#読書記録「十階」

その日の日記と短歌が連なっている365日の記録。


お気に入り短歌は以下のとおりだが、日記パートではタクシーの中での出来事がすごく好きだった。繰り返し繰り返し読んだ。
わたしも毎日日記を書いているけど、その日の自分のための労いでもあり、明日へと進むロイター板のような役割でもあり、挫けた未来に読み返すと自分を励ます母のような愛にもなる。
わたしも日記だけじゃなくてその日の出来事を短歌に詠みたいと思いつつ、なかなか体現できていないので、いつかは東さんのようになりたいなあと尊敬と羨望の気持ちで読みました。

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同じように髪を束ねた母と子のサランサランとゆく春の風

ハイヒールの音は悲しくスリッパの音は淋しく おかえりなさい

簡単に死ねる装置のある都市に集い触れ合い重なり泣きぬ

浮遊する島としてバスあの細い道へ道へとのめりこむべし

十階の窓より見える六階の空家の中の青い引き出し

『悪人』という名の本の積まれいる店先に人待つごとく立つ

冷やし枕あたまの下にやわらかし星ふりやまぬ夜の長さを

息をするかたまりとして目を開けて靴を履くとき人間である

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