職人はオノマトペを使いがち(80/100回)
職人はオノマトペで仕事を説明する。
※オノマトペとは雨が「ザーザー」降るとか、子供が「にこにこ」笑うなどの擬音語や擬態語のこと。
僕の溶接の師匠も指導の際に
「最後はチョンチョンやっ!」
とか
「そこは手を振ってガぁっっ!とやれ!」
と怒鳴ることが多かった。
新人の頃は、正直何を言っているのかわからなかったけど、恐ろしいもので、ある程度技術が身についてくると理解できるようになる。
「あの時の師匠の言葉が今になって腹落ちした」
と言うような格好の良いものでは無いけど、オノマトペは職人の感覚を表現するのにちょうど良いのかも知れない。
例えば、、
板と板を溶接する際、端の方を溶接すると板がドロっと溶け落ちてしまうことがある。
なので端の方に差し掛かると溶け落ちてしまわないように、温度を下げる必要があるのだけど、その時に溶接の装置を「チョンチョン」とすると綺麗にできる。
他には。。
溶接をする物同士の隙間が大きいと、これまた溶け落ちてしまう。
その場合は、板が溶けてしまう前に溶接をしている箇所をずらして熱が集中しないようにする。
この時にもたもたしていると熱が集中して溶けてしまうので、他の部分よりも一気に進める必要があるので「がぁーー!」とやる。
と言う具合。
理屈はあるけど言語化するのは難しいし、技術の無い新人に「母材にかかる入熱を逃し、溶融池の粘土を調整しろ」と言ってもピンとこない。
「チョンチョン」も「ガぁー!」も捉え方は人それぞれで、捉えどころがないのに、やっぱり今でも「チョンチョン」してしまうし、がぁー!っとやる。
それ以外の表現が見つからない。
一見拍子抜けしてしまうけど、意外に理にかなっている。
職人仕事をオノマトペと擬音語は相性が良いみたいだ。
娘と話す時にもオノマトペを使うとスムーズに伝わる。
僕の言う「ゴシゴシ」と娘の「ゴシゴシ」がリンクするとお互い気持ち良くなって「ニコニコ」してしまう。
大人になるとかしこぶって難しい言葉を使ってしまうけど、物事の理解度が違う相手と意識を共有したいなら、オノマトペは都合が良いみたいだ。
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