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骨強度と骨量(骨密度)は別物である

▼ 文献情報 と 抄録和訳

CT画像に基づく有限要素解析で予測される骨量指数および骨強度を用いた椎体圧縮骨折のリスク評価

Wu, Shun, et al. "Risk assessment of vertebral compressive fracture using bone mass index and strength predicted by computed tomography image based finite element analysis." Clinical Biomechanics 85 (2021): 105365.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 骨粗鬆症診断の主な目的は、骨折リスクの評価である。骨粗鬆症の診断には,骨密度を指標とした骨量指標が用いられている。一方,椎体の骨強度を評価するために,コンピュータ断層撮影画像に基づく有限要素解析が開発された。椎体の強度は、圧縮骨折が始まるときの荷重として定義される。そこで本研究では,骨量指標と骨強度指標という2つの骨粗鬆症指標の長所を組み合わせた,実現可能な新しい方法を提案することを目的とした。

[方法] 88名の患者の246個の椎体の3次元有限要素モデルを,コンピュータ断層撮影画像を用いて作成した。そして,有限要素法による解析を行い,強度を評価した。また、椎体強度と骨量指数の間にPearsonの相関分析を行った。

[結果] 強度と骨量の間には比較的弱い正の相関関係があることがわかった。そこで、強度と骨量指数を組み合わせた新しい評価方法を提案した。その結果を受け、強度が低く骨量が正常な場合を「高リスクゾーン」とした。

[結論] 単一の骨量指標では骨折リスクを高い水準で予測できない。強度と骨量の両方を考慮した骨折リスク評価の必要性と有効性が、新しい評価方法によって明らかになった。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

臨床上ではレントゲンの透過性や映り方をみて、骨萎縮を推察する方法が簡便だが、この方法は骨密度しか反映されない上に、判断基準があいまいであるように感じていた。今回の研究では、一見骨密度は高いように見えるが、骨強度が弱い人こそ骨折のハイリスクゾーンとしている。油断大敵というわけか。リハビリテーション時の介入に生かしたり、退院支援に生かしたりするには、画像から自動的に骨折リスクが算出されるようなシステムの開発が望まれる。