短編・ショートショート集

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籠の中

 鷹華は赤い炎を見つめていた。  ロウソクのようなチロチロとしたものじゃなく、それは巨大で多くのものを巻き込む紅蓮。形あるものを墨になるまで焼き尽くす。さわれば確実に皮膚は焼けただれ、肉を溶かし、骨の髄まで浸食されて死ぬだろう。  悲鳴が聞こえる。女、男、老人、子供。ようしゃのない…

ダイナパーク

 山方六は中生代にいた。  中生代とは恐竜やは虫類が支配していた時代のことだ。ゼンマイのような植物が生い茂り、巨大な針葉樹が周りを支配している。この蒸し暑さは湿気のせいで、植物の育成に貢献している。  そばには管野靖美がいた。高校二年生の同級生で同じクラス。修学旅行で遊園地に到着…

告白自転車

 史織さんと恋人になるには、自転車免許が必須だった。  父親に聞いたけれど、昔は自転車を乗るのに免許は必要なかったらしい。だけど車の交通事故に比例するぐらい事故が多くなったときから、国はとある法律を制定した。自転車免許制の導入だ。  国民の反対を押し切って作られたこの法律により、十…

雪の季節④

 雪江が行方不明になって、三年たった冬。  小学校高学年となった小春が、元気よく石の階段を上っている。ダッフルコートに、ジーンズ、ブーツと、かわいらしい格好をしていた。十代らしいエネルギッシュさを遺憾なく発揮し、階段をかけ上がり、 「お父さん! 早く早く!」  上がり終えると、ク…

雪の季節③

 一カ月たった。雪江に、小さな赤ちゃんが誕生していた。清潔な布にくるまれ、腕のなかでスヤスヤと眠っている。身長は四十八センチ、体重は四キログラム。性別は女の子。  名前は雪江の『雪』という字を取って、小雪と名付けた。家族が増えるので、3LDKのマンションを引っ越そうかと考える。気…

雪の季節②

 雪山の遭難から生還し、二年後、神無月春永は古い石の階段を上っていた。  寒い気温に対応するために、黒のダウンジャケットを着ている。ズボンはスリムなチノパンだ。二十七歳なので、若者向けの服装でも十分似合った。  吐く息が白い。手袋をしていても、山の頂上に近づくたびにかじかんでくる。…

雪の季節①

 真っ白な雪が降る山を、雪女は登っていた。  服装は白地の着物だ。薄い紫の帯を胴部に巻きつけ、白足袋に草履で、柔らかな雪の道をシャナリシャナリと歩く。目指しているのは山小屋だ。 「ん?」  丸太で建てられた濃茶色の小屋が見えてきたとき、なかに気配を感じた。  いる。獲物が。  ペロ…

少女天国

 白髪の男が見つめる窓ガラスの奥で、二十人の少女たちが遊んでいた。  少女たちの年齢は十歳前後。皆白いワンピースを着ている。グループにわかれ、縄跳びや積み木やお絵描きなど、好きなものを手に取って遊んでいた。  男の子と違う点がある。少女たちはよく雑談をした。  女はコミュニケーショ…

本屋の女王様

 ベッドの上で拘束されていた。  体中を革のベルトでしめられている。動けない。手や足や胴、首まで強固な束縛用具がはまっている。  部屋は高級感であふれていた。よくわからない彫刻がされた照明、誰が書いたかわからない絵画、白く取っ手の丸い棚。王女様が住んでいそうな部屋だった。  ――俺…

こけし

 栗原は白シャツを着て、赤いネクタイをしめ、黒いコートを羽織っていた。 「サンタクロースって死に神みたいね」  ラブホテルの白いベッドのなかで、不倫相手の明美がしゃべった。勤務する会社の事務員で、年は十個下だった。自分が四十八なのだから、三十八歳か。サンタクロースからプレゼントが…