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超音波でサルコペニアを測る。USI: ultrasound sarcopenia index

▼ 文献情報 と 抄録和訳

加齢に伴う筋構造の変化はサルコペニアの特徴である:超音波サルコペニア指標

Narici M, McPhee J, Conte M, Franchi MV, Mitchell K, Tagliaferri S, Monti E, Marcolin G, Atherton PJ, Smith K, Phillips B, Lund J, Franceschi C, Maggio M, Butler-Browne GS. Age-related alterations in muscle architecture are a signature of sarcopenia: the ultrasound sarcopenia index. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2021 Aug;12(4):973-982.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 筋肉量の評価は、サルコペニアの診断の重要な決定要因である。我々は、筋肉の幾何学的比率の変化に基づいてサルコペニアを診断するための超音波画像診断法を初めて紹介する。

[方法] 適度に活動的な高齢者(MAE)、座りがちな高齢者(SE)(n=109)、運動機能障害のある高齢者(MIE)(n=43)に分類された279人の集団と、成人の若年対照者(YC)(n=60)を対象に、大腿骨遠位部の35%の長さにおける外側広筋の筋束の長さ(Lf)と厚さ(Tm)を超音波で測定した。Lf/Tmの比を算出し,サルコペニアに伴う筋肉量の減少(USI)を示す超音波指標を得た。DXAによる測定が可能な高齢男性(n=76)のサブサンプル(MAE:n=52,SE:n=24)において,DXAによる骨格筋指数(SMI,四肢の質量/身長2)とUSIの値を比較した。

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✅ 図. [左] 大腿骨遠位部の長さ(LF)の35%で得られた外側広筋の矢状超音波画像で、筋節長(Lf)、筋厚(Tm)、ペネーション角(PA)を示す。[右] USIとサルコペニア重症度の関係性を示す。

[結果] 若年者、高齢者ともに、USI値は性別、身長、体格に依存しないことがわかった。USI値は、YCで3.70±0.52、MAEで4.50±0.72、SEで5.05±1.11、MIEで6.31±1.38であり、いずれも互いに有意に異なっていた(P<0.0001)。YC集団を参考に、USI Zスコアに基づいて、219名の高齢者を筋肉のサルコペニック状態に応じて層別した。USI値が3.70<USI≧4.23の範囲内の人を非サルコペニック(有病率23.7%)、USI値が4.23<USI≧4.76の範囲内の人をプレサルコペニック(有病率23.7%)、USI値が4.76<USI≧5.29の範囲内の人を中等度サルコペニックと分類した。 USI値が4.76<USI≧5.29の範囲内の者を中等度サルコペニック(有病率15.1%)、USI値が5.29<USI≧5.82の範囲内の者をサルコペニック(有病率27.9%)、USI値が5.82以上の者を重度サルコペニック(有病率9.6%)と分類した。DXAによるSMIはUSIと有意に相関していることがわかった(r = 0.61, P < 0.0001)。注目すべきは、USIの中等度サルコペニアのカットオフ値(4.76 a.u.)が、DXAのサルコペニアのカットオフ値(7.26 kg/m2)と一致したことである。

[結論] 超音波サルコペニック指数(USI)は,筋肉の幾何学的比率の変化に基づいて,サルコペニアに伴う筋肉量の減少を示す,新しく実用的で安価な画像マーカーを提案するものである。これらの変化は、サルコペニアの有用な「シグネチャー」となり、筋肉のサルコペニアの有無や重症度に応じた個人の層別化を可能にします。USIは、筋肉量の評価が重要な要素であるサルコペニアの診断を確定するための有用な臨床ツールになると確信しています。

▼ So What?:何が面白いと感じたか? 

レントゲンでの検査には、3つの問題点がある。

①被曝の問題:言わずもがな、放射線被曝の問題である。
②手間の問題:レントゲンを撮るということは撮る側も撮られる側も手間である。
③量は見れども質は見ずの問題:レントゲンから算出される四肢骨格筋量(SMI)という値は、量を示していて、具体的にどのような構造になっているかという質は示していない

②の問題は、実際の臨床現場で利用されないという結果をもたらす。
面倒臭いことは、思った以上に現場で取り入れられない。↓ related note

近年、脂肪浸潤や羽状角、今回のUSIのように「その骨格筋量の中にどんな世界が存在するか?」の重要性が浮き彫りになってきた。
③の問題は、そこから生じてくる。
同じ骨格筋量の中にも、世界の違いは存在する。

そして、今回の研究は、①〜③の問題をすべて解決している。
・・・。
超音波装置を適切に扱えることは、理学療法士が持つべきスキルの筆頭になるかもしれない。

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