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介護保険物語 第9回 その3

どうも!
社会福祉法人サンシャイン企画室の藤田です。

忘れておりました「介護保険物語」第9回のその3(これで終わり)です。

今回は平成30年度改正事項、「介護医療院の創設」です。
これはわれら特養のピンチなのか?チャンスなのか?
はたまたピンチョンなのか?

では落ち着いて、第9回のその3、まいりましょう!

H30年度改正・介護医療院の創設

藤田 ありがとうございます。では次の本日最後のお題、「介護医療院の創設」についてです。

これは問題ありですねえ(笑)。

森藤 問題ありです(笑)。問題ありというか、切羽詰まって作ったというか(笑)。

藤田 まず介護医療院創設の背景を説明したいと思います。

<介護医療院までの経緯>
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000337651.pdf
「療養病床」は「病院または診療所の病床のうち、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるもの」とありまして、医療保険を使う『医療療養病床』(21.6万床、H27の数字)と介護保険を使う『介護療養病床』(5.9万床、H28の数字)がありました。

このうち介護保険を使う『介護療養病床』は(H18改正によって)平成23年度末で廃止が決まり、その際に入院患者を「主に医療を必要とする方」と「主に介護を必要とする方」に分け、前者は『医療療養病床』へ、後者は『介護療養型(H20創設)もしくは従来型の老人保健施設』や『特別養護老人ホーム』へ転換させていただこうとしていました。

ところがその平成23年になって『介護療養病床』の廃止・転換は平成29年度末までと、期限が6年延長になります。(ただしH24年以降の『介護療養病床』の新設は認めない、となりました)

その後の検討で、『介護療養病床』への入所者のうち医療ニーズの高い人の割合が増加しているなどの事実が出てきて、療養病床のあり方を今一度考え直そうという見方が出てきました。

そこで平成30年度の改正で出てきたのがこの『介護医療院』という新たな施設系サービスでした。

『介護医療院』はより医療ニーズの高い方が入所されるⅠ型と、医療ニーズが比較的低い方が入られるⅡ型に分かれています。

これまでの「介護療養病床」と『介護医療院』の違いは、『介護医療院』の方は生活施設であるという点であり、それは施設基準にある1人あたりの面積でわかります。「介護療養病床」の方は6.4㎡/人(病院としての基準)なのに対し『介護医療院』は8㎡/人以上となっています。

藤田 ということなのですが、いかがでしょう。

森藤 いやあ、これがこのまま軌道に乗って、こういうのが当たり前みたいになったら、特養、危ないよ(笑)。

藤田 そうそうそう。そうですよねえ。そこが問題で(笑)。

森藤 特養の存在意義が、よくある有料老人ホームなどと同じっていうことになりますから。

介護医療院と介護療養病床の違い

藤田 でもわたしなんかから見ると、この「介護医療院」の創設って、なんかそれまでの流れに沿ってないような気がするんですが?

だって医療ニーズの高い人が入られる介護療養病床を少しずつやめる方向にもっていってたのに、同じような施設を新たに作るってわけですから、あれれ?と思いません?

森藤 いやいや、それはね、病院から社会的入院してるだけのような人を追い出したいんですよ。つまりは医療費を払いたくないんですよ。

藤田 でもそういう人は介護療養病床に入ってもらってたわけじゃないですか?でもそれを廃止するわけなんでしょ?

森藤 いやいや、その介護療養病床もほとんどは病院とかがやってるわけで、だからと言うか、その設置基準は病院のものと同じなわけでしょ?(上記<介護医療院までの経緯>参照)

介護費用はそりゃあ介護保険から出てるんだけど、その建物のために使われた資本を考えたりすると、それは実は医療のために投下された資本なわけで、そこまで考えるとやっぱり医療費を使ってるっていうことになるわけですよ。

藤田 はああ。なるほど、そういうことですか。

森藤 要は老人病院的なことは、もう止めたいということなんですよ。

藤田 そうですか。でもですよ、それで医療費は多少減るかもしれませんけど、その分介護費が増えるのだとしたら、これ同じことじゃないですか?

森藤 国民から見たら同じですかね(笑)。

介護医療院と特養・老健の違い

藤田 それでもともかく医療費を抑えたい、と。それで長期療養が必要な人は病院的な介護療養病床ではなく、100%介護保険の下にある施設である「介護医療院」に入ってくださいってことですね。

そうなると一番最初にも出ていたことですが、特養とは何が違うんですか?

