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脳卒中者に共通の重要な目標領域5+2

📖 文献情報 と 抄録和訳

地域在住の脳卒中患者における目標の優先順位を概念化するための重要度・満足度分析

Hay, Catherine Cooper, et al. "Important-performance analysis to conceptualize goal priorities in community dwelling stroke survivors." Topics in Stroke Rehabilitation (2021): 1-11. https://doi.org/10.1080/10749357.2021.1928838

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

✅ 前提知識:重要度・満足度分析とは?
- 重要度・満足度分析(Importance-Performance Analysis: IPA)は、重要度と満足度とい う2つの次元において、商品やサービスなどの特定した対象を分析する簡単でありながら効率的な分析方法であり、1977 年 Martilla と James によって開発された後、様々な産業分野で幅広く積極的に適用されている。
- 需要者の直接的な評価に基づいて、マーケッティング戦略や政策樹立における改善に対して優先順位を識別できる実務的に非常に役立つ分析方法だと評価されている。具体的には、重要度評価を Y 軸(垂直軸)に、満足度は X 軸(水平軸)に設定し、重要度・満足度の観点から4象限に区分する(図)。
📕1. Sever, Ivan. Tourism management 48 (2015): 43-53. >>> doi.
📕2. 柳永珍. 地域戦略研究所紀要= Studies of Institute for Regional Strategy 3 (2018): 67-82. >>> pdf.

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[背景・目的] 脳卒中患者の目標をよりよく理解することは、臨床家にとって重要である。重要度・満足度分析(IPA)は、リハビリテーションにおける目標の優先順位を明らかにするために利用できるツールである。目的:地域在住の多様な脳卒中患者を対象に、目標の優先順位を特定するためのIPA手法の有用性を検討する。

[方法] 38人の脳卒中生存者が個人的な構造化面接を行い、37の目標領域について重要性の認識と達成度を評価するよう依頼された。サンプル全体の目標の優先順位を決定するために、重要度・満足度分析(IPA)が利用された。目標の優先順位を決定するために使用された様々なIPAの方法が比較された。また、年齢別(65歳未満と65歳以上)、性別(男性または女性)でも目標の優先順位を比較した。

[結果] IPA法は、目標を4つの象限に効果的に分離し、脳卒中生存者サンプルにとってどの目標が優先的であるかを区別した。一貫して重点分野として認識されていたのは、手の機能、運転、バランス、記憶、腕の強さの5つの目標であった。男性は、女性よりも気分のコントロールが重要であると評価した(p=0.046)。65歳以上の高齢者では、家の使い勝手(p = 0.008)と皮膚の健康(p < 0.001)の2つの目標がより重要であると評価された。

[結論] 脳卒中患者は、脳卒中後の数年間、脳卒中の回復に関連した目標を持ち続けている。脳卒中生存者と目標を話し合う際には、現在のパフォーマンスだけでなく、重要性の認識も考慮する必要がある。IPAは、この集団における目標の優先順位を特定するのに役立つ。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

とくに地域(訪問リハなど)においては、Trans-disciplinaryな関わりが重要になる。
Trans-disciplinaryとは、患者の需要が第一にあって、その場にいる人が、その職域に関係なく、その需要のすべてに対応するという考え方だ。
一方、病院ではMulti-disciplinary偏重型だ。すなわち、各職種の専門領域が先にあって、患者自身でその需要によって問い合わせ先を変えてくれ、という感じ。
このMulti-disciplinaryは考えものだなぁ、と思っている。
「ああ。その部分は私にはわからないので○○に聞いてください。」という塩対応を生むからだ。
僕は、入り口はTrans-disciplinary、そこから各専門職種にアウトソーシング(業務委託)していく形が望ましいと考えている。
その見地から眺めれば、患者が重要と捉えている領域は、どの領域も重要なのだ。

ときとして、自分の専門外のことを患者が訴えたときに、ほぼ無視に近いような対応をしてしまうことがある。たとえば、理学療法士は
「歩きにくくてね」にはとても発奮🔥するのに、
「運転がね」には冷淡🧊になってしまう。
言葉は汚くなってしまうが、それはあくまでも「お前が」知らないだけなのだ。
利用可能性ヒューリスティック、というバイアスがある。
自分が思い出しやすいもの ≒ 重要なものと勘違いしてしまうバイアスだ。
患者の訴えを聞くとき、それに囚われてはいけない。
重要なものは、「お前が」思い出しやすい、知っているもの、得意な領域ではなくて、「患者が」重要だと捉えている領域だろう。
自分はあまり知らないし、得意ではない領域だったとしても、それは患者にとって重要な目標領域。
だったら!真摯に、全力で、それに向き合い、できる最大限のことをしてみよう。
お母さんの病気に、とうもろこしを必死に届けたメイの行動は、全然間違っていない(隣のトトロ)。
最善は、全力が規定する。
避けずに、向き合え。
知らないなら勉強しろ。それだけだ。

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