2018.10.07夢の島へようこそ_表紙カラー-rinkaku01

夢の島へようこそ!【試し読み版】


夢の島へようこそ!


〈あらすじ〉

 待っていたのは、異様なモノ。

 高校の夏休み。雪代和馬は学校の屋上で、天花美結に拉致される。

 船の上で目覚めた雪代は、国が認定した6000以上の無人島に入らない、『夢の島』に連れていかれることを知る。

 抵抗むなしく島に上陸するが……。

 地図から消された無人島。夢の島へようこそ。


 天花美結は思い出す。

 六歳だっただろうか。母はおっとりとしていて、就寝する前にお布団のなかで絵本を読み聞かせてくれた。ファンタジーで、楽しくて、わくわくしながら話を聞いていた。ごくたまに、怖い話をするときがある。

 物語の主人公は『願いをかなえてくれるもの』をどこからか手に入れて、巨万の富を手に入れる。何不自由なく暮らしていたが、最愛のひとり息子を事故で亡くしてしまう。悲しんだ主人公は、『願いをかなえてくれるもの』にお願いした。息子をよみがえらせてくれと。

 願いはかなった。よみがえった息子は異形のモノと化していて、元の姿ではなかったのだ。

 玄関のドアがノックされる。


『おとう……さん。開けてよ……。開けてよ……』


 おびえてしまった主人公は、『願いをかなえてくれるもの』に頼んだ。息子を永遠に消してくれ、と。

 話が終わるまで、お姉ちゃんは頭を布団でおおって、怖がっていた。私はおびえていなかった。首をかしげていた。

 おかしいもの。どうして最愛の息子なのに『永遠に消してくれ』だなんて言うの? どんな異形なモノでも、受け入れられるんじゃないの?

 お母さんは困ったように笑い、


「そうね。でももし、美結が生き返っても、お母さんだったら、物語の主人公と同じことを願うかな?」

「お母さんは美結が嫌いなの?」

「ううん。そうじゃない。安らかに眠っている人を、無理やり起こすのはよくないわ」


 頭をなでてくれる。ぜんぜんわからない。

 お姉ちゃんの寝息が聞こえる。眠たくなっちゃった。


「さっ、寝ましょうね」


 お母さんは明かりを消すと抱きしめてくれた。あたたかい。いい匂いがして、意識が薄らいでいく。桜のような唇を緩め、優しい目つきで私たちを見守ってくれる。

 意識がなくなった。闇が訪れる。

 それが、最後に母を見た姿だった。


試し読みはここまでです。


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工学と医療の資格を持つライター。個人サークル小説制作所を運営。サスペンス系小説を電子書籍にて出版。趣味で小説書いとります。【小説制作所(個人サークル)】:(https://inaba20151011.hatenablog.com/

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