見出し画像

『暗殺』 柴田 哲孝 著

『暗殺』 柴田 哲孝 著

 「あれだけやめろと言ったのに元号を令和にした上、改号日も5月1日にしやがった。もう許せねぇ」 “令”は、目上の者が掟で縛り、言いつけるもの。“和”は和人、つまり日本人の意。5月1日は旧・統一教会の創設記念日なので、この趣旨は明らか。それまでの皇室典範問題などから、皇道派としては「もう許せない」と、蛮行に及んだという「設定」です。

 最初のページに「この物語はフィクションである」とありますが、元首相「暗殺」に関して、とてもフィクションとは思えない迫真の内容です。現容疑者の単独犯行ではなく、政治家・警視庁・自衛隊を巻き込んだ「事件」と設定し、事実を丹念に追いながら「物語」にしています(偽名で書かれていますが、実名はだいたいわかります)。執刀医の記者会見では、「致命傷は右頸部から心臓に至る貫通で銃弾は見当たらない」と言っていましたが、この事実が何を意味しているのかも本書を読むとよ~くわかります。これ、本当に凄いです!

巻末の「参考文献」には新聞・週刊誌が列挙されており、週刊誌記事をまとめて「フィクション」にしたのかもしれませんが、それでも綿々と続く戦後日本の政治・宗教・ジャーナリズムの「闇」の部分がわかります。また、本書のすべてを信じることはないにせよ、周りにある情報は「フェイクストーリー」ではないかと疑って考える重要性を教えてくれます。色々なつながりが見え、読んだ人とは熱く語り合いたくなる凄い一冊です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?