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知ってる?ファーストキスって何回してもいいんだって

「うれしい、ファーストキスなの……」
と、俯きながら話す女性。
その後、彼女はこちらに振り返り

「前に別な人とファーストキス済みだけど、この人とは初めてだから嘘はついてないよね」

と、こっそり本音を覗かせた……。

このやり取り、昔読んでいた雑誌の読者投稿で見かけたものと記憶している。
目から鱗だった。包丁の背でガリガリ削って、今から醤油で煮付けるのかと思うくらいボロボロ落ちた。こんな小悪魔テクがあったとは!


この人の計測法を取り入れるなら、私はお付き合いした人数=公式記録で2回ファーストキスをしたことになる。
どちらもその瞬間を鮮明に覚えている。1人目は告白した直後に河原で、2人目は飲み会で酔ったことを口実に押しかけて泊まり込んだ彼の家で。
味よりも、顔が近づいた時にフワッと香った彼の匂いの方を思い出す。恐らく向こうもドキドキして体温が上がっていて、いつもより強く体臭を発していたのだろう。それぞれの「雄」、フェロモンの匂い……とでも表現したら良いだろうか。そして「彼を匂いもろとも独り占めしてる自分」に、ちょっと酔っていた。恥っずかしっ!!

逆に、遊びや成り行き=非公式の相手とは、キスした事実は覚えているが、その時の触感や匂いを思い出せない。それどころか声、顔、そもそも何でそうなったのか……ということすら覚えていない人もいる。
その程度の人たち(超絶失礼)が、お付き合いするくらいの間柄に昇格してたら話が違ったかも。もしそうなっていたら「最初は遊びのつもりだったの、でも……」と、この投稿で官能小説よろしくのしょーもない痴話を惜しげもなく披露できただろう。それが叶わなかったということは、向こうにとっても自分にとっても、やはり「その程度」だったようだ。その事実に「寂しい」よりも「どうでもいい」が勝る。

話は変わって、昨今のコロナ禍で恋人たちの付き合い方も変わったようだ。
先日、山手線某駅トイレ前で待ち合わせしていたアベックに遭遇した(他に場所あっただろうに)。
男の子が女の子を見つけて駆け寄る。女の子も男の子に気付き、両腕を広げて待機。2人は軽いハグをした後、人目もはばからずナチュラル且つスマートにキスをした(トイレ前なのに)。
よくある光景だが、特筆すべきは2人がマスクをしたままキスしていたことだ。
愛する人を濃厚接触から守るためなのか、唇を重ねたい欲が勝ったのか、マスクを外すのがめんどくさかったのかはわからないが、少なくともコロナ前にこんなことはなかった。これが恋人たちのニューノーマル、新しい生活様式なのか。世の中はコロッと変わるものである。

唇を何かで覆ったままキスする行為は、一昔前ならTVのバラエティ番組の罰ゲームだったはずだが。クイズに失敗して罰ゲームを受けなければならなくなった美人女性タレント。後ろを振り返ると不細工な容姿を売りにする男性芸人が待ち構えている。2人は薄いビニールのラップ越しにキスしなければならない……ってやつ。
このご時世ならば、唇の感触を確かめあえるラップ越しの方がまだマシなのかも知れない。いや、それもそれでビジュアル的にどうかな……。うーん、わからない。

コロナのせいで、俗に言う「恋愛ABC」に変化が起きているかもしれない。
多彩な読者層にフレンドリーなライターを目指している身として僭越ながら解説させていただくと、恋愛ABCとは恋人との進捗度合いを表したもので、キス=A、ボディタッチ(ペッティング?)=B、セックス=Cという意味である。いつから存在する言葉かは分からないが、ウチの母が知ってるので少なくとも昭和中〜後期には存在したようだ。

で、そのAが2分割され、仮にA-(マイナス)を「マスクキス」としたら、その上のA+に「唇にキス」が来るのではないか、と勝手に予測している。

「彼氏とどこまで行った?」
「Aまで」
「ふーん……で、プラス?マイナス?」
「ま、マイナス……」
「だっさー!!私プラスまで行ったもんねー!!」
「だってまだ怖いんだもーん!!(濃厚接触による感染が)」

という、女子中学生の可愛らしいマウント合戦が見られる日が来るかも知れない……と、これからのアフターコロナを生きる若者たちに、勝手に思いを馳せるのだった。
早くマスクなしで、気兼ねなくキスできる日が訪れますように。パートナーいる皆さんに幸あれ。

クリエイティブ不毛の地・仙台出身の平成元年生まれが、令和元年に上京して「平面系マルチクリエイター」を目指しております。皆さまから格別のお引き立てをいただけることが、何よりの励みになります。