森藤 違いは、特養ではそこに住みながら治療はできませんよね。でも介護医療院はそこで治療できるんですよ。ドクターがいるので。まあ老健みたいなものですね。ただ老健は基本3ヶ月で出なきゃいけませんが、介護医療院は治療を続けながらずっと住んでいられる。そんな違いがありますね。

終の棲家はどっち?

森藤 もしわたしが特養に入るような要介護3以上になったとして、特養と「介護医療院」、どっちもありますがどちらに入ります?って言われたら迷うことなく「介護医療院」を選びますよ。

そもそも、特養についてはよく終の棲家などと言われていて、いったん入居すると基本的にはそこで一生を過ごすもので、特養に入居できれば、それで安心して余生を送ることができるという認識が一般にはあったと思いますよ。

ところが、介護保険が始まっていつの頃からかわかりませんが、特養入居者も機能訓練をしっかりやって、在宅に戻ろう、という国からの方針がしきりに示されるようになったわけで。私のように昔の特養の認識がしっかりある者にとっては、あれ、特養って終の棲家ではなかったっけ?という、違和感のようなものを覚えたものでしたよ。

だけど、国がいくら在宅、在宅と言っても実際に特養から在宅に戻ったという例はほとんど聞いたことがありません。事実、当サンシャイン南蟹屋でも特養から在宅に戻ったという例は当施設開所以来15年近くになりますが、1~2例あったかなかったかという程度です。やはり、特養は終の棲家と呼ばれるに相応しい施設なのです。

と言いたいところなのですが、実際は、特養は終の棲家たり得ていないという現実があるんですよ。

それは、特養から在宅へという方向とはまったく逆の、特養から病院へという流れの方がはるかに多いという事実に表れています。

確かに、特養でも看取り介護を実践している施設もたくさんありますが、看取りで最後までたどり着く前に医療的対応に迫られ、特養のキャパシティでは支えきれなくなって、急遽病院へ搬送ということもまた多々あることも事実です。

まして、看取りにあまり重きを置かず、医療的ニーズが強くなったら即病院へという施設も決して少なくはありません。それでは結局のところ高齢者の行きつくところは社会的入院ということになってしまい、また振り出しにもどってしまうことになるんですよ。

それでは困ったことになりますので、特養でケアしきれないレベルの人々を受け入れる施設として、介護医療院が創設されたというわけです。だから、介護医療院は介護施設の終着点であり、振り出しでもある、ということになるのではないでしょうか?

藤田 はああ。なるほど。うまいこと言いますねえ(笑)。一周回って元に戻った、という。

森藤 この介護医療院こそ特養に代わって終の棲家となるのか?ということについては、今後の成り行きを注目したいところです。

もし、この介護医療院という制度が十分機能し始めたら、ひょっとしたら特養の存在意義が脅かされることにもなりかねませんよ。

さらに、介護医療院の設置主体はほとんどの場合医療法人ということになるでしょう。そうすると医療ニーズの絡んだ重度要介護者のケアについては社会福祉法人が設置する特養ではとても太刀打ちできません。

また、利用する側からみてもバックに病院が控えている介護医療院のほうが特養よりも安心を感じるのは明らかです。

そうなるとこれからは、終の棲家が欲しければ「介護医療院」に入るようになるわけでしょ。

社会福祉法人が手掛ける事業は障害者施設や保育園など高齢者介護以外の分野にも広がっていますが、介護の分野においては特養を運営するためだけに設立された社会福祉法人というのも決して少なくはありません。ここ、サンシャインがそうですし。

もし、特養が介護医療院に取って代わられるというようなことになると、社会福祉法人そのものが介護分野での居場所を失うことにもなりかねないのではないかと危惧しております。

藤田 なるほど。社会福祉法人の存亡がかかってるという。特養押しの森藤部長からすると夜も眠れない日々が始まったということですね(笑)?

森藤 いやいや(笑)。それはまあ冗談半分ですよ(笑)。

藤田 楽しいお話をありがとうございました。いよいよ今年(令和3年)の改正に追いついたということで、次回が「介護保険物語」の最終回になりますね(笑)。また楽しい面白いお話をお待ちしております。

本当にありがとうございました。

森藤 ありがとうございました。


収録日:2021年6月25日(金)

ということで「介護保険物語」第9回は以上です。
今回は3回に分けてアップさせていただいたのですが、ちょっと手間取りました。

次回はいよいよ最終回になりそうです。
どんなお話がうかがえるか、両手をこすり合わせながらお待ち下さい。

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