(例えばジェンダークオータ制度導入について)や、環境問題や人類差別問題、現代の社会問題について議論し、政治家の立場になって議論を繰り返しましたね。

これらの教育制度によって、ドイツ人は政治に関する興味関心が高くなり、日常的に議論をすることも珍しくない環境になったのだと思います。最終的には、不平等と不当に対して「反対」だと考える人たちが多いように感じています。

日本人も政治への関心が高まりつつある?

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Irinaが実施した研修コンテンツからの抜粋

石原 ここまで、男女平等に関する考え方の違いを、日本とドイツのデータを比較しながら見てきました。最後にメッセージとして伝えたいことはありますか?

irina 日本では政治と不平等について興味・関心を持っている人が少なく、議論になることも少ない印象があります。そのため、現状を疑ったり、反対意見を投げかける人も少ないように思えます。これまで日本国内での変化が起こりにくかった原因は、その点にあるのかもしれません。

ただ、悲観するばかりでもないと感じています。

日本の政治を取り巻く状況を調べるうちに、実はSNSのおかげで政治に興味を持つ若者が増えている、と感じることが増えたんです。

もっとも印象的だったのは『NO YOUTH NO JAPAN』という団体です。

参考:【NO YOUTH NO JAPAN】公式サイト

irina 大学生を中心とした団体で、若い世代の政治参加をもっと身近なものにすることを目指し、2019年7月の参議院議員選挙以来、ずっと活動を続けています。主にU30世代に向けて、これからの社会を一緒に考えるための「入口」を作っているようです。

Instagramを使ったメディア運営や、イベント、キャンペーンのプロデュースを通して発信する様子から、そういった想いを受け取ることができます。

こういった変化を見ると、日本も近いうちに、女性活躍や男女平等の状況が変わってくるのではと期待が膨らみます。


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特集「#女性活躍ってなんで必要なの?」では、20年後の未来を考え、経営的な視点、社会的な視点、ファクトにもとづく数字の視点から、女性活躍について考えるキッカケをお届けします。

この大切なテーマについて、もっともっと多くの方と交流ができればと考えています。ぜひ、note や Twitterで「#女性活躍ってなんで必要なの?」のハッシュタグで投稿してください。

下記Twitterアカウントのほか、noteのマガジン機能でリアクションをしたいと考えています。
https://twitter.com/woman_workstyle

特集はまだまだ続きます。次回もお楽しみに。

本文:irina


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