見出し画像

患者教育媒体の優劣。書面のみ vs. 図+書面 vs. 動画

📖 文献情報 と 抄録和訳

腰痛の画像診断と必然的な結果に関する正しい信念を促進するための簡単な患者情報資料の有効性。無作為化比較試験

Diniz, Leandro M., et al. "Effectiveness of brief patient information materials for promoting correct beliefs about imaging and inevitable consequences of low back pain: A randomised controlled trial." Clinical Rehabilitation (2021): 02692155211065974.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 腰痛の画像診断と必然的な結果について正しい認識を促すために、どのような形式の患者情報提供(書面のみ、インフォグラフィック(図+書面)、動画)が最も効果的であるかを調査すること。

[方法] デザインは無作為化比較試験。対象は外来理学療法クリニックから非特異的な腰痛患者159名(平均年齢49.1歳)を募集した。介入参加者は、3つの形式のうち1つの患者情報を受け取るよう無作為に設定された。書面のみ、インフォグラフィック(図+書面)、動画(以下YouTube動画)の3条件であった。患者は最大20分間、資料を読んだり見たりすることができた。介入前と介入直後の転帰が評価された。主要アウトカムは、Back Beliefs Questionnaireとした。副次的アウトカムは、腰痛の画像診断に関する信念で、2つの質問で評価した。

[結果] 159名の患者全員が研究を完了した。その結果、Back Beliefs Questionnaireには群間差は認められなかった。画像診断に関する正しい知識は、動画よりも図+書面の方が高かった(質問1- オッズ比 [OR] = 3.9, 95%信頼区間 [CI]: 質問1-オッズ比[OR]=3.9、95%信頼区間[CI]:1.7、8.7;質問2-OR=6.8、95%CI:2.7、17.2)、動画よりも書面のみでより可能性が高かった(質問1- OR =3.3, 95%CI: 1.5, 7.4;Q2- OR=3.7, 95%CI: 1.6, 8.5).LBP画像診断の信念を評価する質問については、書面のみと図+書面の要約形式の間に差はないと報告された。

[結論] 3つの教材は、患者の腰痛ケアに関する一般的な信念を向上させるのに等しく効果的であった。しかし、書面のみや図+書面の形式は、動画の形式よりも、腰痛の画像診断に関する信念を向上させるのに効果的であった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「自主トレを動画にしよう。音声にしよう。」
「退院支援や介護サービスの概要を動画にしよう。」

僕たちには、すぐに動画や音声といった近代的な媒体に変換したがる癖がある。
「いや、動画とか音声の方が、わかりやすいじゃん」
分かる、僕もそう思う。だが、それは『つくり手の価値観』である。
僕たちは、何かを発する前に、ドラッガーの言葉に耳を傾けなければならない。

コミュニケーションを成立させるものは、受け手である。
コミュニケーションの内容を発する者、すなわちコミュニケーターではない。
彼は発するだけである。
聞く者がいなければ、コミュニケーションは成立しない。
意味のない音波しかない。

ドラッガー 「マネジメント」より引用

今回、患者教育において、患者に影響を与えやすい媒体が「書面のみ」or「図+書面」であることが明らかになった。
動いていないものの方が、患者(平均年齢49.1歳)を変えやすいということか。
確かに、思い返せば、臨床上もそんな経験がある。
「足上げ(SLR)のときのこの足首の部分は反らした方がいい?、そらさない方がいい?」
「この資料にある、家屋写真の撮り方のこの部分なんだけど・・・」
そんなにも、処方資料、入院案内、読み込んでたんですね!?、という経験がたくさんある。

とはいえ、分断しすぎてもいけない。
僕たちは、すぐに分断しすぎる本能を持っている。
金持ちと貧乏、発展途上と先進、白人と黒人。
そして、若年者と高齢者。
二極化は、その中のばらつきを見落とす大きなバイアスになりかねない。
たとえば、高齢でも、SNSを高度に使いこなす人もいるわけだ。
その方の『媒体受容体』を評価して、適切な媒体が規定されるというのが、望ましいだろう。
そんな評価尺度が、いる。
これは有望なリサーチクエッションを得た。

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

【あり】最後のイラスト

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○

#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び