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ヒマラヤをうろうろと 2

ダメってわかってますけど、マスクつけたいぐらいですね…
あるとき、一緒にヒマラヤに入った後輩がこんなことを言い出しました。

基本的に、エベレストのあるクンブ地域のトレッキングシーズンは3~5月頃か、10月~12月頃がメインです。モンスーンの影響で夏の間は天気が優れませんし、12月下旬から2月中旬頃までは気温も低く一般向けではありません。

このモンスーン以外の時期は所謂乾季で、山中はとても乾燥しており埃まみれ。なので、目や鼻にはやさしくありません。花粉症の症状に似ています。
とは言え、ただでさえ酸素が薄い高標高地帯で、自ら酸素の供給量をカットするのは高所障害 (高山病)のリスクが高まるだけなので自殺行為…

高山病が出るタイミングは人によって結構違います。自分の場合、大体標高4000mに近づくにつれて手足の浮腫みや日中の眠気が出始め、4000mを過ぎると頭痛が起きます。

不思議なもので、日本の山を登っているときは標高2000mぐらいから高山病になっていました。日本では頭痛よりは息苦しさの方に悩まされがちですが、ヒマラヤでは息苦しさよりも頭痛がとてもしんどいです。

高山病の予防のためには、まず第一に標高をゆっくりと上げて体を徐々に慣らす「高所順化」を計画的に行うこと。次に、症状が出る前にあらかじめ高所障害対策の薬を飲んでおくこと。そして、水分を多めにとることが大事とされています。

後輩は、ディンボチェ (標高4400 m)に着いた頃から、 突然頭痛と息苦しさが出てきました。とにかく水を大量に飲ませて宿で様子を見ますが、顔色の悪さと浮腫みがひどい。同行したシェルパもさすがに心配し始め、下山も検討し始めましたが、後輩はまだ大丈夫と聞き入れません。

「明日の様子を見て、どうするか決めよう。」

彼とシェルパにそう伝え、その日は寝袋に潜り込みました。彼は寝ながら貧乏ゆすりをする癖があり、普段は夜寝袋が擦れる音を聴くのが悩みの種だったのですが、その日ばかりは良い安否確認の材料となりました。

そして数日後、無事回復した彼とシェルパと共に雪がちらつくチュクン (標高4750 m)へ向かいました。
ここまで来ると、周囲には高い山々といくつかのピークが聳え立っており、ヒマラヤの山々と氷河を感じることができるはず…ですが、降雪のためその景色はお預け。

前回のお話はこちらです。もしよければご一読ください。