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talvi

 冬に生まれたこともあってか、日本にいる頃から冬が一番好きでした。

 寒い寒い、と文句を言いながらも、初めて息が白くなった日はそれが嬉しくて仕方がなくて。朝焼けの優しい色の中に溶ける白い息がとても好きです。

 私がフィンランドに到着したのは6月、みんなが口を揃えて「最高」という夏でした。そして夏が終わり始めると、みんなは口を揃えて言いました。

「11月は最悪だよ……」、と。

 一年の中でも日照時間が短く、かつ色づいていた木々の葉は落ち、気温は下がるものの雪ではなく雨が降る……色々な人から脅かされて迎えた11月、確かに気持ちは暗くなって変なことに落ち込む日もありましたが、思ったよりも平気でした。何より、散る前の木々の美しさにはうっとりでした。

 そして迎えた冬、日が一番短い時期は日の出は9時半、日の入りは15時。日照時間は6時間半。仕事に行く頃は暗く、寄り道をして帰った日には18時でも深夜かのように真っ暗でした。でも、その分、晴れた日は本当に嬉しかった。きらきら光る太陽が眩しくて温かくて。光を受けて空に伸びる白い息が本当に美しかった。フィンランドでは白い息がどこまでも伸びていきます。それが嬉しくて、バスを待ってる間、歩いてる間、はぁーっと何度も息を吐きました。

 私の故郷は温暖で雪がほぼ降らないので、フィンランドの雪景色は毎日見てもうっとりします。世界が真っ白で、空から降ってくる雪は本当の花のよう。雪の花に六花、という名前をつけた人の感性が羨ましくなります。形はどれも違っていて、どれもそれぞれの美しさがある。人もそうだなと思います。みんな違っていて、みんな美しい。互いのことをそんなふうに思えたら、もっと自分の愛せたらいいのに、と思いました。少なくともこの国の人たちは、日本よりずっとずっと自分のことを愛している。だから、人のことも愛せたり、許せたりするんじゃないかなと思います。それはまた、別の時にお話したいです。

 気温の話は前にも書いたけれど、マイナス10度を超えると寒いを通り越して痛い。でも、お家の中はいつだって温かいのでさほど辛くないです。こちらで知り合ったフィンランド人が言ってました、「冬の日本はフィンランドより寒かった!なんで家の中があんなに寒いの?」って。本当にそう思う。私のホストファミリーは外がマイナス20度近い日でも、家の中では半袖です。

 少しだけ、冬の風景をおすそ分け。どこを見ても美しいです。ただ、除雪車が通った後、道の端に寄せられている雪や、車にいっぱい踏まれた雪は、灰色をしています。見たい方がいれば、今度それも載せてみようかな。

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 1月の朝7時半頃、まだまだ夜の匂いです。最近は、同じ時間帯でも空が薄ら明るくなってきました。

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 2月の15時頃、上の写真と比べるとどっちが朝?ってなりますね。ちなみにこの足跡は……動物です。フィンランドの人たちは足跡を見てすぐ「これはウサギ」「キツネだね」と分かっているので驚きです。そういえば、家の近くに、先日オオカミが出たそうです。一度会ってみたい。

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 歩いて5分の海、どこまでが陸地でどこからが海か分かりません。そろそろ氷の上を歩けるみたいです。でも、先日気温がマイナス2、3度を行き来している時には雪が溶けて氷が薄くなっていました。下流の方では凍っていた海が再び流れを取り戻していて……自然の力はすごいなと思いました。

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 海の手前にある小さな森、ここを歩くのが好きです。背高のっぽの白樺と松がたくさん並んでいます。木の幹が赤いのは松。真っ白な森の中は遠近感覚がなくなりそうになるのですが、不思議とそれが心地よいです。

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 これは元日に撮った朝日、9時半頃だったと思います、綺麗だったなぁ。

 もちろん、私は今一年限定で暮らしているだけなので、本当の厳しさや大変さが理解できているかと言われるとそうでもないのだと思います。でも、風の冷たさ、膝下まで埋まる雪の深さ。凍った坂道を昇り降りする怖さ、庭に積もった雪を退ける大変さ。そんなフィンランドの冬の生活を少しでも経験できて、幸せなだと思います。もうすぐ春、春が来ると夏が来てしまう。それが嬉しくて寂しい。今は、冬を少しでも楽しみたいと思います。

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