システマコンディショニングの効用

システマコンディショニング。
シンプルにそう見えることから、スティックマッサージと呼ばれることも多くあります。
一応日本の場合マッサージには資格が必要ですので、ここではコンディショニングと呼ばせていただきます。

とはいえ、実際にやっていることもマッサージとは若干異なり、あくまでシステマの練習になります。
しかし、システマをやっていても、受けたことがない方には、「セミナーなどでよく叫び声が聞こえる、痛そうなもの」、「単にスティックを使うマッサージ」「よくわからないもの」というような認識を持たれているようなので、一度紹介をしておいた方が良いかと思いました。
私自身もあまり説明せずに来てしまったので、反省しております。


ここでは、私自身の経験を基に、創始者のミカエルやモスクワ本部のコンディショニング担当のアレクセイ(私が直接習った方)などから教えていただいた内容を踏まえて紹介させていただきます。


まず先ほども触れましたが、システマコンディショニングはあくまでシステマのトレーニングです。システマのトレーニングということはすなわち、健康にいいものであり、万人に向けたものです。痛いというイメージが先行しているため、「システマを長くやっており、痛みを流せる方が受けるもの」と思われることも多いようですが、むしろ「システマってよくわからない」と思われている方にこそ受けていただきたいと思います。


システマのトレーニングで培われるからだというのは、例えるならギターの弦をチューニングして良い音が出せる状態です。
張りすぎてもいなく、緩みすぎてもいない。
張りすぎているというのはからだが固く緊張している状態、よく肩こりが話題になりますが、コリも緊張のひとつです。
緩みすぎているというのは一般的に使われるリラックスの状態。週末家でぐだっとしていて、何もやる気が起きないような状態です。
システマでもリラックスという言葉がよく使われますが、これはほどよくチューニングができている状態を指し、最近では一般的に使われるリラックスのことをレストと呼び、言葉を分けて使われることもあります。

まず、現代人はからだが張りすぎている過緊張の方が多いので、そこを自覚するところから始まります。本来はシステマのトレーニングの中で、少しずつ気づいていくのですが、コンディショニングの場合は外から見て直接触れられるため、自分では気づきにくい緊張部に否が応でも気づかされます。緊張している部分は触られると痛いもので(固くなりすぎていて痛みを感じなくなっている場合もあります)、そこをスティックでなぞられるとうめき声や叫び声をあげることもあるのです。緊張が取れていくとその分痛くなくなるもので、ミカエルたちはよくコンディショニングを受けながら寝ています。

緊張を緩和するためには呼吸を使います。鼻から吸って、口から吐く。とはいえ、それなりに強い痛みを感じると呼吸が止まることが多くありますので、その場合には短く呼吸をすることで、呼吸が止まることが防げます。痛みや触れられることへの恐怖は、触れられる前から始まっているので、触られる前から意識的に呼吸できるとベターです。
時折、痛みではなく、くすぐったさを感じる方もいますが、それも緊張ですので呼吸で緩和できます。はじめは触るだけでくすぐったさと感じていた方も、何度かコンディショニングを受けていったことで、からだが変わっていくのを実感されています。

呼吸をして、入ってきた緊張を固めずに流せるようになることがシステマで目指すからだのひとつであります。コンディショニングではそれを直接からだにアプローチすることで、普段のトレーニングとは異なる角度から学ぶことができます。

入ってきた緊張を流していく、もう一つの方法は動くことです。
痛いとからだが勝手に動くという体験をしたことがある方は多くいると思いますが、簡単に言うとあれです。ただし、緊張が広がって他の部分も一緒に固まっていくこととは違いますので、その点は注意してください。逃げるのとも違います。
基本的には中心から末端へ流していくので、手足の指先をプラプラさせるのが一番簡単かと思います。そうすることで緊張が緩和される、もしくは呼吸や緊張が末端へと流れていくのが感じられると思います。あまり難しく考えずに手をぶつけた時には痛くて手を振ると思いますので、それに似たようなものと考えてください。
色々な動きを試すことと、コンディショニングを受けることで生まれてくる動きがあるので、それらを止めずに動かしていくことが大切です。


さて実際のコンディショニングの流れです。
正直コンディショニングをする人によっても、受ける人によっても異なるので、決まった手順というものはありません。
ただし、ある程度の共通する部分を紹介します。

まずはうつぶせで首・肩・背中をスティックにてコンディショニングしていきます。
背骨の横は緊特に緊張が溜まりやすく、また自分で触ることもできないために緊張が常態化していることが多くあります。肩こりや、腰のハリ、首の痛みを訴える方は、通常からだの中の流れが滞留している状態です。
そういった状態をスティックでなぞることによって、からだの流れを再開発していきます。
人によって例え方は様々ですが、私は畑を耕すのはこんな感じなのではないかと思っています。からだという土壌を作るために石を取り除き、耕し、肥料と水が隅々まで行き渡るようになる。そうすることでそこから生まれてくるものが良きものとなって成長していくのではないでしょうか。

実際に、固まった緊張は石のようになっており、本来であれば滑らかに進むスティックがコツンと当たるところがあります。そうしたところは流れができるように、何度かなぞったり、角度を変えたりすることで流れるようにしていきます。

また、流れがあるうちは少し緊張しても、固まるところまではいかないものです。
流れが止まるには少しずつ緊張が溜まるとともに、複数箇所同時に溜まることがあります。
なので、緊張している部分を流すだけだと、また少しずつ溜まっていきます。
なので、目に付いた一ヶ所だけでなく、繋がっている箇所、隠れている場所、より根本的な原因にも、同時に流れを作ることでからだ全体の流れが滞りのないものへとなっていきます。

その後下半身、前面へ進みウィップで締めるというのが一般的(?)なのではないかと思います。ウィップは響きやすく、全身に波紋のように広がりやすいので、最後の締めとしてピッタリなのです。

下半身、前面はボディウェイや手、ウィップなどで流れを作っていくことが多いですが、スティックでも行うことができます。

特に腹部をスティックで触れていくのは、かなり深いところにまで潜れるので、かなり効果的です。しかし、その分緊張を感じやすくかなりの痛みが起きやすいので、直接ミカエルやアレクセイなどインストラクターに習ってから行うようにしてください。

手で行う場合にも緊張に繋がらないように流れを作れていければ、より深くリラックスできることと思います。

私が大阪に来てから定期的に受けてくださる方が出てきたので、少しずつ深いリラックスへ導ければいいなと思っています。

リラックスできているかの目安は呼吸です。
コンディショニング前の呼吸よりも終わった後の呼吸が深く、からだ全体に響いていたら良い状態になったと言えるでしょう。

リラックスにも深さの段階があるので、定期的に受けることで少しずつ深く潜っていけるかと思います。今回は伝わりやすいように、触りの部分だけ紹介させていただきました。より深い部分は実際に受けていただく中で、体験として伝えていきたいと思います。


私は最近、システマ大阪の月例ワークショップの時にコンディショニングを行わせていただいています。事前に連絡していただければ日程調整してさせていただきますので、気軽に連絡してください。


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