替えのパンツと靴下は忘れずに


夏休み。

練習は午前9時から始まり、昼休みを挟み17時頃に終わる。

汗でどろどろ。

テニスコートを覗いて、ほとんど布を纏ってない状態の男がいればそれが僕。

水飲み場へ直行し、ほぼ全身に水を浴びる。

『男子はいいですねっ』

隣で足を蛇口近くまであげて洗い始める。

すらっと伸びた少し筋肉質な足。

視野に入れたことに罪悪感を感じながら

「女子も出来るだろ」

と、蛇口を指で狭め、勢いが強くなった水で狙う。

甲高い短い声が聞こえる。

『最低です!!』

シャワー後の様な髪。

少し透けるTシャツ。

少し頬を膨らまし、眉間にシワを寄せている。

セミの声がうるさい。

顔から熱を感じる。

「アイス奢るから許して」

笑顔で頷く。

部室に戻る背中を眺める。

見ていた同級生からの意味深な赤に近いピンク色の視線が刺さる。

何かを誤魔化すようにまた水を浴びる。

まだ僕が70キロだった時の話。


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