文字を読むのは愉しい時間(59/100回)
本を読むのが好きだ。
というより文字を読むのが好きだ。
することが無いときは無意識で文字を追ってしまう。
小説やエッセイ、ビジネス書までなんでも読むし、虫除けスプレーの説明書きまで文字があればつい読んでしまう。
特にリズム感の良い文章が好きだ。
内容の難しさもあるけれど、リズムが自分の好みでないと読んでいても頭に入ってこない。
数字やアルファベットが文中に出てくると気が散ってしまい、これもまた内容を理解するのに時間がかかってしまう。
一文が長すぎる、もしくはレトリックが効きすぎた文も頭に入らない。
短く簡潔で、それでいてリズムの良い本に出会うと嬉くなる。
何が書いてあるか内容を楽しむよりも、読むという行為を楽しんでしまう。
もう少し読解力があれば教養も身につくのにと悔しい気持ちになる。
難しい内容の本はつい避けてしまう。
それでも一冊の本があれば1週間は楽しめる。
少しづつ文字を追いかけるのは至福の時間だ。
最近、志賀直哉のエッセイを読んだ。
教科書に載っている名前なので、古い作家だと毛嫌いしていたのだけど、文体がとても簡潔で読んでいてするする入ってくる。
彼の書く文章は一文一文が短い。
潔い感じがして好感が持てる。
それでいて過不足が無い。
文章に無駄がないのだ。
と、志賀ぶって簡潔な文を書いてみるけど内容は薄い。
文豪の書くエッセイは程よく力が抜けていて心地が良かった。
歌手の鼻歌というか、画家のデッサンのような気楽さがある。
それでいて人を惹きつける。
完璧な作品も良いけど、ちょっとくだけていて肩の力の抜けた(ように感じる)ものに魅力を感じる。
それは多分、作者の素の部分が見え隠れするからだと思う。
商品の裏書きはスペースの都合上、簡潔で無駄の無い文章になる。
今、目の前に虫除けスプレーがあるのだけど、裏の説明書きには
「お肌にやさしい4種類のうるおい成分」
とか
「お肌の露出部分に15センチの距離からスプレーする」
という文言が並ぶ。
狭いスペースにギチギチに簡潔な説明文がある中に、文中の5行も使ってこんな文章がある。
ここだけちょっと忠告めいた内容で、熱量が感じられる。
ともすれば削られてしまってもおかしくないのに、周囲よりも長文で残っているのは製作者の強い意志が感じられる。
よほどヒルに対して思い入れがあるのだろう。
ちょっとした文章にも書き手の意図があり、それをふとした拍子に発見すると嬉しくなる。
力の抜けた文章も、何かを真剣に伝えようとしている文章もどちらも良い。
文字を読むのは愉しい。
いつもお読み頂きありがとうございます!