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モノを「買う」以外にも、「作る」という選択肢があると知って欲しい。〜作り手との距離感と、溶接ワークショップのこと〜

モノづくりという仕事をしていると、製品を通じてお客さんと接することが殆どです。
でも間に製品を挟んでいる分、お客さんの間に距離ができてしまう事があります。
製造業をしている限り仕方の無い事なのですが、もっとお客さんにはモノづくりをする工房を身近に感じて貰いたいと思っています。

で、この距離をもっと縮めるにはどうしたら良いのか考えていました。

どんな道具や機械を使い、どのように製作しているのか。またどんな人が何を考えてモノづくりをしているのか。
これは完成したモノをただ並べるだけでは、なかなか知ってもらう事が出来ません。

僕は常日頃からお客さんに対しては「ただモノを買うのでは無く、モノづくりに参加して欲しい」と考えています。
だったらモノを作って売るだけで無く、お客さんがモノづくりに参加できる仕組みがあれば良いんじゃないかと思い、ワークショップを開催するようになりました。

ただ出来上がった製品を見てもらうだけでは無く、製造現場を見て、体験して頂く。そして実感としてモノづくりに触れて欲しいんです。


ライブ感のあるレストラン

近所に新しくできたフレンチレストランは厨房がオープンキッチンになっていて、どの客席からも中を見ることができます。
ちょうど厨房が舞台で、シェフが演者で料理というお芝居を見ている感じ。

肉を焼く音や野菜を刻む音、スープが沸くと良い匂いも漂ってくる。
そうして運ばれてくる料理はやっぱり美味しいし、そのお店の空間や過ごす時間自体を楽しむ事が出来ます。とてもライブ感があるんです。

厨房を見せるという事は隠し事は出来ないし、常に見られる事を意識して掃除もしないといけない。手間はかかりますが、だからこそお店の姿勢がお客さんに伝わるのだと思います。

こんなレストランのような作り手の姿勢が見える工房作りをしたい。
現場をオープンにする事はリスクではなく、作り手とお客の双方に良いの事が起きると信じています。

アイアン家具作りから溶接に触れる

そしてワークショップを開催するもう一つの理由は、アイアン家具製造のメインの技術でもある「溶接」を知って欲しいからです。

僕が会社で溶接士をしていた頃、入社してくる若い子になぜこの仕事を選んだかと聞くと、「親に言われたから仕方なく」とか「他に仕事が無かったから」という答えが大半でした。

鉄工所の薄暗い、汚い、危険というイメージもあり、積極的にこの業界に入りたいという若者は少数です。
しかし技能さえ身につければどこでも通用するし、給料も悪くありません。
「溶接はカッコいい」「稼げる仕事」という認識が広まれば業界の人手不足も解消されるという期待もあります。

これは僕自身がこの業界に入った時から感じている事で、とにかくイメージが悪いんです。
鉄をドロドロに溶かして引っ付ける作業は、とても非日常に溢れていますし、自分の技量次第で出来映えは大きく変わります。
イメージに囚われる事なく、まずは溶接を体験して面白さを多くの人に知って欲しいと思っています。

その為には安全に、きちんと技術を教えられる環境を整える事が必要なので、まずはワークショップを開催しています。


おじさんの趣味の代名詞だった日曜大工がこれだけDIYとして流行っています。
溶接も暗い、危ないというイメージから、楽しくエキサイティングなものだと知って欲しいと思います。

モノを「買う」以外にも、「作る」という選択肢があると知って欲しい。

モノづくりのは決して職人だけのものではなく、捉え方次第でお客さんも参加できるものなんです。自分で手を動かす事はもちろん、オーダーメイドもモノづくりです。

作り手とお客さんの距離や関係性を変えていければ、モノづくりはもっと楽しいものになると信じています。



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