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「なんで職人さんて寡黙なの?」という疑問に自分なりに答えてみた。


職人という言葉を聞いてどんな事を連想しますか?
真面目、とか、強面とか、不器用とか。
人によってもちろん違いますが、よく言われるのが「職人さんって寡黙ですよねー」ということ。

これは特に一般の方が職人の仕事中の様子を見て感じるようです。

僕自身、職人として色々な物を作ってきたし、色んな職人さんと話す機会がありました。
そこで僕なりに「職人が寡黙なのはなぜか」という事を考えてみたので書いてみます。


「没頭しすぎて周りと意識が切れている」

まず職人さんはイメージとは裏腹で意外に良く喋ります。
仕事中の職人を見ていると黙々と作業をしているように見えますが、実際のところ仕事開始前には色々打ち合わせをして職人同士結構喋ります。

で、仕事が始まると、手を動かしながら頭も使っています。
次の段取りの事や、今こなしている作業の仕上がりを気にしたりなど、結構色々な事を考えています。
一つの事に没頭しているから話せない、という理由と、頭で色々考えているから喋ってられないという2つが大きいのかなと思います。

職人の仕事は形として残るので、出来の良し悪しがその場で出てしまいます。
やはり職人は自分の仕事にはこだわりをもっているので、毎回真剣です。


僕自身、作業中は深い海の奥へ奥へと潜っているような感覚に陥ります。

実際集中している時は水の底にいるような感じで周りの音が耳に入ってきません。
(周りの騒音のせいもありますが…)


なので仕事の合間に急に話しかけられると、自己の内面に潜っている意識を急いで引っ張りあげて外に向けるのに時間がかかるので、急に喋れないのです。
だから無口になるというわけです。

※作業中にやって来た、営業の人に突然声を掛けられて、大きな声で「えぇ!!?」と怒鳴ってびっくりされた事も。怒ってるんじゃなくて、急いで引っ張り上げたので音量の調整まで出来ないのです…。


「もともとの性格」

これは職業選択の際に人付き合いが苦手だから職人にでもなろうか。
と考え、もともとあまり喋らない内向的な人が、職人という職業を選ぶからというものです。
内向的な人は常に自分と向き合っているので、常に水の底に潜っている状態です。
これが職人仕事を続けているとより強化され、寡黙になるんじゃないかなと思います。

周りの人達とコミュニケーションを取りながら仕事をしないといけない営業や販売の方とは違い、ものが相手だから余計に言葉が少なくなります。

ものを作る仕事は多少はあれど「内にこもる」部分があります。
自分の内面を探求するといえば聞こえは良いですが、要は自分なりのこだわりを仕事に反映させ続ける作業なのだと思います。

だからこそ思考を声に出すという外向きの部分が(仕事中には)現れにくいのだと思います。

僕自身も色々な事を考えていますが、外に向けて話す機会が少ないので、こうやってnoteに書いているんです。


「職人とコミュニケーション能力」

ただやっぱり職人もコミュニケーション能力が備わっている方が良いと感じます。

人に教えを乞うたり、お客さんに誤解なく技術の事を伝えられる職人さんって重宝されます。

職人の世界は「技術を見て盗む」と言われますが、やっぱり理屈で理解して、人に説明できた方が自身の理解の速度も全然ちがうし、後輩に技術を伝える際にもスムーズ。

ペラペラと「立て板に水」で喋るの必要は無いので、「専門用語を使わず話す」とか「相手の理解レベルに合わせて説明の仕方を変える」という事を意識するだけでも若い子が辞めないと思うんですが…。

それに職人さんのこだわりって本当に細かところまで考えられているので、聞いているだけても面白いし、勉強になります。

僕自身会社で溶接士をやっていた時は、ベテランの(強面な)先輩たちに色々話を聞き出すのにハマっていたこともあります。話下手な人が多く、はじめはなかなか邪険に扱われますが、何度も繰り返していくうちに少しづつ話してくれました。

ものづくりをしているとどうしても形に残る「製品」に目が行きがちですが、「作る」という工程や、職人という「人」に意識するようになったのは、この時の経験からです。


職人の世界は閉鎖的なことも多いです。
ただ考えている事や、技術を外に発信する事でお客さんとの相互理解が進むし、業界にとっても良いことだと思います。


僕なりに職人に対して感じている事を書いてみました。
職人さんの事をちょっとでも身近に感じてもらえたら嬉しいです。


いつもお読み頂きありがとうございます!